合同会社を自分で設立するとき、最初に作る書類が「定款」です。
会社の基本ルールを書いたもので、株式会社と違って公証役場の認証が要らないため、自分で作ってそのまま登記に使えます。
ただ、「何を書けば足りるのか」「ひな形のどこを自分用に変えるのか」が分かりにくい書類でもあります。
この記事では、ひとりで合同会社を設立する場合の定款のひな形を、条文ごとに解説します。
根拠は会社法(第576条、第577条など)と法務局の登記案内で、2026年10月15日時点の内容を確認しています。
筆者は自分の会社の定款を自分で作り、登記まで行いました。
- 合同会社の定款は、公証役場の認証が不要。会社法で決まった6つの絶対的記載事項を押さえれば、ひとりで作れる
- ひとり合同会社なら、社員1人・業務執行社員兼代表社員・出資は金銭・事業年度は1年、という最小構成で足りる
- 紙の定款には収入印紙4万円が要るが、電子定款(PDFに電子署名)なら不要。設立費用を抑える一番の分かれ目
定款の基本:絶対的記載事項と、認証が要らない理由
- 必ず書く6つの事項(絶対的記載事項)
- 合同会社の定款は認証が不要
- 紙なら印紙4万円、電子定款なら不要
必ず書く6つの事項(絶対的記載事項)
会社法第576条で、合同会社の定款に必ず書く事項が決まっています。
目的、商号、本店の所在地、社員の氏名(名称)と住所、社員の全部を有限責任社員とする旨、社員の出資の目的とその価額(評価の標準)の6つです。
このどれかが欠けていると、定款として成り立ちません。
合同会社の定款は認証が不要
株式会社の定款は、公証役場で公証人の認証を受けないと効力がありません(認証手数料は資本金の額に応じて1万5,000円から5万円)。
合同会社の定款には、この認証が要りません。
作った定款をそのまま設立登記の添付書類にできるので、費用と手間が大きく減ります。
紙なら印紙4万円、電子定款なら不要
紙で作った定款には、印紙税法により収入印紙4万円を貼る必要があります。
PDFで作って電子署名をした「電子定款」なら、印紙税の対象外になり、4万円が不要です。
電子署名には、マイナンバーカードと、ICカードリーダー(またはスマートフォン)、そして電子署名ができるソフトが要ります。
自分で用意するのが面倒なら、会社設立サービスが電子定款の作成を無料または数千円で代行しています。
ひとり合同会社の定款ひな形(条文ごとの解説)
- 第1章 総則:商号・目的・本店・公告方法
- 第2章 社員及び出資:社員・出資・責任
- 第3章 業務の執行及び会社の代表
第1章 総則:商号・目的・本店・公告方法
第1条(商号)は、「当会社は、合同会社○○と称する。」です。「合同会社」を前か後ろに必ず入れます。
第2条(目的)は、事業の内容を列挙します。「1. Webサイトの企画・制作・保守 2. ○○ 3. 前各号に附帯関連する一切の事業」のように書きます。将来やる可能性のある事業も入れておくと、変更登記の手間が省けます。許認可が必要な事業は、許可の要件に合う文言にします。
第3条(本店の所在地)は、「当会社は、本店を東京都○○区に置く。」のように、最小行政区画(市区町村)まで書くのが一般的です。番地まで書くと、同じ区内で引っ越したときにも定款変更が必要になります。
第4条(公告方法)は、「当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。」が最もシンプルです。
第2章 社員及び出資:社員・出資・責任
第5条(社員の氏名・住所・出資・責任)は、「当会社の社員の氏名及び住所、出資の目的及びその価額並びに責任は、次のとおりである。」として、「金○○万円 東京都○○区○○ 氏名 有限責任社員」と書きます。
ひとり合同会社なら社員は1人、出資の目的は「金銭」、価額は資本金にする額です。
「社員の全部を有限責任社員とする」旨が、この条文で満たされます。
第6条(出資の履行・持分の譲渡)などは任意ですが、「社員は、他の社員全員の承諾がなければ持分を譲渡できない」といった標準的な条文を入れておきます。
第3章 業務の執行及び会社の代表
第7条(業務執行社員)は、「当会社の業務は、業務執行社員が執行する。業務執行社員は、○○(氏名)とする。」です。
第8条(代表社員)は、「当会社の代表社員は、業務執行社員○○(氏名)とする。」です。
ひとり合同会社では、社員=業務執行社員=代表社員が同じ人なので、この2条で代表者が決まります。
登記上の肩書は「代表社員」になり、株式会社の「代表取締役」にあたります。
第9条(報酬)として、「業務執行社員の報酬は、社員の同意により定める。」と入れておくと、役員報酬を決める根拠になります。
事業年度・計算・解散などの定め方
- 第4章 計算:事業年度・利益の配当
- 第5章 解散:解散事由
- 附則:最初の事業年度・設立時の資本金
第4章 計算:事業年度・利益の配当
事業年度は、「当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとする。」のように、1年以内で自由に決めます。
設立月の前月を決算月にすると、1期目が最も長くなり、消費税の免税期間を長く使えます。
利益の配当については、「社員は、当会社に対し、利益の配当を請求することができる。」など、標準的な条文で足ります。
第5章 解散:解散事由
「当会社は、次の事由により解散する。1. 総社員の同意 2. 社員が欠けたこと 3. その他法令で定める事由」といった条文を入れます。
ひとり合同会社では、社員が1人なので「社員が欠けたこと」が相続などで問題になります。相続人が持分を承継できる旨の条文(「社員が死亡した場合、その相続人は持分を承継して社員となることができる」)を入れておくと、会社が自動的に解散する事態を避けられます。
附則:最初の事業年度・設立時の資本金
附則には、「当会社の最初の事業年度は、設立の日から令和○年3月31日までとする。」と、「当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金○○万円とする。」「当会社の資本金の額は、金○○万円とする。」を書きます。
最後に作成日と、社員の氏名を書いて記名押印(電子定款なら電子署名)します。
電子定款の作り方と、よくある書き間違い
- 電子定款の作り方(自分でやる場合)
- 会社設立サービスに任せる場合
- よくある書き間違い
電子定款の作り方(自分でやる場合)
定款をワープロソフトで作り、PDFに変換します。
マイナンバーカードの署名用電子証明書で、PDFに電子署名をします。Adobe Acrobatの有料版や、法務省の「PDF署名プラグイン」を使う方法があります。
署名したPDFを、登記のオンライン申請で添付するか、CD-Rなどに保存して法務局に提出します。
自分で用意する場合、ソフトの費用がかかることがあるので、印紙代4万円との差額で判断します。
会社設立サービスに任せる場合
会社設立サービス(会計ソフト会社が提供しているものが多い)を使うと、画面の質問に答えるだけで定款が作られ、電子署名まで代行してもらえます。
費用は無料から数千円で、あわせて会計ソフトの契約を求められることがあります。
定款の内容を自分で理解したうえで、作業だけを任せるのが、いちばん失敗が少ない使い方です。
よくある書き間違い
商号の「合同会社」を抜かす。「株式会社」と書いてしまう。
目的の末尾に「前各号に附帯関連する一切の事業」を入れ忘れる。
本店所在地を番地まで書いて、引っ越しのたびに定款変更が必要になる。
社員の住所が住民票(印鑑証明書)と一致していない。
最初の事業年度の末日と、事業年度の定めが矛盾している。
登記申請の前に、定款と登記申請書の内容(商号、本店、目的、資本金、代表社員)が一字一句一致しているかを確認します。
ひとり合同会社の定款の構成(ひな形の目次)
| 章 | 条文 | ひとり会社での書き方 |
|---|---|---|
| 第1章 総則 | 商号・目的・本店所在地・公告方法 | 「合同会社○○」、目的は将来分も、本店は市区町村まで、公告は官報 |
| 第2章 社員及び出資 | 社員の氏名住所・出資・責任、持分の譲渡 | 社員1人、金銭出資、有限責任社員 |
| 第3章 業務執行・代表 | 業務執行社員・代表社員・報酬 | 本人が業務執行社員兼代表社員 |
| 第4章 計算 | 事業年度・利益の配当 | 1年以内で自由に設定 |
| 第5章 解散 | 解散事由・相続人の承継 | 相続人が持分を承継できる旨を入れる |
| 附則 | 最初の事業年度・設立時の資本金・作成日・署名 | 設立日から最初の決算日まで、資本金の額 |
ユイ定款って、自分で書いていいんですか? 専門家に頼まないと無効になりそうで。
ケイ合同会社は公証役場の認証も要らないから、自分で作ってそのまま登記に使える。会社法の6つの必須事項が入っていれば成り立つよ。
ユイ紙で作ると印紙4万円がかかるんですよね。
ケイそう。PDFに電子署名した電子定款なら不要。自分でやるならマイナンバーカードとソフト、面倒なら設立サービスに作成だけ任せる手もある。
よくある質問
合同会社の定款に、必ず書くことは何ですか?
目的、商号、本店の所在地、社員の氏名と住所、社員全員が有限責任社員である旨、社員の出資の目的と価額の6つです(会社法第576条)。
合同会社の定款は、公証役場で認証が必要ですか?
不要です。
認証が必要なのは株式会社の定款で、合同会社は作成した定款をそのまま登記に使えます。
電子定款にすると、何が違いますか?
紙の定款に必要な収入印紙4万円が不要になります。
PDFに電子署名をするために、マイナンバーカードと対応ソフトが要ります。
ひとりで設立する場合、代表社員はどう決めますか?
定款で「業務執行社員は○○とする」「代表社員は業務執行社員○○とする」と定めます。
社員が1人なら、その人が業務執行社員兼代表社員です。
本店の所在地は、番地まで書きますか?
市区町村まで書くのが一般的です。
番地まで書くと、同じ市区町村内での移転でも定款変更が必要になります。
事業年度は、どう決めればよいですか?
1年以内で自由に決められます。
設立月の前月を決算月にすると、1期目が長くなり、消費税の免税期間を長く使えます。
まとめ:次の一手
合同会社の定款は、会社法の6つの絶対的記載事項(目的・商号・本店・社員・有限責任・出資)を押さえれば、認証なしで自分で作れます。
ひとり会社なら、社員1人・業務執行社員兼代表社員・金銭出資・1年の事業年度という最小構成で足り、電子定款にすれば印紙代4万円が不要です。
次の一手は、商号・目的・本店・資本金・事業年度の5つを決めて、上の目次の順に条文を書き起こすことです。
できあがった定款を使った設立登記の流れは、合同会社を自分で設立する記事で確認してください。
