マイクロ法人を作ると決めたら、やることは普通の会社設立と同じです。
ただ、マイクロ法人には「個人事業と別の事業にする」「役員報酬を低く設定する」「維持費を最小にする」という目的があるので、設立前に決めることの順番が普通の会社とは少し違います。
この記事では、マイクロ法人の作り方を、設立前に決める5つのこと、設立の手順、設立後の届出、二刀流の条件、よくある失敗の順に説明します。
根拠は法務局(設立登記)、国税庁(届出・消費税)、日本年金機構(社会保険)、協会けんぽ(保険料額表)の情報で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の代表と個人事業主を兼ね、設立から届出、社会保険の手続きまでを自分で行いました。
- 設立前に決めるのは5つ。法人で行う事業(個人事業と別のもの)、会社の形(多くは合同会社)、資本金(1,000万円未満)、役員報酬(社会保険の最低等級を意識)、決算月
- 設立そのものは、定款を作り、資本金を払い込み、法務局に登記申請するだけ。合同会社なら登録免許税6万円、電子定款なら印紙代不要
- 設立後は、税務署・都道府県・市町村への届出、年金事務所への新規適用届、役員報酬の決議、法人口座と会計ソフトの準備。二刀流は、法人と個人事業の事業が別であることが条件
設立前に決める5つのこと
- 1 法人で行う事業(個人事業と別のもの)、2 会社の形
- 3 資本金、4 役員報酬の額
- 5 決算月
1 法人で行う事業(個人事業と別のもの)、2 会社の形
最初に決めるのは、法人で何をするかです。
個人事業との二刀流にするなら、法人の事業は個人事業と別のものにします。本業がWeb制作なら、法人は資産運用、物販、コンサルティング、不動産賃貸など、実態として分けられる事業にします。
同じ事業を形だけ分けると、税務上、所得の付け替えと見られるリスクがあります。
会社の形は、設立費用が安く(登録免許税6万円)、役員の任期がなく、決算公告の義務もない合同会社を選ぶ人が多いです。対外的な信用や将来の拡大を重視するなら株式会社です。
3 資本金、4 役員報酬の額
資本金は、1,000万円未満にします。設立1期目・2期目の消費税が原則免税になり、法人住民税の均等割も最低区分(7万円)で済みます。
実際の額は、設立費用と数か月の運転資金をまかなえる額(数十万円以上)にしておくと、法人口座の審査で「資金のない会社」と見られにくくなります。
役員報酬は、社会保険料を最低等級にするなら月5万円から8万8,000円の範囲が目安です。この範囲なら厚生年金の保険料は同じで、8万8,000円まで上げても健康保険料の差は月1,500円程度です。
ただし、報酬が低いと生活費は個人事業の所得でまかなう前提になります。
5 決算月
決算月は自由に決められます。
設立月の前月を決算月にすると、1期目が最長の12か月近くになり、免税期間を長く使えます。
個人事業の確定申告(2〜3月)と法人の決算作業が重ならないよう、法人の決算月を3月や12月以外にする、という考え方もあります。
設立の手順:定款・払込み・登記
- 定款を作る(合同会社は認証不要)
- 資本金を個人口座に払い込む
- 法務局に登記を申請する(申請日が設立日)
定款を作る(合同会社は認証不要)
商号、目的、本店所在地、社員(自分)、出資額、業務執行社員・代表社員、事業年度を書いた定款を作ります。
合同会社は公証役場の認証が不要で、電子定款にすれば印紙代4万円もかかりません。
目的の欄には、法人で行う事業に加えて、将来やる可能性のある事業も入れておきます。
資本金を個人口座に払い込む
代表社員になる自分の個人口座に、資本金の額を振り込みます。
通帳の写し(ネット銀行なら画面の印刷)が、払込みを証する書面になります。
法務局に登記を申請する(申請日が設立日)
設立登記申請書、定款、決定書、就任承諾書、払込証明書、印鑑届書(印鑑証明書つき)を本店所在地の法務局に出します。
窓口、郵送、オンラインのいずれでも申請でき、申請日が設立日になります。
登録免許税は6万円で、1〜2週間で登記が完了します。
手順の詳細は、合同会社を自分で設立する記事で説明しています。
設立後の届出と、社会保険の加入
- 税務署(4枚)・都道府県・市町村への届出
- 年金事務所への新規適用届と資格取得届(5日以内)
- 役員報酬の決議、法人口座、会計ソフト
税務署(4枚)・都道府県・市町村への届出
税務署に、法人設立届出書(2か月以内・定款の写し添付)、給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内)、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、青色申告の承認申請書(3か月以内)の4枚を出します。
都道府県税事務所と市町村にも、法人設立届を出します(東京都は15日以内)。
いずれも、法人設立後の届出一覧の記事にまとめています。
年金事務所への新規適用届と資格取得届(5日以内)
役員報酬を払い始めたら、5日以内に新規適用届と被保険者資格取得届を年金事務所に出し、健康保険・厚生年金に加入します。
加入が済んだら、市区町村で国民健康保険の脱退の手続きをします。これで、個人事業の所得にかかる国民健康保険料がなくなります。
役員報酬の決議、法人口座、会計ソフト
役員報酬は、設立から3か月以内に社員の同意(株主総会)で決め、議事録(同意書)を残します。
法人口座を開設し、資本金を移します。
会計ソフトを入れて、設立費用(創立費)の記帳から始めます。個人事業と法人の帳簿は別に管理します。
二刀流を成り立たせる条件と、よくある失敗
- 条件1:法人と個人事業が別の事業である
- 条件2:法人にも事業の実態がある
- よくある失敗3つ
条件1:法人と個人事業が別の事業である
二刀流の前提は、法人の事業と個人事業が、実態として別であることです。
取引先、商品・サービス、契約、入金先が分かれていて、第三者から見て別の事業と説明できる状態にします。
同じ取引先からの同じ仕事を、法人と個人で分けて請求するような形は避けます。
条件2:法人にも事業の実態がある
法人の売上がほぼゼロで、役員報酬だけを払っている状態が続くと、社会保険に入るためだけの法人と見られ、年金事務所や税務署から実態を問われることがあります。
法人にも、小さくても売上、契約、法人口座での入出金という実態を持たせます。
よくある失敗3つ
失敗1:本業をそのまま法人に移して、役員報酬を5万円にした。生活費が足りず、結局役員報酬を上げて社会保険料も上がった。
失敗2:設立後の届出や社会保険の加入を後回しにして、期限を過ぎた。青色申告が1期目に使えなかった、保険料をさかのぼって納めた。
失敗3:維持費を計算せずに作った。国民健康保険料がもともと年20万円だったので、法人の維持費33万円で損をした。
作る前に、マイクロ法人の維持費の記事で自分の数字と比べてください。
マイクロ法人の設立から運用開始までの流れ
| 順番 | やること | 期限・目安 |
|---|---|---|
| 1 | 法人の事業・会社の形・資本金・役員報酬・決算月を決める | 設立前 |
| 2 | 定款を作る(電子定款なら印紙不要) | 設立前 |
| 3 | 資本金を個人口座に払い込む | 定款作成後 |
| 4 | 法務局に設立登記を申請(登録免許税6万円) | 申請日が設立日 |
| 5 | 登記事項証明書・印鑑証明書を取得、法人番号を確認 | 登記完了後 |
| 6 | 役員報酬を決議、議事録を作成 | 設立から3か月以内 |
| 7 | 年金事務所に新規適用届・資格取得届 | 報酬開始から5日以内 |
| 8 | 都道府県・市町村に法人設立届 | 自治体ごと(東京都は15日以内) |
| 9 | 税務署に4枚(設立届・開設届・納期の特例・青色申告) | 1〜3か月以内 |
| 10 | 国民健康保険の脱退、法人口座の開設、会計ソフトの導入 | 加入後すみやかに |
ユイマイクロ法人を作りたいんですが、普通の会社設立と何が違いますか?
ケイ手続きは同じ。違うのは、設立前に「個人事業と別の事業にする」「役員報酬を低く決める」「維持費を計算する」を先にやること。そこを飛ばすと、作ってから困る。
ユイ合同会社でいいんですか?
ケイマイクロ法人なら合同会社が多い。設立費用が安くて、役員の任期も決算公告もないから、維持の手間が少ないんだ。
よくある質問
マイクロ法人は、株式会社と合同会社のどちらで作りますか?
設立費用が安く、任期や決算公告がない合同会社で作る人が多いです。
対外的な信用を重視するなら株式会社です。
資本金はいくらにしますか?
1,000万円未満にして、消費税の免税と均等割の最低区分を使います。
法人口座の審査を考えると、数十万円以上が無難です。
役員報酬はいくらにしますか?
社会保険料を最低等級にするなら、月5万円から8万8,000円の範囲が目安です。
生活費は個人事業の所得でまかなう前提になります。
設立後、すぐにやることは何ですか?
役員報酬の決議、年金事務所への新規適用届(5日以内)、都道府県・市町村と税務署への届出、法人口座の開設です。
個人事業と同じ仕事を法人でやってもよいですか?
二刀流としては避けます。
法人と個人事業は、取引先や内容が実態として別の事業である必要があります。
国民健康保険はいつ抜けますか?
法人の健康保険に加入したあと、市区町村で脱退の手続きをします。
まとめ:次の一手
マイクロ法人の作り方は、設立前に「法人の事業・会社の形・資本金・役員報酬・決算月」の5つを決め、定款・払込み・登記で設立し、設立後に税務署・都道府県・市町村・年金事務所への届出と役員報酬の決議、口座と会計ソフトの準備を進める、という流れです。
二刀流は、法人と個人事業が別の事業で、法人にも実態があることが条件です。
次の一手は、法人で行う事業を1つ決めて、その事業名を定款の目的の文言として書いてみることです。
設立の具体的な手順は、合同会社を自分で設立する記事で確認してください。
