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設立・開業 | 公開 2026.10.16

マイクロ法人とは|仕組み・メリット・デメリット・向いている人を、制度の根拠と維持費の数字でわかりやすく解説

マイクロ法人とは|仕組み・メリット・デメリット・向いている人を、制度の根拠と維持費の数字でわかりやすく解説

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「マイクロ法人を作ると社会保険料が安くなる」という話を、SNSや書籍で見かけた人は多いはずです。

ただ、マイクロ法人という言葉は法律にはなく、何をもってマイクロ法人と呼ぶのか、どういう仕組みで保険料が下がるのか、誰に向くのかは、あいまいに語られがちです。

この記事では、マイクロ法人とは何かを、実態の定義、仕組み(二刀流)、メリットとデメリット、向いている人、よくある誤解の順に、制度の根拠と数字で説明します。

根拠は日本年金機構(社会保険の適用)、協会けんぽ(保険料額表)、国税庁(法人税率・給与所得控除)、総務省(法人住民税の均等割)の情報で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。

筆者はひとり会社の代表と個人事業主を兼ね、法人と個人の両方の申告と社会保険の手続きを自分で行っています。

記事のポイント
  • マイクロ法人は法律用語ではなく、社長ひとり(または家族だけ)で、事業の拡大より社会保険料や税の最適化を目的に持つ小さな法人の通称。株式会社でも合同会社でもよい
  • 仕組みの中心は、法人で低めの役員報酬を取って社会保険(健康保険・厚生年金)に入り、個人事業の所得にかかる国民健康保険料を避ける「二刀流」。法人と個人事業は別の事業である必要がある
  • メリットは社会保険料と所得分散、デメリットは年33万円以上の維持費と事務の手間。国民健康保険料が高い人ほど効果が出やすく、所得が低い人や事務が苦手な人には向かない

マイクロ法人とは:法律用語ではなく「使い方」の名前

マイクロ法人の定義を、法律用語ではない・社長ひとりの小さな法人・目的は社会保険料と税の最適化の3つに分けて図解したインフォグラフィックです。
  • 法律上は普通の株式会社・合同会社
  • 実態:社長ひとり、事業の拡大より最適化が目的
  • 個人事業との「二刀流」が前提になることが多い

法律上は普通の株式会社・合同会社

マイクロ法人は、会社法にも税法にもない言葉です。

法律上は、普通の株式会社または合同会社で、設立の手続き、税金、社会保険のルールは、ほかの会社とまったく同じです。

「マイクロ法人」として登記するわけではなく、通常の会社を小さく使う、という「使い方」の名前です。

実態:社長ひとり、事業の拡大より最適化が目的

実態としては、社長ひとり(または配偶者などの家族だけ)で、従業員を雇わず、売上の拡大よりも、社会保険料や税金の負担を小さくすることを主な目的に運営する法人を指します。

役員報酬を低めに設定し、法人の利益も大きくしない、という運営が典型です。

個人事業との「二刀流」が前提になることが多い

マイクロ法人の多くは、個人事業と併用されます。

本業の収入は個人事業で得て、法人では別の小さな事業を行い、法人から低めの役員報酬を受けて社会保険に加入する、という形です。

この形が「二刀流」と呼ばれ、マイクロ法人の仕組みの中心になっています。

仕組み:なぜ社会保険料が下がるのか

マイクロ法人で社会保険料が下がる仕組みを、国民健康保険は所得で決まる・法人の社会保険は役員報酬で決まる・個人事業の所得は保険料に影響しないの3つに分けて図解したインフォグラフィックです。
  • 個人事業主の国民健康保険料は「所得」で決まる
  • 法人の社会保険料は「役員報酬」で決まる
  • 個人事業の所得は、社会保険料に影響しない

個人事業主の国民健康保険料は「所得」で決まる

個人事業主は、国民健康保険と国民年金に入ります。

国民健康保険料は、前年の所得に応じて決まり、所得が高いと年間数十万円(自治体の上限は年100万円前後)になります。

国民年金は定額(令和8年度は月1万7,920円)です。

法人の社会保険料は「役員報酬」で決まる

法人で役員報酬を受け取ると、健康保険と厚生年金に加入します。

その保険料は、役員報酬の額(標準報酬月額)で決まり、個人事業の所得は関係ありません。

役員報酬を月5万円にすると、健康保険は最低等級(5万8,000円)、厚生年金も最低等級(8万8,000円)で計算され、本人負担と会社負担を合わせて年約26万円(東京・令和8年度・介護保険なし)です。

個人事業の所得は、社会保険料に影響しない

法人の健康保険に入ると、国民健康保険から抜けます。

すると、個人事業でいくら所得があっても、保険料は法人の役員報酬だけで決まります。

個人事業の所得が高く、国民健康保険料が年60万〜100万円かかっていた人が、法人の社会保険料年26万円に置き換わる、というのがマイクロ法人の効果の中心です。

厚生年金に入るので、将来の年金は国民年金だけの場合より増えます(最低等級なので増え方は小さい)。

メリットとデメリット

マイクロ法人のメリットとデメリットを、メリットは社会保険料と所得分散と信用・デメリットは維持費年33万円超と事務の手間・年金額は最低水準の3つに分けて図解したインフォグラフィックです。
  • メリット:社会保険料・所得の分散・法人の信用
  • デメリット:維持費・事務の手間・年金額
  • 効果が出る人、出ない人の分かれ目

メリット:社会保険料・所得の分散・法人の信用

1つ目は、上で説明した社会保険料の削減です。

2つ目は、所得の分散です。個人の所得税は累進課税(5%から45%)なので、所得の一部を法人に移し、法人税(中小法人の所得800万円以下は15%)で納めると、合計の税負担が下がることがあります。役員報酬には給与所得控除もつきます。

3つ目は、法人名義で契約や口座を持てることによる信用面の効果です。

デメリット:維持費・事務の手間・年金額

1つ目は、維持費です。法人住民税の均等割が年7万円前後、社会保険料が年約26万円で、売上がゼロでも年33万円以上かかります。会計ソフトや税理士費用が加わると、年40万〜70万円です。

2つ目は、事務の手間です。設立、届出、毎月の役員報酬と源泉徴収、年末調整、法定調書、算定基礎届、決算と申告が、個人事業の確定申告に加えて発生します。

3つ目は、年金です。役員報酬を最低等級にすると、厚生年金の増え方も最低水準です。

効果が出る人、出ない人の分かれ目

効果が出るのは、個人事業の所得が高く、国民健康保険料が年40万円を超えるような人です。削減できる保険料が、維持費33万円を上回ります。

効果が出ないのは、個人事業の所得が低く、国民健康保険料がもともと安い人です。維持費のほうが高くつきます。

また、本業と法人の事業が同じでは二刀流として認められないため、法人で行う「別の事業」を持てるかどうかも分かれ目です。

向いている人・向いていない人と、よくある誤解

マイクロ法人が向いている人と誤解を、向くのは所得が高く別事業を持てる人・向かないのは所得が低く事務が苦手な人・よくある誤解の3つに分けて図解したインフォグラフィックです。
  • 向いている人
  • 向いていない人
  • よくある誤解3つ

向いている人

個人事業の所得が安定して高く、国民健康保険料の負担が大きい人。

個人事業とは別に、法人で行える小さな事業(資産運用、コンサルティング、物販、不動産賃貸など)がある人。

設立後の届出や毎年の決算・申告を、自分でやるか税理士に頼む費用を払える人。

向いていない人

個人事業の所得が低く、国民健康保険料が安い人。維持費で損をします。

法人で行う別の事業がなく、本業を形だけ分けようとしている人。税務上の問題になります。

事務が苦手で、税理士費用も払いたくない人。届出や申告の漏れが、青色申告の取消しや未加入の指導につながります。

よくある誤解3つ

誤解1「マイクロ法人なら社会保険料がゼロに近くなる」。厚生年金は最低等級でも月8,052円(本人負担)で、会社負担を含めて年約26万円かかります。

誤解2「本業を法人に移せばいい」。本業の所得をそのまま法人に移すのは、二刀流ではなく通常の法人成りで、役員報酬を低くすると生活費が足りません。二刀流は、法人と個人事業が別の事業であることが前提です。

誤解3「作れば自動で節税になる」。効果は、国民健康保険料と維持費の差で決まります。自分の数字で計算してから作ります。

マイクロ法人(二刀流)と個人事業のみの比較(所得が高い人の例)

項目 個人事業のみ マイクロ法人+個人事業(二刀流)
健康保険 国民健康保険(所得で決まる。年数十万円〜) 法人の健康保険(役員報酬5万円なら年約12万円、会社+本人)
年金 国民年金(年約21万円) 厚生年金(役員報酬5万円なら年約19万円、会社+本人)
個人事業の所得への保険料の影響 あり なし
法人の維持費 0円 均等割7万円+会計・申告の費用
事務 確定申告のみ 確定申告+法人の決算・申告・社会保険の手続き
将来の年金 基礎年金のみ 基礎年金+厚生年金(最低等級)

保険料は東京・令和8年度・介護保険なしの目安です。

ユイユイ

マイクロ法人って、結局なんなんですか? 普通の会社と違うんですか?

ケイケイ

法律上は普通の会社。社長ひとりで、売上を伸ばすより社会保険料や税の負担を小さくする目的で持つ会社の、通称なんだ。

ユイユイ

なぜ社会保険料が下がるんですか?

ケイケイ

法人の社会保険料は役員報酬で決まって、個人事業の所得は関係ない。国保の保険料が高い人ほど、法人の低い役員報酬の保険料に置き換わる効果が大きい。でも維持費が年33万円はかかるから、差で判断する。

よくある質問

マイクロ法人とは、法律で決まった会社の種類ですか?

違います。

法律上は普通の株式会社または合同会社で、「社長ひとりで社会保険料や税の最適化を目的に持つ小さな法人」の通称です。

マイクロ法人の維持費はいくらですか?

法人住民税の均等割が年7万円前後、役員報酬を払う場合の社会保険料が年約26万円で、売上ゼロでも年33万円以上です。

会計ソフトや税理士費用を含めると年40万〜70万円です。

二刀流とは何ですか?

個人事業で本業の収入を得て、法人で別の小さな事業を行い、法人の役員報酬で社会保険に入る形です。

法人と個人事業が別の事業であることが前提です。

社会保険料はどのくらい下がりますか?

人によります。

国民健康保険料が年60万円の人が、役員報酬5万円の法人の社会保険料(年約26万円、会社+本人)に置き換えれば、差額から維持費を引いた分が効果です。

誰に向いていますか?

個人事業の所得が高く国民健康保険料が大きい人で、法人で行う別の事業があり、事務を自分でやるか税理士費用を払える人です。

株式会社と合同会社、どちらで作りますか?

マイクロ法人は、設立費用が安く、役員の任期や決算公告がない合同会社で作る人が多いです。

まとめ:次の一手

マイクロ法人は、法律用語ではなく、社長ひとりで社会保険料や税の最適化を目的に持つ小さな法人の通称で、仕組みの中心は、法人の低い役員報酬で社会保険に入り、個人事業の所得にかかる国民健康保険料を避ける二刀流です。

メリットは社会保険料と所得分散、デメリットは年33万円超の維持費と事務の手間で、効果は国民健康保険料と維持費の差で決まります。

次の一手は、自分の国民健康保険料の年額を調べ、マイクロ法人の維持費の記事の数字と比べることです。

役員報酬5万円のときの社会保険料の計算は、あわせて読みたい記事で確認してください。