会社の決算月は、定款で自由に決められます。
「なんとなく3月」にする人が多いのですが、マイクロ法人や個人事業との二刀流では、決算月の選び方で、消費税の免税期間の長さと、申告作業の集中具合が変わります。
この記事では、マイクロ法人の決算月の決め方を、3つの考え方、決算月ごとの申告期限、役員報酬や均等割との関係、3月決算の実態、あとから変える手続きの順に説明します。
根拠は国税庁(消費税の納税義務の免除、法人税の申告期限、事業年度の変更の届出)と会社法で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の代表と個人事業主を兼ね、法人と個人の申告時期をずらして運用しています。
- 決算月は自由に決められる。マイクロ法人で重視するのは、「1期目を長くして消費税の免税期間を最大にする(設立月の前月を決算月にする)」「個人の確定申告(2〜3月)と法人の申告(決算月の2か月後)を重ねない」「繁忙期を避ける」の3つ
- 設立月の前月を決算月にすると1期目が約12か月になり、設立1期・2期の免税を最長で使える。4〜7月設立なら、3〜6月決算になり、法人の申告は5〜8月で個人の確定申告と重ならない
- 3月決算は大企業や官公庁に合わせた慣習で、ひとり会社には関係ない。決算月はあとから定款変更と異動届出書で変えられ、登記は不要
考え方1:設立月の前月にして、1期目と免税期間を最大にする
- 1期目は設立日から最初の決算月末まで(1年以内)
- 設立月の前月を決算月にすると、1期目が約12か月になる
- 消費税の免税は設立1期・2期なので、1期目が長いほど免税期間が長い
1期目は設立日から最初の決算月末まで(1年以内)
事業年度は1年以内で、設立1期目は設立日から最初の決算月の末日までです。
4月10日に設立して3月決算なら、1期目は4月10日から翌年3月31日までの約12か月です。
4月10日に設立して5月決算にすると、1期目は5月31日までの約1か月半で終わってしまいます。
設立月の前月を決算月にすると、1期目が約12か月になる
設立月の前月を決算月にすると、1期目が最も長く(約12か月)なります。
4月設立なら3月決算、7月設立なら6月決算、10月設立なら9月決算です。
消費税の免税は設立1期・2期なので、1期目が長いほど免税期間が長い
資本金1,000万円未満の法人は、設立1期目と2期目は原則として消費税が免税です(特定期間の売上と給与が1,000万円を超える場合を除く)。
1期目が12か月なら、免税期間は合計で約24か月、1期目が1か月半なら約13か月半です。
インボイス登録をしない事業(消費者向けや、免税事業者向けの取引)では、この差が納税額の差になります。
考え方2:個人の確定申告と法人の申告を重ねない
- 法人の申告・納付は決算月の2か月後
- 個人事業の確定申告は2〜3月(消費税は3月末)
- 法人の決算月を4〜9月にすると、申告作業が分散する
法人の申告・納付は決算月の2か月後
法人税・地方税・消費税の申告と納付は、事業年度終了の翌日から2か月以内です。
3月決算なら5月末、12月決算なら2月末が期限です。
個人事業の確定申告は2〜3月(消費税は3月末)
二刀流の人は、2月16日から3月15日に個人の所得税の確定申告、課税事業者なら3月31日までに消費税の申告があります。
さらに1月には、法人の法定調書合計表・給与支払報告書・償却資産申告書の提出もあります。
法人の決算月を4〜9月にすると、申告作業が分散する
法人を12月決算にすると、1月の法定調書、2月末の法人の申告、3月の個人の確定申告が、1〜3月に集中します。
3月決算でも、5月末の法人の申告と3月の個人の確定申告が近く、決算整理の時期(4月)が個人の確定申告の直後になります。
法人の決算月を4月から9月にすると、法人の申告期限は6月から11月になり、1〜3月の作業と分かれます。
考え方1と合わせると、「4〜10月に設立して、その前月を決算月にする」が、両方を満たす組み合わせです。
考え方3:繁忙期・役員報酬の改定・均等割との関係
- 繁忙期を避ける:決算月と、その翌月〜翌々月の作業時期
- 役員報酬の改定時期:期首から3か月以内が決算月で決まる
- 均等割の月割:設立1期目が短いと、その分だけ安い
繁忙期を避ける:決算月と、その翌月〜翌々月の作業時期
決算月の末日時点の在庫や売掛金を確定し、翌月から翌々月に申告書を作る作業があります。
事業の繁忙期(年末商戦、年度末の納品など)と重なると、決算作業が後回しになります。
繁忙期の2〜3か月後に申告期限が来る決算月を避けるか、逆に、閑散期に決算作業ができる決算月にします。
役員報酬の改定時期:期首から3か月以内が決算月で決まる
役員報酬を変えられるのは、期首から3か月以内です。
3月決算なら4〜6月、9月決算なら10〜12月に、前期の決算を見て役員報酬を決め直します。
決算月を決めると、毎年の役員報酬の見直し時期も決まります。
均等割の月割:設立1期目が短いと、その分だけ安い
法人住民税の均等割は、事業年度の月数で月割されます。
設立1期目が1か月半なら、均等割はその分だけ安くなります(約7万円×2/12)が、免税期間が短くなるデメリットのほうが大きいことが多いです。
均等割の節約を理由に1期目を短くする必要はありません。
3月決算の実態と、あとから決算月を変える手続き
- 3月決算が多いのは、官公庁や大企業の年度に合わせた慣習
- 決算月の変更:社員の同意で定款変更→税務署・都道府県・市町村に異動届出書
- 変更の年は事業年度が短くなり、申告が1回増える。登記は不要
3月決算が多いのは、官公庁や大企業の年度に合わせた慣習
日本の会社に3月決算が多いのは、官公庁の会計年度や、取引先の大企業の決算に合わせた慣習です。
ひとり会社やマイクロ法人には、この理由は当てはまりません。
税理士の繁忙期(3月決算の会社が集中する4〜5月)を避けるために、3月以外にする会社もあります。
決算月の変更:社員の同意で定款変更→税務署・都道府県・市町村に異動届出書
決算月をあとから変えるには、株主総会(合同会社は社員の同意)で定款の事業年度の条文を変更します。
そのうえで、税務署に「異動届出書」(事業年度の変更)を、定款の写しを添えて出し、都道府県税事務所と市町村にも異動の届出をします。
事業年度は登記事項ではないので、法務局への登記は不要です。
変更の年は事業年度が短くなり、申告が1回増える。登記は不要
たとえば3月決算から9月決算に変えると、変更の年は4月1日から9月30日までの6か月の事業年度になり、その分の申告が発生します。
均等割はその期は月割で半分です。
変更は年に何度もするものではないので、設立時にしっかり決めておくのがいちばんです。
設立月ごとのおすすめ決算月と申告期限(考え方1+2)
| 設立月 | おすすめの決算月(前月) | 1期目の長さ | 法人の申告期限 | 個人の確定申告との重なり |
|---|---|---|---|---|
| 4月 | 3月 | 約12か月 | 5月末 | 少ない(4月の決算整理が3月の直後) |
| 5月 | 4月 | 約12か月 | 6月末 | なし |
| 6月 | 5月 | 約12か月 | 7月末 | なし |
| 7月 | 6月 | 約12か月 | 8月末 | なし |
| 8月 | 7月 | 約12か月 | 9月末 | なし |
| 9月 | 8月 | 約12か月 | 10月末 | なし |
| 10月 | 9月 | 約12か月 | 11月末 | なし |
| 11月 | 10月 | 約12か月 | 12月末 | 少ない(1月の法定調書の直前) |
| 12月 | 11月 | 約12か月 | 1月末 | 重なる(1月の法定調書と同時) |
| 1月 | 12月 | 約12か月 | 2月末 | 重なる(2〜3月の確定申告と同時) |
| 2月 | 1月 | 約12か月 | 3月末 | 重なる(確定申告と同時) |
| 3月 | 2月 | 約12か月 | 4月末 | やや重なる(確定申告の直後) |
ユイ決算月って、3月にしておけばいいんですよね?
ケイ決まりはない。マイクロ法人なら、設立月の前月にして1期目を長くするのが基本。個人の確定申告と重ねたくないなら、決算月を4〜9月にする。4〜10月に設立して前月を決算月にすれば両方満たせる。
ユイあとから変えられますか?
ケイ変えられる。定款を変更して、税務署と都道府県・市町村に異動届出書を出すだけで、登記は要らない。ただし変更の年は事業年度が短くなって申告が1回増えるから、最初に決めるのがいちばん。
よくある質問
マイクロ法人の決算月は、いつがおすすめですか?
設立月の前月にして1期目を約12か月にし、消費税の免税期間を最大にするのが基本です。
個人の確定申告と重ねたくないなら、決算月を4〜9月にします。
なぜ設立月の前月がよいのですか?
1期目が最も長くなり、設立1期・2期の消費税の免税期間が最長の約24か月になるためです。
3月決算にする必要はありますか?
ありません。
3月決算は官公庁や大企業に合わせた慣習で、ひとり会社には関係ありません。
決算月で、役員報酬の改定時期は変わりますか?
変わります。
役員報酬の改定は期首から3か月以内なので、決算月の翌月から3か月が、毎年の見直し時期になります。
決算月はあとから変えられますか?
変えられます。
定款の事業年度を変更し、税務署・都道府県・市町村に異動届出書を出します。登記は不要ですが、変更の年は事業年度が短くなります。
12月決算のデメリットは何ですか?
法人の申告期限(2月末)が、1月の法定調書と2〜3月の個人の確定申告と重なり、作業が集中することです。
まとめ:次の一手
マイクロ法人の決算月は、設立月の前月にして1期目と免税期間を最大にし、個人の確定申告(2〜3月)と法人の申告(決算月の2か月後)が重ならない4〜9月を選び、繁忙期を避けるのが基本です。
3月決算にする理由はなく、あとから変える場合は定款変更と異動届出書で済みますが、変更の年は申告が1回増えます。
次の一手は、設立予定の月から上の表で決算月を決め、定款の事業年度の条文に書くことです。
決算と申告の期限の詳細は、あわせて読みたい記事で確認してください。
