インボイスに登録したひとり会社の多くは、消費税の申告で「2割特例」を使います。
計算は売上の消費税の2割を納めるだけと単純ですが、申告書のどの欄に何を書くかは、初めてだと迷います。
この記事では、2割特例で法人の消費税申告書を作る手順を、使う様式と2割特例の欄、付表6の記入、第一表と第二表の各欄、課税売上高の出し方、e-Taxでの入力、納付期限と方法、要件の確認の順に説明します。
根拠は国税庁(消費税及び地方消費税の確定申告書の様式と記載要領、2割特例の適用方法、付表6の様式)、消費税法で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。申告書の様式は年度で改訂されるので、申告する年の様式で確認してください。
筆者はひとり会社の消費税申告を2割特例で自分で行い、会計ソフトの消費税集計から申告書を作成しています。
- 2割特例の消費税申告は、申告書第一表の「2割特例」の欄に○を付け、付表6で売上税額の80%を「特別控除税額」として計算し、第一表の控除対象仕入税額に転記するだけ。事前の届出は不要で、一般課税用・簡易課税用のどちらの様式でも使える
- 計算は、課税売上高(税抜)×7.8%(標準税率の国税分)=売上税額→売上税額×80%=特別控除税額→売上税額−特別控除税額=差引税額(国税)→差引税額×22/78=地方消費税→合計が納付額。売上1,100万円(税込)なら、国税15.6万円+地方消費税4.4万円=20万円(売上の消費税100万円の20%)
- 課税売上高は会計ソフトの消費税集計表(税率別の課税売上)から取り、e-Taxか会計ソフトの消費税申告機能で入力して送信する。納付は事業年度終了から2か月以内に、ダイレクト納付などで。2割特例の要件(基準期間の課税売上高1,000万円以下、インボイス登録で課税事業者になった)を毎年確認する
2割特例の申告の全体像:様式と○を付ける欄
- 届出は不要:2割特例は、申告書第一表の「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」の欄に○を付けるだけで適用。事前の届出書はない。申告ごとに使うかどうかを選べる
- 様式:「一般課税用」(簡易課税の届出を出していない会社)または「簡易課税用」(届出を出している会社)。どちらの様式にも2割特例の欄があり、どちらを使っても計算は同じ
- 作る書類:付表6(特別控除税額の計算)、申告書第一表(税額の計算)、第二表(課税標準額の内訳)の3枚。e-Taxなら画面で順に入力
届出は不要:2割特例は、申告書第一表の「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」の欄に○を付けるだけで適用。事前の届出書はない。申告ごとに使うかどうかを選べる
簡易課税は事前の届出が必要ですが、2割特例は申告のときに選ぶだけです。
申告書第一表の下のほうにある「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」の欄に○を付けます。
要件を満たしていれば、ある年は2割特例、次の年は一般課税、という選択も申告ごとにできます。
様式:「一般課税用」(簡易課税の届出を出していない会社)または「簡易課税用」(届出を出している会社)。どちらの様式にも2割特例の欄があり、どちらを使っても計算は同じ
消費税の申告書には、一般課税用と簡易課税用の2つの様式があります。
簡易課税の届出を出していない会社は一般課税用、出している会社は簡易課税用を使いますが、2割特例を適用する場合はどちらの様式でも計算は同じで、付表6を使います。
ひとり会社の多くは簡易課税の届出を出していないので、一般課税用の様式で2割特例に○を付けます。
作る書類:付表6(特別控除税額の計算)、申告書第一表(税額の計算)、第二表(課税標準額の内訳)の3枚。e-Taxなら画面で順に入力
2割特例の申告で作るのは、付表6、第一表、第二表の3枚です。
一般課税で必要な付表1や付表2(仕入税額の計算)は、2割特例では不要です。
e-Taxや会計ソフトの消費税申告機能では、課税売上高を入力すると3枚が連動して作られます。
付表6の記入:課税売上高から特別控除税額まで
- 課税標準額(税率別):10%の売上(税込)×100/110=税抜の課税売上高(1,000円未満切捨て)。8%の軽減税率の売上があれば別に×100/108。売上返還(値引き・返品)があれば別欄
- 消費税額(国税分):10%の課税標準額×7.8%、8%の課税標準額×6.24%。合計が「課税標準額に対する消費税額」。貸倒れの回収があれば加算
- 特別控除税額:(消費税額−売上返還に係る税額)×80%。これが「控除対象仕入税額」の代わりに第一表に転記される
課税標準額(税率別):10%の売上(税込)×100/110=税抜の課税売上高(1,000円未満切捨て)。8%の軽減税率の売上があれば別に×100/108。売上返還(値引き・返品)があれば別欄
付表6の最初の欄は、税率ごとの課税標準額です。
その事業年度の課税売上(税込)を税率別に集計し、10%分は110分の100を掛けて税抜にし、1,000円未満を切り捨てます。
ひとり会社のサービス業は10%のみなので、1行です。軽減税率の売上(飲食料品の販売など)があれば、8%分を別に計算します。
消費税額(国税分):10%の課税標準額×7.8%、8%の課税標準額×6.24%。合計が「課税標準額に対する消費税額」。貸倒れの回収があれば加算
消費税10%は、国税7.8%と地方消費税2.2%に分かれています。
付表6では、まず国税分だけを計算し、課税標準額に7.8%(軽減税率なら6.24%)を掛けて「課税標準額に対する消費税額」を出します。
地方消費税は、あとで国税分から計算します。
特別控除税額:(消費税額−売上返還に係る税額)×80%。これが「控除対象仕入税額」の代わりに第一表に転記される
2割特例の核心がこの欄です。
課税標準額に対する消費税額から、売上の値引き・返品分の税額を引いた額に80%を掛けたものが「特別控除税額」で、実際の仕入税額に関係なく、売上税額の80%を控除できます。
残りの20%が納める国税分です。
第一表と第二表の記入、納付税額の計算
- 第一表(消費税の欄):課税標準額(付表6の合計)、消費税額(付表6の合計)、控除対象仕入税額(付表6の特別控除税額を転記)、差引税額(消費税額−控除対象仕入税額。100円未満切捨て)、中間納付税額があれば差し引き、納付税額(国税分)
- 第一表(地方消費税の欄):地方消費税の課税標準となる消費税額(=差引税額)、譲渡割額(差引税額×22/78。100円未満切捨て)、中間納付譲渡割額があれば差し引き、納付譲渡割額(地方消費税分)
- 消費税及び地方消費税の合計(納付又は還付)税額:国税分+地方消費税分。第二表には、課税標準額等の内訳(税率別の課税資産の譲渡等の対価の額)を記入。付表6と一致させる
第一表(消費税の欄):課税標準額(付表6の合計)、消費税額(付表6の合計)、控除対象仕入税額(付表6の特別控除税額を転記)、差引税額(消費税額−控除対象仕入税額。100円未満切捨て)、中間納付税額があれば差し引き、納付税額(国税分)
第一表の上半分が国税(消費税)の計算です。
課税標準額と消費税額は付表6から転記し、控除対象仕入税額の欄に付表6の特別控除税額を書きます。
消費税額から控除対象仕入税額を引いた「差引税額」(100円未満切捨て)が国税分で、中間納付があればそれを引いた額が納付税額です。
第一表(地方消費税の欄):地方消費税の課税標準となる消費税額(=差引税額)、譲渡割額(差引税額×22/78。100円未満切捨て)、中間納付譲渡割額があれば差し引き、納付譲渡割額(地方消費税分)
第一表の下半分が地方消費税です。
差引税額(国税分)を「地方消費税の課税標準となる消費税額」に転記し、78分の22を掛けて「譲渡割額」(地方消費税分)を出します。
国税7.8%と地方2.2%の比率が78対22なので、国税分から地方分を逆算する形です。
消費税及び地方消費税の合計(納付又は還付)税額:国税分+地方消費税分。第二表には、課税標準額等の内訳(税率別の課税資産の譲渡等の対価の額)を記入。付表6と一致させる
国税分と地方消費税分を足した額が、実際に納める消費税の合計です。
税込売上1,100万円の会社なら、課税標準額1,000万円、消費税額78万円、特別控除税額62.4万円、差引税額15.6万円、譲渡割額4.4万円、合計20万円で、売上の消費税100万円の2割です。
第二表には、税率別の課税売上の内訳を書き、付表6の課税標準額と一致させます。
課税売上高の出し方、e-Tax、納付、要件の確認
- 課税売上高の出し方:会計ソフトの「消費税集計表」「課税売上高の内訳」で、税率別(10%・8%)の課税売上の税込合計を確認。非課税売上(居住用家賃・利息など)、不課税(補助金・保険金・海外売上の一部)は除く。輸出の免税売上は課税標準に含めない
- e-Tax:確定申告書等作成コーナー(法人は利用不可の場合あり)ではなく、e-Taxソフト(Web版)か会計ソフトの消費税申告機能で、様式と2割特例を選び、課税売上高を入力→付表6・第一表・第二表が自動計算→電子署名して送信→受信通知を保存
- 納付と要件:納付は事業年度終了から2か月以内に、ダイレクト納付・クレジットカード・納付書で。2割特例の要件は、基準期間(2期前)の課税売上高1,000万円以下で、インボイス登録がなければ免税だった事業者であること。売上が1,000万円を超えた2期後からは使えないので毎年確認
課税売上高の出し方:会計ソフトの「消費税集計表」「課税売上高の内訳」で、税率別(10%・8%)の課税売上の税込合計を確認。非課税売上(居住用家賃・利息など)、不課税(補助金・保険金・海外売上の一部)は除く。輸出の免税売上は課税標準に含めない
課税売上高は、会計ソフトで売上の取引に消費税の区分(課税10%、課税8%、非課税、不課税、免税)を付けて記帳していれば、消費税集計表で税率別の合計が出ます。
2割特例では仕入の区分は納税額に影響しませんが、売上の区分は正確である必要があります。
役員借入金の入金や、補助金、保険金は売上ではなく不課税なので、課税売上に混ざっていないかを確認します。
e-Tax:確定申告書等作成コーナー(法人は利用不可の場合あり)ではなく、e-Taxソフト(Web版)か会計ソフトの消費税申告機能で、様式と2割特例を選び、課税売上高を入力→付表6・第一表・第二表が自動計算→電子署名して送信→受信通知を保存
法人の消費税申告は、e-Taxソフト(Web版)で様式を選んで入力するか、会計ソフトの消費税申告機能で作成してe-Taxに送信します。
2割特例を選び、課税売上高を入力すれば、付表6・第一表・第二表が自動で計算されます。
送信後の受信通知を保存して、控えにします。
納付と要件:納付は事業年度終了から2か月以内に、ダイレクト納付・クレジットカード・納付書で。2割特例の要件は、基準期間(2期前)の課税売上高1,000万円以下で、インボイス登録がなければ免税だった事業者であること。売上が1,000万円を超えた2期後からは使えないので毎年確認
納付の期限は、法人税と同じ事業年度終了の翌日から2か月以内です。
2割特例を使えるのは、「インボイス登録をしていなければ免税事業者だった」課税期間だけで、基準期間(2期前)の課税売上高が1,000万円を超えた課税期間は使えません。
売上が1,000万円を超えた年の2期後は、2割特例が使えなくなるので、その前に簡易課税の届出を検討します。制度自体は2029年9月30日の属する課税期間までです。
2割特例の計算例(税込売上1,100万円・10%のみ・中間納付なし)
| 欄 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 課税標準額(付表6・第一表) | 1,100万円×100/110 | 10,000,000円 |
| 課税標準額に対する消費税額(付表6・第一表) | 1,000万円×7.8% | 780,000円 |
| 特別控除税額(付表6) | 780,000円×80% | 624,000円 |
| 控除対象仕入税額(第一表に転記) | 付表6の特別控除税額 | 624,000円 |
| 差引税額(第一表・国税分) | 780,000−624,000 | 156,000円 |
| 地方消費税の課税標準となる消費税額 | 差引税額 | 156,000円 |
| 譲渡割額(地方消費税分) | 156,000×22/78 | 44,000円 |
| 消費税及び地方消費税の合計納付税額 | 156,000+44,000 | 200,000円 |
売上の消費税100万円(1,100万円−1,000万円)の20%が20万円で、納付額と一致します。
ユイ2割特例を使いたいのですが、届出は要りますか? 申告書のどこに書くんですか?
ケイ届出は要らない。申告書第一表の「2割特例」の欄に○を付けて、付表6で売上税額の80%を特別控除税額として計算して、第一表の控除対象仕入税額に転記する。それだけ。
ユイ地方消費税の計算が分かりません。
ケイ国税分の差引税額に22/78を掛けるだけ。10%のうち国税7.8%、地方2.2%だから、その比率で逆算する。国税15.6万円なら地方4.4万円で、合計20万円。会計ソフトなら自動で出る。
よくある質問
2割特例を使うのに届出は必要ですか?
不要です。
申告書第一表の「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」の欄に○を付けるだけです。
一般課税用と簡易課税用のどちらの様式を使いますか?
簡易課税の届出を出していなければ一般課税用、出していれば簡易課税用です。
どちらにも2割特例の欄があり、計算は同じです。
付表6には何を書きますか?
税率別の課税標準額(税抜の課税売上高)、それに対する消費税額(7.8%・6.24%)、その80%の特別控除税額です。
納付税額はどう計算しますか?
売上税額(国税分)の20%が国税の差引税額で、それに22/78を掛けた額が地方消費税、合計が納付額です。
売上の消費税全体の20%になります。
課税売上高はどこから取りますか?
会計ソフトの消費税集計表で、税率別の課税売上の合計を確認します。
非課税・不課税の売上は除きます。
2割特例はいつまで使えますか?
2029年9月30日の属する課税期間までで、かつ基準期間の課税売上高が1,000万円以下の課税期間だけです。
売上が1,000万円を超えた2期後からは使えません。
まとめ:次の一手
2割特例の消費税申告は、第一表の2割特例の欄に○を付け、付表6で課税売上高から売上税額とその80%の特別控除税額を計算し、第一表で差引税額(国税)と譲渡割額(地方消費税)を出して合計を納付する、届出不要の手続きです。
課税売上高は会計ソフトの消費税集計から取り、e-Taxか会計ソフトの申告機能で送信し、事業年度終了から2か月以内に納付し、基準期間の売上1,000万円以下の要件を毎年確認します。
次の一手は、会計ソフトの消費税集計表で今期の税率別の課税売上高を確認し、上の計算例に当てはめて納付額の見込みを出して、納税資金を確保することです。
2割特例の仕組みと簡易課税との比較は、あわせて読みたい記事で確認してください。
