会社を作って役員報酬を払い始めるとき、税務署に出す書類のひとつが「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」です。
名前が長く、「給与支払事務所って、うちの会社のこと?」と戸惑う人が多い書類です。
この記事では、この届出書の書き方を、国税庁の記載要領にそって欄ごとに記載例つきで説明します。
提出期限、提出先、ほかの届出との同時提出、出し忘れた場合の扱いもまとめます。
根拠は国税庁の「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書の記載要領等」と案内ページ(A2-7)で、2026年10月15日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の代表として、設立のときにこの届出書を法人設立届出書と一緒に自分で提出しました。
- 給与支払事務所等の開設届出書は、役員報酬や給与を払い始める会社が、給与事務を行う事務所を設けた日から1か月以内に税務署へ出す
- 書く欄は、会社の情報、届出の区分(開設)、開設の理由(法人の設立)、給与支払を開始する年月日、従事員数(役員1人)など。添付書類はない
- 法人設立届出書、納期の特例の承認に関する申請書と一緒に出せば、税務署に行くのは1回で済む
給与支払事務所等の開設届出書とは
- 何のための届出か
- 提出期限と提出先
- ひとり会社でも必要か
何のための届出か
給与や役員報酬を払う会社は、支払いのときに所得税を天引き(源泉徴収)して、税務署に納めます。
この源泉徴収の事務を行う事務所を「給与支払事務所等」といい、それを設けたことを税務署に知らせるのがこの届出書です。
届出を出すと、税務署から源泉所得税の納付書や、年末調整の案内が届くようになります。
提出期限と提出先
国税庁の記載要領では、給与支払事務所等を開設、移転、廃止した日から1か月以内に提出するとされています。
提出先は、給与支払事務所等の所在地を管轄する税務署です。
本店で給与事務をするなら、本店所在地の税務署です。
ひとり会社でも必要か
必要です。
役員ひとりの会社でも、役員報酬を払えば源泉徴収義務者になります。
役員報酬をゼロにしていて、誰にも給与を払わない間は不要です。報酬を払い始めるときに出します。
欄ごとの書き方と記載例
- 上段:事務所開設者の情報
- 中段:届出の区分と「開設の内容及び理由」
- 下段:給与支払を開始する年月日・従事員数
上段:事務所開設者の情報
上段の「事務所開設者」の欄には、会社の本店所在地、会社名(フリガナも)、法人番号、代表者の氏名を書きます。
個人番号または法人番号の欄には、13桁の法人番号を書きます。まだ指定されていなければ空欄で構いません。
提出日と、宛先の税務署名も書きます。
中段:届出の区分と「開設の内容及び理由」
「届出の内容」の「届出書種別」には、該当する届出区分の数字を書きます。新しく会社を作った場合は「開設」です。
「届出の内容及び理由」には、該当する区分の数字を書きます。法人を新しく設立して給与を払い始める場合は、「開業又は法人の設立」にあたる区分を選びます。
個人事業から法人成りした場合も、法人としては新規の開設です。
「給与支払事務所等について」の欄には、開設した事務所の所在地と名称を書きます。本店と同じなら、本店所在地と会社名です。
下段:給与支払を開始する年月日・従事員数
「給与支払を開始する年月日」は、記載要領によると、開設した月の中に給与の支払いが始まらない場合に、支払いを開始した日(または開始予定日)を書く欄です。
設立月から役員報酬を払うなら空欄でもよく、翌月以降に払い始めるならその日付を書きます。
「従事員数」には、給与を払う人の数を職種別に書きます。役員ひとりなら、役員の欄に「1」です。
従業員がいれば従業員の欄に人数を、アルバイトなど「役員」「従業員」以外は「その他」の区分に職種と人数を書きます。
記載例を表にまとめます。
| 欄 | 記載例(役員ひとり・設立と同時に報酬開始) |
|---|---|
| 提出日・税務署名 | 提出する日と、本店所在地を管轄する税務署 |
| 住所又は本店所在地 | 登記した本店所在地 |
| 氏名又は名称 | 会社名(フリガナも) |
| 個人番号又は法人番号 | 13桁の法人番号(未指定なら空欄) |
| 代表者氏名 | 代表取締役(合同会社は代表社員)の氏名 |
| 届出書種別 | 開設 |
| 届出の内容及び理由 | 開業又は法人の設立 |
| 給与支払事務所等について(開設) | 本店所在地と会社名 |
| 給与支払を開始する年月日 | 設立月に支払開始なら空欄、翌月以降なら開始日 |
| 従事員数 | 役員 1人 |
| その他参考事項 | 法人成りなら、廃業した個人事業の事業主名・納税地など |
| 税理士署名 | 税理士が作成した場合のみ |
ほかの届出と一緒に出す
- 法人設立届出書との関係
- 納期の特例の申請書と一緒に
- 青色申告の承認申請書も同時に
法人設立届出書との関係
法人設立届出書には、「『給与支払事務所等の開設届出書』提出の有無」という欄があります。
2枚を同時に出す場合は、その欄に「有」の番号を書きます。
すでに別途提出している場合は「1」と書くよう、記載要領に指示があります。
納期の特例の申請書と一緒に
役員報酬の源泉所得税を年2回にまとめる「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も、この届出書と一緒に出すのが定番です。
給与支払事務所の開設と納期の特例は、どちらも源泉所得税に関する手続きなので、税務署の同じ窓口で受け付けてもらえます。
申請書の書き方は、別の記事で説明しています。
青色申告の承認申請書も同時に
法人税の青色申告をするなら、「青色申告の承認申請書」も同時に出します。
期限は、設立から3か月を経過した日と、第1期の事業年度の末日のどちらか早い日の前日です。
設立のときに税務署へ出す書類は、法人設立届出書、給与支払事務所等の開設届出書、納期の特例の申請書、青色申告の承認申請書の4枚と覚えておけば漏れません。
出し忘れ・移転・廃止のときの扱い
- 出し忘れたら、期限後でも出す
- 本店を移転したとき
- 会社をたたむとき(廃止)
出し忘れたら、期限後でも出す
1か月の期限を過ぎても、届出書はそのまま受け付けてもらえます。
罰則の規定もありませんが、届出がないと納付書が届かず、源泉所得税の納付が遅れて延滞税がつくことがあります。
役員報酬を払い始めているのに出していないことに気づいたら、すぐに提出します。
本店を移転したとき
本店を移して給与支払事務所が変わるときは、同じ様式で「移転」の区分を選び、移転前の事務所所在地を管轄する税務署に出します。
記載要領によると、移転前の支払いにかかる源泉所得税の納税地は、届出書に書いた移転後の所在地になります。
法人の本店移転では、法人の「異動届出書」も別に必要です。
会社をたたむとき(廃止)
会社を解散して給与を払わなくなるときは、「廃止」の区分で届け出ます。
役員報酬をゼロにして給与の支払いがなくなっただけの場合は、廃止ではなく、支払いが再開するまで源泉所得税の納付書を「0円」で出し続けるのが一般的な扱いです。迷う場合は税務署に確認してください。
設立時に税務署へ出す4つの届出の比較
| 書類 | 期限 | 添付書類 | 出さないとどうなるか |
|---|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 設立から2か月以内 | 定款の写し | 申告書類が届かない |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 事務所を設けた日から1か月以内 | なし | 納付書が届かず、納付が遅れやすい |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 期限なし(早いほどよい) | なし | 毎月納付のまま |
| 青色申告の承認申請書 | 設立から3か月以内か第1期末日の前日の早い日 | なし | 第1期が白色申告になる |
ユイ「給与支払事務所」って、うちの会社のことでいいんですか? 事務所なんて借りてないんですが。
ケイ会社そのもの、正確には給与の事務をする場所のこと。自宅が本店なら、自宅の住所を書けばいい。
ユイ設立届と一緒に出せばいいんですね。
ケイそう。法人設立届出書、この開設届出書、納期の特例の申請書、青色申告の承認申請書の4枚を一度に出す。税務署に行くのは1回で済むよ。
よくある質問
給与支払事務所等の開設届出書は、いつまでに出しますか?
給与支払事務所等を開設した日から1か月以内です。
設立と同時に役員報酬を払うなら、設立日から1か月以内と考えておきます。
役員ひとりの会社でも必要ですか?
役員報酬を払うなら必要です。
報酬ゼロで誰にも給与を払わない間は不要で、払い始めるときに出します。
添付書類はありますか?
ありません。
届出書1枚だけで提出できます。
法人設立届出書と同時に出せますか?
出せます。
法人設立届出書の「給与支払事務所等の開設届出書提出の有無」の欄に、同時提出の番号を書きます。
出し忘れたら、どうなりますか?
期限後でも受け付けてもらえ、罰則はありません。
ただし納付書が届かず納付が遅れる原因になるので、気づいたらすぐに出します。
e-Taxで提出できますか?
できます。
e-Taxソフト(WEB版)で作成して送信します。法人設立届出書などと一緒に送れます。
まとめ:次の一手
給与支払事務所等の開設届出書は、役員報酬や給与を払い始める会社が、事務所を設けた日から1か月以内に、本店所在地の税務署へ出す1枚の届出書です。
書く欄は、会社の情報、届出の区分(開設)、理由(法人の設立)、給与支払の開始日、従事員数(役員1人)で、添付書類はありません。
法人設立届出書、納期の特例の申請書、青色申告の承認申請書と一緒に出せば、税務署に行くのは1回で済みます。
次の一手は、国税庁のサイトから届出書のPDFを入手し、法人設立届出書と並べて同じ日に記入することです。
一緒に出す納期の特例の申請書の書き方は、あわせて読みたい記事で確認してください。
