マイクロ法人の定款は、普通の合同会社の定款と構成は同じです。
ただ、マイクロ法人は「個人事業と別の小さな事業」を法人で行うので、「事業目的に何を書くか」が、普通の会社以上に悩みどころになります。
この記事では、マイクロ法人(合同会社・社員1人)の定款の例を、事業目的の文例を中心に、社員1人ならではの条文、避けたい目的、後から目的を追加する場合の費用まで説明します。
根拠は会社法(第576条ほか)と法務局の登記案内で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。
筆者は自分の会社の定款を自分で作って登記しました。
- マイクロ法人の定款で最も考えるのは「事業目的」。法人で実際に行う事業と、将来行う可能性のある事業を具体的に書き、最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」を入れる
- 資産運用なら「有価証券の投資・運用」「不動産の賃貸・管理」、コンサルなら「経営・ITに関するコンサルティング」、物販なら「衣料品・雑貨の販売」のように、業種が分かる書き方にする
- 社員1人の定款には、代表社員の定め、相続人が持分を承継できる条文、報酬の定め方を入れる。目的を後から追加すると変更登記に3万円かかるので、最初に幅を持たせる
事業目的の書き方の基本
- 実際に行う事業と、将来行う可能性のある事業を列挙する
- 業種が分かる程度に具体的に書く
- 最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」
実際に行う事業と、将来行う可能性のある事業を列挙する
定款の目的は、会社が行える事業の範囲を示します。
目的に書いていない事業を行うと、定款変更と変更登記が必要になるので、設立時に、いま行う事業と、数年内に行う可能性のある事業を列挙しておきます。
マイクロ法人では、個人事業とは別の事業を法人の目的にします。
業種が分かる程度に具体的に書く
目的は、適法で、営利性があり、明確であることが求められます。
「各種事業」「その他一切の事業」のような、何をするか分からない書き方は避けます。
「衣料品、雑貨の企画、製造、販売及び輸出入」のように、第三者が読んで業種が分かる程度に具体的に書きます。
最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」
目的の最後に、「前各号に附帯又は関連する一切の事業」という文言を入れます。
列挙した事業に付随する業務(たとえば物販に伴う梱包・発送、Web制作に伴う写真撮影など)を、目的の範囲に含めるためです。
ほぼすべての会社の定款に入っている定型の文言です。
マイクロ法人でよくある事業目的の文例
- 資産運用・不動産賃貸
- コンサルティング・Web制作・ライティング
- 物販・ネット販売・せどり
資産運用・不動産賃貸
| 目的の文例 |
|---|
| 有価証券の取得、保有、投資及び運用 |
| 不動産の売買、賃貸、管理及び仲介 |
| 金銭の貸付け及び投資事業(※貸金業の登録が必要になる場合があるため注意) |
| 太陽光発電による電力の販売 |
資産運用を主な事業にするマイクロ法人は、「有価証券の投資及び運用」を目的に入れます。法人名義で証券口座を開くときに、定款の目的を確認されることがあります。
コンサルティング・Web制作・ライティング
| 目的の文例 |
|---|
| 経営、財務、ITに関するコンサルティング業務 |
| Webサイト、アプリケーションの企画、制作、運営及び保守 |
| 文章、記事、コンテンツの企画、制作及び販売 |
| インターネットを利用した広告、宣伝及び販売促進に関する業務 |
| セミナー、講座の企画及び運営 |
個人事業でWeb制作をしている人が、法人でコンサルティングを行う場合は、法人の目的を「コンサルティング」「セミナー」に絞り、個人事業との違いを明確にします。
物販・ネット販売・せどり
| 目的の文例 |
|---|
| 衣料品、服飾雑貨、日用品の企画、製造、販売及び輸出入 |
| インターネットを利用した各種商品の販売 |
| 古物営業法に基づく古物の売買 |
| 輸入雑貨の販売 |
中古品を扱うなら「古物営業法に基づく古物の売買」を入れます。古物商許可の申請で、法人の定款の目的に古物営業が含まれているかを確認されます。
避けたい目的と、許認可・銀行審査との関係
- 許認可が必要な事業は、取る予定がなければ入れない
- 目的が多すぎると、法人口座の審査で不利になることがある
- 曖昧・違法・非営利の表現は避ける
許認可が必要な事業は、取る予定がなければ入れない
「労働者派遣事業」「宅地建物取引業」「金融商品取引業」「貸金業」「建設業」などは、許認可がないと行えません。
目的に入れること自体は可能ですが、許可を取る予定がないのに入れると、「無許可で行うのでは」と銀行や取引先に疑われることがあります。
行う予定の事業だけを入れます。
目的が多すぎると、法人口座の審査で不利になることがある
目的を20も30も並べると、「何をしている会社か分からない」と見られ、法人口座の審査で事業の実態を問われやすくなります。
マイクロ法人なら、実際に行う事業を中心に、5〜10個程度に絞ります。
曖昧・違法・非営利の表現は避ける
「その他一切の事業」だけの目的、法律に反する事業、営利性のない活動(「地域への貢献」など)は、目的として不適切です。
法務局で登記の際に指摘されることがあります。
社員1人の定款で入れておく条文と、目的の追加
- 代表社員・業務執行社員・報酬の定め
- 相続人が持分を承継できる条文(解散を防ぐ)
- 目的を後から追加する場合:定款変更+変更登記(3万円)
代表社員・業務執行社員・報酬の定め
社員1人なら、「当会社の業務執行社員は○○とし、代表社員は業務執行社員○○とする」と定めます。
「業務執行社員の報酬は、社員の同意により定める」と入れておくと、役員報酬を決める根拠になります。
相続人が持分を承継できる条文(解散を防ぐ)
合同会社は、社員が1人もいなくなると解散します。
社員1人のマイクロ法人で社員が亡くなると、定款に定めがなければ会社は解散です。
「社員が死亡した場合、その相続人は持分を承継して社員となることができる」という条文を入れておくと、相続人が会社を引き継げます。
目的を後から追加する場合:定款変更+変更登記(3万円)
設立後に新しい事業を始めるとき、目的に含まれていなければ、社員の同意で定款を変更し、法務局に目的変更の登記を申請します。
登録免許税は3万円です。
この費用と手間を避けるため、設立時に将来の事業を含めて目的を書いておきます。
マイクロ法人(社員1人・合同会社)の定款の構成例
| 章・条 | 内容 | マイクロ法人での書き方 |
|---|---|---|
| 第1条 商号 | 合同会社○○ | 個人事業の屋号と別の名前でもよい |
| 第2条 目的 | 事業の列挙+附帯関連事業 | 法人で行う事業を5〜10個、具体的に |
| 第3条 本店 | 市区町村まで | 自宅かバーチャルオフィス |
| 第4条 公告方法 | 官報 | 定型 |
| 第5条 社員・出資 | 氏名・住所・出資額・有限責任 | 社員1人、金銭出資 |
| 第6条 持分の譲渡 | 他の社員の承諾 | 定型 |
| 第7〜8条 業務執行・代表 | 業務執行社員・代表社員 | 本人 |
| 第9条 報酬 | 社員の同意で定める | 役員報酬の根拠 |
| 第10条 事業年度 | 1年以内 | 個人の確定申告と重ならない月も検討 |
| 第11条 相続 | 相続人が持分を承継できる | 必ず入れる |
| 附則 | 最初の事業年度・資本金 | 設立日〜最初の決算日 |
ユイマイクロ法人の定款の「目的」に、何を書けばいいか分かりません。
ケイ法人で実際にやる事業と、数年内にやりそうな事業を、業種が分かる書き方で5〜10個。最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」。個人事業と別の事業にするのがマイクロ法人の前提だよ。
ユイひとりの会社でも、相続の条文は要りますか?
ケイ要る。合同会社は社員がいなくなると解散する。相続人が持分を承継できる条文を入れておけば、会社を引き継げる。
よくある質問
マイクロ法人の定款の目的は、いくつ書けばよいですか?
実際に行う事業と将来の事業を合わせて5〜10個程度が目安です。
多すぎると、法人口座の審査で事業の実態を問われやすくなります。
資産運用の会社の目的は、どう書きますか?
「有価証券の取得、保有、投資及び運用」「不動産の売買、賃貸、管理」などです。
法人の証券口座を開くときに確認されることがあります。
個人事業と同じ事業を目的に入れてもよいですか?
二刀流を前提にするなら、法人の目的は個人事業と別の事業にします。
同じ事業を形だけ分けると、税務上の問題になることがあります。
「前各号に附帯関連する一切の事業」は必要ですか?
入れるのが一般的です。
列挙した事業に付随する業務を、目的の範囲に含めるための文言です。
目的を後から追加できますか?
できます。
社員の同意で定款を変更し、法務局に目的変更の登記(登録免許税3万円)を申請します。
社員1人の定款で、必ず入れる条文は何ですか?
会社法の6つの絶対的記載事項に加えて、代表社員の定め、報酬の定め方、相続人が持分を承継できる条文です。
まとめ:次の一手
マイクロ法人の定款で最も考えるのは事業目的で、法人で実際に行う事業と将来の事業を、業種が分かる書き方で5〜10個列挙し、最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」を入れます。
許認可が必要な事業や曖昧な表現は避け、社員1人の定款には代表社員・報酬・相続人の承継の条文を入れます。目的の追加は変更登記に3万円かかるので、最初に幅を持たせます。
次の一手は、法人で行う事業を書き出し、上の文例から当てはまるものを選んで、目的の条文を作ることです。
定款全体の条文ごとの書き方は、合同会社の定款のひな形の記事で確認してください。
