「償却資産申告書って、何それ」
会社を作って最初の1月、市区町村から届いた封筒を見て、そう思った人は多いはずです。
そのまま机の端に置いて、気づいたら2月。これが、いちばんよくある「出し忘れ」のパターンです。
この記事では、償却資産申告書を出し忘れたとき、提出しないときに何が起きるのかと、今からやる対処を説明します。
根拠は東京都主税局の案内と地方税法で、2026年10月15日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の代表として、償却資産の申告を毎年1月に自分で行っています。
- 償却資産申告書は、1月1日に事業用の資産を持っている会社・個人が、1月31日までに市区町村(東京23区は都税事務所)に出す。利益がなくても、資産が少なくても申告義務はある
- 出し忘れても、気づいた時点で出せば受け付けてもらえる。放置すると、過料の規定があり、申告漏れの資産は最大5年度分さかのぼって課税される
- 資産が少なく課税標準額が150万円未満なら税金はかからない(免税点)。ただし「税金がかからない」と「申告しなくていい」は別
償却資産申告書とは:何を、誰が、いつまでに出すのか
- 償却資産とは何か
- 申告する人と期限
- 対象になる資産、ならない資産
償却資産とは何か
償却資産とは、土地と家屋以外で、事業に使っている資産のことです。
パソコン、コピー機、エアコン、看板、応接セット、工具、陳列ケース、舗装や塀などが当てはまります。
これらには、土地や家屋と同じように固定資産税がかかります。
土地と家屋は市区町村が登記などから把握できますが、機械や備品は持ち主が申告しないと分かりません。
そのために、毎年の申告が義務づけられています。
申告する人と期限
申告するのは、毎年1月1日現在で、事業用の償却資産を持っている法人と個人事業主です。
利益が出ていなくても、資産が稼働していなくても、持っていれば申告の対象です。
期限は1月31日で、資産がある場所の市区町村に出します。東京23区は、区ごとの都税事務所です。
令和8年度は1月31日が土曜日のため、東京都の手引では提出期限が令和8年2月2日(月)とされています。
対象になる資産、ならない資産
対象外になるものも、はっきり決まっています。
自動車や軽自動車のように、自動車税や軽自動車税がかかるもの。
ソフトウェアや特許権などの無形固定資産。
創立費や開業費などの繰延資産。
そして、家屋として固定資産税がかかるものです。
ひとり会社で対象になりやすいのは、10万円以上で買ったパソコン、デスクと椅子のセット、エアコン、看板あたりです。
出し忘れたら・提出しないとどうなるか
- 正当な理由がない不申告には過料の規定
- 申告漏れは最大5年度さかのぼって課税
- 受け取る側は、どうやって気づくか
正当な理由がない不申告には過料の規定
東京都主税局の案内では、正当な理由なく申告しなかった場合、過料を科されることがあると書かれています(地方税法第386条、都税条例第137条)。
虚偽の申告をした場合は、懲役または罰金の対象です(地方税法第385条)。
数日の遅れでいきなり過料になることは、ほぼありません。
ただ、規定として存在するので、「出さなくても何も起きない」と考えるのは危険です。
申告漏れは最大5年度さかのぼって課税
もうひとつ、見落としやすいのがこちらです。
申告漏れが分かった資産は、取得した翌年度から最大5年度分さかのぼって課税されます(地方税法第17条の5第5項)。
偽りや不正があった場合は7年度分です。
つまり、3年前に買った機械を申告していなければ、3年分の税金がまとめて来ます。
追加課税分の納期は1回なので、まとまった額を一度に払うことになります。
受け取る側は、どうやって気づくか
「黙っていれば分からない」と思う人もいますが、受け取る側には気づく手がかりがあります。
申告書を一度も出していない法人には、新設法人の情報をもとに、申告書の用紙と案内が送られます。
申告がないままだと、翌年にも届き、状況によっては電話や文書で照会が入ります。
税務署の法人税申告書に添付する減価償却の明細と、市区町村の償却資産の申告内容を突き合わせる調査も行われます。
「資産がない」「少額しかない」場合の扱い
- 免税点150万円:税金がかからない仕組み
- 該当資産がないときの書き方
- 少額資産の線引き(10万・20万・30万)
免税点150万円:税金がかからない仕組み
償却資産には「免税点」があり、課税標準額(評価額の合計)が150万円未満なら課税されません。
このとき、納税通知書は届きません。
ひとり会社で、パソコン1台と机だけなら、たいてい150万円には届きません。
ただし、免税点は「税金がかからない」という話であって、「申告しなくてよい」という話ではありません。
150万円未満かどうかを市区町村が判断するためにも、申告は必要です。
該当資産がないときの書き方
申告の対象になる資産を持っていない場合も、申告書は出します。
申告書の備考欄や「該当資産なし」の欄に印を付け、資産の明細は空欄のまま提出します。
市区町村によって欄の名前は違いますが、「該当なし」で出すという扱いは共通です。
「資産がないから出さなかった」と「資産がないと申告した」は、受け取る側から見ると、まったく違います。
前者は「申告がない法人」として残り、後者は処理が済んだ法人になります。
少額資産の線引き(10万・20万・30万)
少額の資産は、会計での処理のしかたによって、申告するかどうかが変わります。
取得価額10万円未満で、買った年に全額経費にしたものは、申告不要です。
取得価額20万円未満で、3年間で均等に償却する「一括償却資産」にしたものも、申告不要です。
一方で、中小企業の特例を使って30万円未満の資産を一度に経費にしたものは、申告が必要です。
少額でも、通常どおり個別に減価償却することを選んだ資産も、申告が必要です。
ここは会計ソフトの固定資産台帳で「どの処理を選んだか」を見れば判断できます。
今からやる対処:期限後でも出せる
- 手順1:固定資産台帳から資産を拾う
- 手順2:期限後でも、そのまま提出する
- 手順3:来年からはeLTAXで出す
手順1:固定資産台帳から資産を拾う
まず、会計ソフトの固定資産台帳を開きます。
1月1日時点で持っている、土地・家屋・自動車以外の事業用資産を、取得年月、取得価額、耐用年数とともに書き出します。
申告書の「種類別明細書」には、この情報を資産ごとに書きます。
会計ソフトによっては、償却資産申告書をそのまま出力できる機能があります。
手順2:期限後でも、そのまま提出する
期限を過ぎていても、申告書はそのまま受け付けてもらえます。
特別な理由書は要りません。
郵送か窓口、またはeLTAXで提出します。
気づいた日に出すのが、いちばん傷が浅い対処です。
申告が遅れた分、納税通知書の送付が遅れることはありますが、税額そのものは変わりません。
手順3:来年からはeLTAXで出す
eLTAX(エルタックス)を使うと、自宅やオフィスから電子申告できます。
初めて使うときは、eLTAXの利用届出と、電子証明書(法人の商業登記電子証明書か、代表者のマイナンバーカード)が必要です。
すでに法人住民税や事業税を電子申告している会社は、資産がある区や市町村を申告先として追加するだけで済みます。
毎年1月の作業なので、一度設定してしまえば、翌年からは前年の内容を呼び出して増減だけ入力すれば終わります。
出し忘れ・該当なし・免税点未満の違い
| 状況 | 申告は必要か | 税金はかかるか | 放置した場合 |
|---|---|---|---|
| 資産があり、課税標準額150万円以上 | 必要 | かかる | 過料の規定、最大5年度さかのぼって課税 |
| 資産があるが、課税標準額150万円未満 | 必要 | かからない(免税点) | 「申告がない法人」として残り、照会が来る |
| 対象資産がまったくない | 「該当資産なし」で提出 | かからない | 同上 |
| 期限を過ぎて気づいた | 今すぐ提出 | 本来の税額のみ | 遅れるほど不利 |
ユイ1月に封筒が来ていたんですが、開けずに2月になってしまいました。もう手遅れですか?
ケイ手遅れじゃない。期限を過ぎても、そのまま出せば受け付けてもらえる。気づいた今日のうちに、固定資産台帳を見て書けばいいよ。
ユイパソコン1台しかないので、税金はかからないと思います。それでも出すんですか?
ケイ出す。150万円未満なら税金はかからないけど、それを判断するのは市区町村の側。「かからない」と「出さなくていい」は別なんだ。
よくある質問
償却資産申告書を出さないと、どうなりますか?
正当な理由なく申告しないと過料を科される規定があり、申告漏れの資産は最大5年度分さかのぼって課税されます。
実際には、まず市区町村から照会や催促が来るので、その前に提出するのが安全です。
期限を過ぎてから出しても、受け付けてもらえますか?
受け付けてもらえます。
特別な理由書は不要で、通常の申告書をそのまま提出します。
資産が少なくて税金がかからない場合も、申告は必要ですか?
必要です。
課税標準額が150万円未満なら課税されませんが、その判断をするために申告が要ります。
該当する資産がひとつもない場合は?
申告書の「該当資産なし」の欄に印を付けて、明細を空欄のまま提出します。
10万円未満のパソコンは申告しますか?
買った年に全額を経費にしていれば、申告は不要です。
20万円未満で一括償却資産にしたものも不要ですが、中小企業の特例で30万円未満を一度に経費にしたものは申告が必要です。
申告書が届かないときは、出さなくていいですか?
届かなくても、1月1日に資産を持っていれば申告義務はあります。
市区町村のサイトから様式を入手するか、eLTAXで申告します。
まとめ:次の一手
償却資産申告書は、1月1日に事業用の資産を持っている会社と個人が、1月31日までに市区町村に出す書類です。
出し忘れても、気づいた時点でそのまま提出すれば受け付けてもらえます。放置すると、過料の規定と、最大5年度さかのぼる追加課税のリスクがあります。
税金がかからない免税点未満でも、該当資産がなくても、申告書は出します。
次の一手は、会計ソフトの固定資産台帳を開いて、1月1日時点の資産を書き出すことです。
書き出した内容をそのまま申告書に写し、今日のうちに郵送かeLTAXで送ってしまいましょう。
同じ1月に出す法定調書合計表と給与支払報告書も、あわせて確認しておくと、来年からの1月がらくになります。
