日本政策金融公庫の創業融資は、書類の準備で審査の8割が決まると言われます。
創業計画書だけでなく、会社の書類、代表者の書類、資金使途の裏付け、自己資金の証明と、そろえるものが多く、不足があると面談が延びたり、評価が下がったりします。
この記事では、公庫の創業融資(法人)に必要な書類を4つのグループに分けて一覧にし、それぞれの取り方、自己資金の証明で見られる点、設立前に申し込む場合の違い、準備の順番を説明します。
根拠は、日本政策金融公庫(新規開業資金の申込みに必要な書類、創業計画書の様式と記入例、お申込みの流れ)、法務局・国税庁(証明書と控えの取得)で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。必要書類は支店や案件により追加されることがあるので、申込み時に公庫の案内で確認してください。
筆者はひとり会社の創業計画書と必要書類を自分で準備し、公庫の融資の流れを自分で確認しています。
- 公庫の創業融資(法人)の書類は4つのグループ。公庫の様式(借入申込書・創業計画書)、会社の書類(登記事項証明書・定款・印鑑証明書・設立届の控え・許認可証)、代表者の書類(本人確認・履歴書・源泉徴収票や確定申告書・個人の通帳のコピー)、資金使途の裏付け(見積書・賃貸借契約書・取引先の資料)
- 審査で最も重く見られるのは、創業計画書の内容と、自己資金の証明。自己資金は個人の通帳のコピー(半年〜1年分)で、コツコツ貯めた履歴が評価され、直前にまとまった入金があると「見せ金」と疑われて出所の説明を求められる。親族からの贈与や退職金は、その証拠(贈与契約書・退職金の明細)を添える
- 設立前に申し込む場合は、登記事項証明書の代わりに定款案と設立の予定を出し、融資の実行は設立後に法人口座へ。設立後なら、登記事項証明書・定款・設立届の控えを法務局と税務署で取ってから申し込む。書類は申込みから面談までに順にそろえ、面談で原本を見せられるようにしておく
グループ1:公庫の様式で作る書類
- 借入申込書:公庫の様式(インターネット申込みなら画面で入力)。法人名、所在地、代表者、設立年月日、業種、従業員数、希望額、資金使途(設備・運転)、返済期間、希望の担保・保証の有無、連絡先
- 創業計画書:公庫の様式(A3一枚)。創業の動機、経営者の略歴、取扱商品・サービス、取引先・取引関係、従業員、借入の状況、必要な資金と調達方法、事業の見通し(売上・経費・利益の月次見込み)の8項目。審査の中心
- 企業概要書:すでに事業を始めて決算を1回以上している場合に、創業計画書の代わりに(または合わせて)出す。事業内容、取引先、従業員、借入の状況、最近の業況
借入申込書:公庫の様式(インターネット申込みなら画面で入力)。法人名、所在地、代表者、設立年月日、業種、従業員数、希望額、資金使途(設備・運転)、返済期間、希望の担保・保証の有無、連絡先
借入申込書は、公庫のサイトからダウンロードするか、インターネット申込みの画面で入力します。
希望額は、創業計画書の「必要な資金と調達方法」と一致させ、設備資金と運転資金に分けて書きます。
創業計画書:公庫の様式(A3一枚)。創業の動機、経営者の略歴、取扱商品・サービス、取引先・取引関係、従業員、借入の状況、必要な資金と調達方法、事業の見通し(売上・経費・利益の月次見込み)の8項目。審査の中心
創業計画書は、審査の中心になる書類です。
公庫の様式はA3一枚で、8つの項目を埋めます。特に「経営者の略歴」(事業に関係する経験)、「必要な資金と調達方法」(自己資金と借入の内訳)、「事業の見通し」(売上の根拠と返済の見込み)が重く見られます。
様式に収まらない分は、別紙(売上の根拠の計算、取引先の一覧、商品の資料)を添付できます。
企業概要書:すでに事業を始めて決算を1回以上している場合に、創業計画書の代わりに(または合わせて)出す。事業内容、取引先、従業員、借入の状況、最近の業況
設立から時間がたち、決算を1回以上している会社は、創業計画書の代わりに企業概要書を出す場合があります(公庫の案内に従います)。
その場合は、決算書(2期分)と、直近の試算表も添えます。
グループ2・3:会社の書類と代表者の書類
- 会社の書類:登記事項証明書(履歴事項全部証明書。3か月以内。法務局の窓口かオンライン請求)、定款の写し、法人の印鑑証明書(契約時に必要。3か月以内)、法人設立届出書の控え(税務署への届出の証明)、許認可が必要な業種はその許可証の写し(古物商許可証、飲食店営業許可など)、法人口座の通帳のコピー(開設済みなら)
- 代表者の書類:運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類、履歴書または経歴書(職歴と事業に関係する経験を具体的に)、直近の源泉徴収票または確定申告書(前職の収入、個人事業の実績)、個人の通帳のコピー(自己資金の確認。半年〜1年分。ネット銀行は取引明細の印刷)、住宅ローンや自動車ローンなど個人の借入があればその返済予定表、公共料金や税金の支払い状況が分かるもの(支払いの遅れがないことの確認)
- 自己資金の証明で見られる点:通帳の入金の履歴(給与からコツコツ貯めた動き)、直前のまとまった入金(見せ金の疑い。出所を説明する書類:贈与契約書、退職金の明細、資産の売却の記録)、残高だけでなく「どう貯めたか」
会社の書類:登記事項証明書(履歴事項全部証明書。3か月以内。法務局の窓口かオンライン請求)、定款の写し、法人の印鑑証明書(契約時に必要。3か月以内)、法人設立届出書の控え(税務署への届出の証明)、許認可が必要な業種はその許可証の写し(古物商許可証、飲食店営業許可など)、法人口座の通帳のコピー(開設済みなら)
登記事項証明書は、法務局の窓口(600円)かオンライン請求(郵送500円)で、発行から3か月以内のものを用意します。
定款は設立時に作ったものの写し、印鑑証明書は融資の契約時に必要になるので、申込みと同時に取っておきます。
設立届の控えは、e-Taxなら受信通知、紙なら控えとリーフレットです。許認可が必要な業種は、許可証がないと融資の実行が止まるので、許可の取得を先に進めます。
代表者の書類:運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類、履歴書または経歴書(職歴と事業に関係する経験を具体的に)、直近の源泉徴収票または確定申告書(前職の収入、個人事業の実績)、個人の通帳のコピー(自己資金の確認。半年〜1年分。ネット銀行は取引明細の印刷)、住宅ローンや自動車ローンなど個人の借入があればその返済予定表、公共料金や税金の支払い状況が分かるもの(支払いの遅れがないことの確認)
代表者の書類で重要なのは、履歴書(経歴書)と通帳のコピーです。
履歴書は、創業する事業に関係する経験(同業での勤務年数、担当した業務、実績)を具体的に書きます。公庫は「経験のある事業か」を重視します。
個人の通帳は、自己資金がどのように貯まったかを示すために、半年から1年分のコピーを用意します。個人のローンがあれば返済予定表も添え、返済の遅れがないことを示します。
自己資金の証明で見られる点:通帳の入金の履歴(給与からコツコツ貯めた動き)、直前のまとまった入金(見せ金の疑い。出所を説明する書類:贈与契約書、退職金の明細、資産の売却の記録)、残高だけでなく「どう貯めたか」
自己資金は、残高の額だけでなく、貯めた過程が見られます。
毎月の給与から一定額を貯めてきた履歴は高く評価され、申込みの直前に数百万円がまとめて入金されていると、一時的に借りたお金(見せ金)ではないかと疑われます。
親からの贈与なら贈与契約書と親の通帳の出金記録、退職金なら退職金の明細、資産の売却なら売買契約書を添えて、出所を説明できるようにします。
グループ4:資金使途の裏付けと、事業の実態を示す資料
- 設備資金の裏付け:機械や車両やパソコンなどの見積書(業者名入り)・カタログ、店舗や事務所の賃貸借契約書(または物件の概要と初期費用の見積)、内装工事の見積書、ホームページ制作の見積書。見積書の合計が創業計画書の設備資金と一致すること
- 運転資金の裏付け:仕入先からの見積や取引条件の資料、外注費の見積、広告費の計画、数か月分の経費の内訳(創業計画書の「事業の見通し」の経費と整合)。運転資金は「何に、いくら、何か月分」を説明できるように
- 事業の実態・見込みを示す資料:取引先との契約書・発注書・内示書・見積依頼のメール、個人事業時代の売上の実績(確定申告書・請求書)、商品やサービスの資料・写真、ホームページのURL、SNSのフォロワー数、予約や問い合わせの記録。「売上の根拠」を具体的に示す
設備資金の裏付け:機械や車両やパソコンなどの見積書(業者名入り)・カタログ、店舗や事務所の賃貸借契約書(または物件の概要と初期費用の見積)、内装工事の見積書、ホームページ制作の見積書。見積書の合計が創業計画書の設備資金と一致すること
設備資金は、何を買うかが明確なので、1つずつ見積書を取ります。
見積書の合計が創業計画書の設備資金の額と一致していることが必要で、融資後に見積書と違うものを買うと、資金使途違反として一括返済を求められることがあります。
運転資金の裏付け:仕入先からの見積や取引条件の資料、外注費の見積、広告費の計画、数か月分の経費の内訳(創業計画書の「事業の見通し」の経費と整合)。運転資金は「何に、いくら、何か月分」を説明できるように
運転資金は、設備資金より裏付けが取りにくいので、「売上が入るまでの○か月分の仕入・外注・家賃・広告費として○万円」と、内訳を計算して示します。
創業計画書の事業の見通しに書いた月の経費と、整合させます。
事業の実態・見込みを示す資料:取引先との契約書・発注書・内示書・見積依頼のメール、個人事業時代の売上の実績(確定申告書・請求書)、商品やサービスの資料・写真、ホームページのURL、SNSのフォロワー数、予約や問い合わせの記録。「売上の根拠」を具体的に示す
審査で最も差がつくのが、売上の根拠です。
すでに取引先が決まっているなら契約書や発注書、個人事業からの法人成りなら過去の確定申告書と請求書、これから始める事業なら見込み客とのやり取りや予約の記録を添えます。
公庫の様式に収まらないので、「売上の根拠」として別紙を作って添付します。
設立前の申込み、書類の取り方と準備の順番
- 設立前に申し込む場合:法人を設立する予定で個人として申し込み、登記事項証明書の代わりに定款案(または定款の認証前の案)と設立の予定(日程、資本金、本店)を出す。融資の審査は進められ、実行は設立登記の完了と法人口座の開設後に、法人名義で契約して法人口座に入金
- 書類の取り方:登記事項証明書と印鑑証明書は法務局(窓口・オンライン請求)、設立届の控えは自分で保管したもの(e-Taxなら受信通知)、許認可証は所管の官庁、源泉徴収票は前職の会社、確定申告書は自分の控え、納税証明書が必要なら税務署と市町村
- 準備の順番:1 創業計画書の下書き(売上の根拠を集めながら)、2 自己資金の通帳を整理(見せ金と見られる動きがないか)、3 設備の見積書を取る、4 会社の書類を取る(設立後)、5 インターネット申込み、6 面談の案内が来たら原本をそろえて持参、7 融資の決定後に印鑑証明書と法人口座で契約
設立前に申し込む場合:法人を設立する予定で個人として申し込み、登記事項証明書の代わりに定款案(または定款の認証前の案)と設立の予定(日程、資本金、本店)を出す。融資の審査は進められ、実行は設立登記の完了と法人口座の開設後に、法人名義で契約して法人口座に入金
公庫の創業融資は、設立前でも申し込めます。
その場合は、代表者個人が「法人を設立して事業を始める」計画として申し込み、登記事項証明書の代わりに定款の案と設立の予定を出します。
審査は進められますが、融資の実行(お金が振り込まれる)は、設立登記が完了して登記事項証明書と法人口座がそろってからです。設立と並行して融資を進めたい人向けです。
書類の取り方:登記事項証明書と印鑑証明書は法務局(窓口・オンライン請求)、設立届の控えは自分で保管したもの(e-Taxなら受信通知)、許認可証は所管の官庁、源泉徴収票は前職の会社、確定申告書は自分の控え、納税証明書が必要なら税務署と市町村
会社の書類は法務局と税務署、代表者の書類は自分の手元と前職の会社から集めます。
納税証明書(税金の滞納がないことの証明)を求められる場合は、税務署(国税)と市町村(住民税)で取ります。
準備の順番:1 創業計画書の下書き(売上の根拠を集めながら)、2 自己資金の通帳を整理(見せ金と見られる動きがないか)、3 設備の見積書を取る、4 会社の書類を取る(設立後)、5 インターネット申込み、6 面談の案内が来たら原本をそろえて持参、7 融資の決定後に印鑑証明書と法人口座で契約
まず創業計画書を下書きしながら、売上の根拠になる資料と設備の見積書を集めます。
自己資金の通帳は、申込みの半年以上前から動きを整えておきます(直前のまとまった入金を避ける)。
設立後に会社の書類を取り、インターネットで申し込み、面談の案内が来たら原本を持参します。融資が決まったら、印鑑証明書と法人口座の情報で契約します。
創業融資(法人・公庫)の必要書類チェックリスト
| グループ | 書類 | 取得先・作成 | 確認 |
|---|---|---|---|
| 公庫の様式 | 借入申込書 | 公庫のサイト・インターネット申込み | □ |
| 公庫の様式 | 創業計画書(+売上の根拠の別紙) | 公庫の様式に記入 | □ |
| 会社 | 登記事項証明書(履歴事項全部証明書、3か月以内) | 法務局 | □ |
| 会社 | 定款の写し | 自社で保管 | □ |
| 会社 | 法人の印鑑証明書(契約時、3か月以内) | 法務局 | □ |
| 会社 | 法人設立届出書の控え | 自社で保管(e-Taxは受信通知) | □ |
| 会社 | 許認可証の写し(該当業種) | 所管の官庁 | □ |
| 会社 | 法人口座の通帳のコピー(開設済みなら) | 自社 | □ |
| 代表者 | 本人確認書類 | 自分 | □ |
| 代表者 | 履歴書・経歴書 | 自分で作成 | □ |
| 代表者 | 源泉徴収票または確定申告書(直近) | 前職・自分の控え | □ |
| 代表者 | 個人の通帳のコピー(半年〜1年分) | 自分(自己資金の証明) | □ |
| 代表者 | 個人の借入の返済予定表(あれば) | 借入先 | □ |
| 資金使途 | 設備の見積書・カタログ | 業者 | □ |
| 資金使途 | 賃貸借契約書・物件資料 | 貸主・不動産会社 | □ |
| 資金使途 | 運転資金の内訳(仕入・外注の見積) | 自分で作成・仕入先 | □ |
| 事業の実態 | 契約書・発注書・ホームページ・実績の資料 | 取引先・自分 | □ |
ユイ創業融資の書類が多くて、何から手をつければいいか分かりません。
ケイ4つのグループで考える。公庫の様式(申込書と創業計画書)、会社の書類(登記事項証明書など)、代表者の書類(履歴書と通帳)、資金使途の裏付け(見積書)。まず創業計画書を下書きしながら、売上の根拠と見積書を集めるのが順番。
ユイ自己資金は、通帳の残高を見せればいいですよね?
ケイ残高だけでなく、どう貯めたかが見られる。半年〜1年分の通帳で、コツコツ貯めた履歴があれば評価される。直前にまとめて入金があると見せ金を疑われるから、贈与や退職金ならその証拠を添える。
よくある質問
公庫の創業融資に必要な書類は何ですか?
借入申込書と創業計画書(公庫の様式)、登記事項証明書・定款・印鑑証明書・設立届の控え・許認可証(会社の書類)、本人確認書類・履歴書・源泉徴収票や確定申告書・個人の通帳のコピー(代表者の書類)、見積書や賃貸借契約書(資金使途の裏付け)です。
自己資金はどうやって証明しますか?
個人の通帳のコピー(半年〜1年分)で、貯めてきた履歴を示します。
直前のまとまった入金は出所の説明(贈与契約書、退職金の明細など)が必要です。
設立前でも申し込めますか?
申し込めます。
登記事項証明書の代わりに定款案と設立の予定を出し、融資の実行は設立登記と法人口座の開設後です。
見積書は必要ですか?
設備資金を申し込むなら必要です。
見積書の合計を創業計画書の設備資金と一致させます。
履歴書には何を書きますか?
職歴と、創業する事業に関係する経験(同業での勤務年数、担当業務、実績)を具体的に書きます。
書類はどの順番で準備しますか?
創業計画書の下書き→自己資金の通帳の整理→設備の見積書→会社の書類(設立後)→申込み→面談で原本→契約時に印鑑証明書、の順です。
まとめ:次の一手
公庫の創業融資(法人)の書類は、公庫の様式(借入申込書・創業計画書)、会社の書類(登記事項証明書・定款・印鑑証明書・設立届の控え・許認可証)、代表者の書類(本人確認・履歴書・源泉徴収票や確定申告書・通帳のコピー)、資金使途の裏付け(見積書・賃貸借契約書・取引先の資料)の4グループです。
審査の中心は創業計画書と自己資金の証明で、通帳の貯蓄の履歴と売上の根拠を具体的に示し、設立前なら定款案で申し込んで設立後に実行します。
次の一手は、上のチェックリストを印刷して、手元にあるもの・取りに行くもの・作るものに分け、創業計画書の下書きと設備の見積書の依頼を今週中に始めることです。
創業計画書の書き方は、あわせて読みたい記事で確認してください。
