マイクロ法人(社長ひとりで、社会保険料や税金の最適化を目的に作る小さな会社)を検討するとき、必ず計算しておくべきなのが「維持費」です。
節税や社会保険料の削減の効果があっても、維持費がそれを上回れば意味がありません。
この記事では、マイクロ法人の維持費を内訳ごとに整理し、売上がなくてもかかる費用、自分で事務をやる場合と税理士に任せる場合の目安、抑え方をまとめます。
根拠は総務省・東京都主税局(均等割)、協会けんぽ(保険料額表)、法務局(登記)の情報で、2026年10月15日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の代表として、決算・申告・社会保険の事務を自分で行い、維持費を実際に払っています。
- マイクロ法人の維持費で、売上ゼロでもかかるのは「法人住民税の均等割(年7万円前後)」と「社会保険料(役員報酬を払う場合)」の2つ
- 役員報酬を月5万円にしても、社会保険料は会社負担と本人負担を合わせて年約26万円。維持費の中で最も大きい
- 事務を自分でやれば、均等割+社会保険料+会計ソフト代で年35万〜40万円前後。税理士に決算を頼むと、そこに10万〜30万円が加わる
売上ゼロでもかかる費用:均等割と社会保険料
- 法人住民税の均等割:年7万円前後
- 社会保険料:役員報酬5万円で年約26万円
- この2つで年33万円前後
法人住民税の均等割:年7万円前後
法人住民税には、所得に関係なく資本金と従業員数で決まる「均等割」があります。
資本金1,000万円以下、従業員50人以下の会社では、都道府県分が2万円、市町村分が5万円の、合計7万円が標準的な額です(東京23区は都民税として7万円)。
自治体によって独自の税率で5万円より高いところもあります。
赤字でも、売上がゼロでも、毎年かかります。
社会保険料:役員報酬5万円で年約26万円
役員報酬を払うと、健康保険と厚生年金に加入します。
報酬を月5万円にしても、厚生年金は下限の等級(標準報酬月額8万8,000円)で計算されるため、本人負担と会社負担を合わせて月約2万2,000円、年約26万円です(東京・令和8年度・介護保険なし)。
ひとり会社では両方とも自分のお金なので、年約26万円が実質の負担です。
役員報酬をゼロにすれば社会保険料はかかりませんが、その場合は社会保険に加入できず、国民健康保険と国民年金を自分で払います。
この2つで年33万円前後
均等割7万円と社会保険料約26万円で、年33万円前後になります。
マイクロ法人の節税効果や、国民健康保険料との差額を考えるときは、この33万円を先に引いて考えます。
ここを計算に入れずに「法人にすれば得」と判断すると、想定が崩れます。
事務にかかる費用:会計ソフト・税理士・申告
- 会計ソフト:年2万〜4万円
- 税理士費用:頼むなら年10万〜30万円
- 自分で申告する場合の費用
会計ソフト:年2万〜4万円
法人向けのクラウド会計ソフトは、最も安いプランで月2,000円から3,500円程度、年2万〜4万円が目安です。
仕訳、決算書の作成、請求書の発行、給与計算の一部までカバーできます。
無料の会計ソフトもありますが、法人の決算書と申告書の作成まで対応しているかを確認します。
税理士費用:頼むなら年10万〜30万円
決算と申告だけを税理士にスポットで頼むと、小さな会社で10万〜20万円程度、顧問契約をすると年20万〜30万円以上が目安です。
マイクロ法人向けの格安パッケージを出している税理士事務所もあります。
事務を自分でやれるなら、この費用はゼロにできます。
自分で申告する場合の費用
自分で法人税の申告をする場合、申告書(別表)を作るための申告ソフトが要ります。
会計ソフトのオプションや、法人向けの申告ソフトで、年1万〜3万円程度です。
e-Taxは無料で、電子証明書(マイナンバーカードまたは商業登記電子証明書)があれば送信できます。
筆者は会計ソフトと申告ソフトを使って自分で申告しており、税理士費用はかけていません。
登記・住所・その他の固定費
- 住所:自宅なら0円、バーチャルオフィスなら年1万〜5万円
- 登記:役員の任期更新(株式会社)と変更登記
- 銀行手数料・決算公告・印鑑証明書など
住所:自宅なら0円、バーチャルオフィスなら年1万〜5万円
本店を自宅にすれば、住所の費用はかかりません。
自宅住所を公開したくない場合にバーチャルオフィスを使うと、月数百円から数千円、年1万〜5万円程度です。
登記:役員の任期更新(株式会社)と変更登記
株式会社は、取締役の任期(最長10年)が来るたびに、同じ人が続けても「重任」の登記が必要で、登録免許税1万円がかかります。
合同会社には任期がないため、この費用はかかりません。
本店移転や商号変更をすると、変更登記に3万円(本店移転は管轄内で3万円、管轄外は6万円)がかかります。
銀行手数料・決算公告・印鑑証明書など
法人口座の振込手数料や、口座によっては口座維持手数料がかかります。ネット銀行は無料のところが多いです。
株式会社は毎年の決算公告が義務で、官報に載せると7万円前後、電子公告なら自社サイトで無料ですが、実務上は省略している小さな会社が多いのが実態です。合同会社には決算公告の義務がありません。
印鑑証明書や登記事項証明書の取得(1通数百円)、年末調整や法定調書の郵送費なども、年数千円の範囲でかかります。
維持費の目安(年額)と、抑え方
- 年間の目安:自分でやる場合と任せる場合
- 維持費を抑える方法
- 抑えてはいけない部分
年間の目安:自分でやる場合と任せる場合
| 項目 | 自分で事務をやる(合同会社・自宅・報酬5万円) | 税理士に任せる(株式会社・バーチャルオフィス) |
|---|---|---|
| 法人住民税の均等割 | 約7万円 | 約7万円 |
| 社会保険料(会社+本人) | 約26万円 | 約26万円 |
| 会計ソフト・申告ソフト | 約3万〜7万円 | 約3万円 |
| 税理士費用 | 0円 | 約15万〜30万円 |
| 住所(バーチャルオフィス) | 0円 | 約2万〜5万円 |
| 登記(任期更新など) | 0円 | 年換算 約1,000円〜 |
| 銀行手数料・証明書など | 約5,000円〜1万円 | 約5,000円〜1万円 |
| 合計(目安) | 約37万〜41万円 | 約54万〜72万円 |
社会保険料は東京・令和8年度・介護保険なしの目安で、都道府県と年齢で変わります。
維持費を抑える方法
合同会社にして、任期更新の登記と決算公告をなくす。
本店を自宅にして、住所の費用をなくす。
会計ソフトと申告ソフトで、決算と申告を自分でやる。
役員報酬を最低等級の範囲(月5万〜8万8,000円)にして、社会保険料を下限にする。
ネット銀行の法人口座で、手数料を抑える。
抑えてはいけない部分
均等割と社会保険料は、法律上かかるものなので、抑える方法はありません。
社会保険料を抑えようと役員報酬をゼロにすると、社会保険に入れず、国民健康保険と国民年金の負担が代わりに発生します。
会計ソフトを使わずに手計算で帳簿を作ると、時間がかかるうえ、電子帳簿保存法への対応も難しくなります。年2万〜4万円は、かけたほうが安く済む費用です。
ユイマイクロ法人を作れば、社会保険料がすごく安くなると聞きました。維持費はどれくらいですか?
ケイ均等割が7万円、社会保険料が報酬5万円でも年26万円。この2つで33万円は売上ゼロでもかかる。節税効果と比べるときは、ここを先に引いて考えよう。
ユイ税理士に頼まないと無理ですか?
ケイひとりの会社なら、会計ソフトと申告ソフトで自分でできる。それで年15万〜30万円の税理士費用がゼロになる。筆者もそうしているよ。
よくある質問
マイクロ法人の維持費は、年いくらですか?
事務を自分でやり、合同会社・自宅本店・役員報酬5万円なら、年37万〜41万円前後が目安です。
税理士に任せると、年54万〜72万円前後になります。
売上がゼロでも、かかる費用はありますか?
あります。
法人住民税の均等割(年7万円前後)と、役員報酬を払っている場合の社会保険料です。
均等割はいくらですか?
資本金1,000万円以下・従業員50人以下の会社で、都道府県分2万円と市町村分5万円の合計7万円が標準です。
自治体によって市町村分が高いことがあります。
役員報酬を5万円にしたら、社会保険料はいくらですか?
東京・令和8年度・介護保険なしで、本人負担が月約1万1,000円、会社負担もほぼ同額で、合計で年約26万円です。
合同会社と株式会社で、維持費は違いますか?
合同会社は役員の任期がなく重任登記が不要で、決算公告の義務もないため、維持費が少し安くなります。
均等割と社会保険料は同じです。
税理士費用を抑える方法はありますか?
会計ソフトと申告ソフトで決算と申告を自分でやる方法と、決算だけスポットで頼む方法があります。
マイクロ法人向けの格安パッケージを出している税理士事務所もあります。
まとめ:次の一手
マイクロ法人の維持費は、売上ゼロでもかかる均等割(年7万円前後)と社会保険料(役員報酬5万円で年約26万円)が中心で、ここに会計ソフト、税理士費用、住所、登記の費用が加わります。
事務を自分でやれば年37万〜41万円前後、税理士に任せると年54万〜72万円前後が目安です。
次の一手は、自分の場合の国民健康保険料と国民年金の年額を調べて、上の維持費と比べることです。
役員報酬5万円のときの社会保険料の計算は、あわせて読みたい記事で確認できます。
