日々の記帳を会計ソフトの自動取込で済ませていても、決算では「期末時点の実態」に帳簿を合わせる仕訳が必要です。
これが決算整理仕訳で、売上と経費の期間のズレ、減価償却、消費税と法人税の計上など、日々の記帳では出てこない項目を一度にまとめて処理します。
この記事では、ひとり会社の決算整理仕訳を12項目の一覧と仕訳例で説明し、処理の順番、会計ソフトの機能、整理後の確認をまとめます。
根拠は、法人税法(売上と費用の計上時期、減価償却、貸倒引当金)、消費税法(税抜経理の精算)、企業会計の一般的な処理で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の決算を自分で行い、この12項目をチェックリストにして毎年確認しています。
- 決算整理は、「期末時点の実態に帳簿を合わせる」作業。日々の記帳では入らない、売掛金・未払金・前払費用・減価償却・棚卸・未払法人税等・消費税の精算など12項目を、決算日の翌月に一度にまとめて仕訳する
- ひとり会社で漏れやすいのは、3月に提供したサービスの請求が4月の売掛金計上、3月分の社会保険料や通信費の未払い計上、年払いの保険料やサーバー代の前払費用、役員借入金の残高と実際の立替額の照合
- 順番は、1 残高の実査(現金・預金・役員借入金)→2 期間のズレの修正(売掛・未払・前払)→3 資産の整理(減価償却・棚卸・創立費)→4 消費税の精算→5 法人税等の計上。会計ソフトの決算整理機能を使えば、減価償却と消費税は自動で仕訳が作られる
項目1〜4:残高の実査と、期間のズレの修正
- 項目1:現金・預金・役員借入金の残高を実際と照合。差額は雑損失・雑収入か、立替の記帳漏れ
- 項目2:期末までに提供した売上で未請求・未入金のもの→売掛金。期末までに受けた役務で未払いのもの→未払金・未払費用
- 項目3〜4:翌期分を前払いしたもの→前払費用。翌期分を前受けしたもの→前受金
項目1:現金・預金・役員借入金の残高を実際と照合。差額は雑損失・雑収入か、立替の記帳漏れ
決算日の預金残高と帳簿の普通預金の残高、手元の現金と帳簿の現金を照合します。
差額があれば原因を探し、見つからない少額の差額は雑損失か雑収入で処理します。
役員借入金は、代表者が立て替えた経費と会社からの返済を1年分集計し、帳簿の残高と合っているかを確認します。代表者が個人カードで払った経費の記帳漏れが、ここで見つかります。
仕訳例:現金の実際残高が帳簿より1,000円少ない→「雑損失1,000/現金1,000」。
項目2:期末までに提供した売上で未請求・未入金のもの→売掛金。期末までに受けた役務で未払いのもの→未払金・未払費用
3月決算で、3月中に納品やサービス提供が終わり、請求が4月、入金が5月の売上は、3月の売上です。
「売掛金110,000/売上高100,000・仮受消費税10,000」(税抜経理)で計上します。
同じく、3月分の通信費、水道光熱費、外注費で支払いが4月以降のものは、「通信費/未払金」で3月の経費にします。
項目3〜4:翌期分を前払いしたもの→前払費用。翌期分を前受けしたもの→前受金
年払いのサーバー代、保険料、ソフトの年間利用料で、翌期の分が含まれているものは、翌期分を前払費用に振り替えます。
仕訳例:3月に12か月分12万円のサーバー代を払った(4月から翌年3月分)→全額が翌期分なので「前払費用120,000/通信費120,000」。
ただし、1年以内の役務で毎年同じように払っているものは、払った年の経費にできる特例(短期前払費用)があり、継続して適用すれば振替えは不要です。
翌期分の売上を先に受け取っていれば、「売上高/前受金」で翌期に繰り延べます。
項目5〜8:減価償却、棚卸、役員借入金の利息、創立費の償却
- 項目5:固定資産の減価償却費を計上(定率法か定額法、月割)。30万円未満の特例は全額
- 項目6:商品を扱う会社は期末棚卸。期首商品棚卸高と期末商品棚卸高で売上原価を確定
- 項目7〜8:役員借入金は無利息でよい(役員貸付金は利息が必要)。創立費・開業費の償却は任意
項目5:固定資産の減価償却費を計上(定率法か定額法、月割)。30万円未満の特例は全額
固定資産台帳に登録した資産の減価償却費を計上します。
法人は、建物以外は定率法が原則(届出で定額法も可)で、期中に買った資産は使った月数で月割りします。
仕訳例:「減価償却費50,000/工具器具備品50,000」(直接法)または「/減価償却累計額」(間接法)。会計ソフトの固定資産台帳から自動で仕訳が作られます。
項目6:商品を扱う会社は期末棚卸。期首商品棚卸高と期末商品棚卸高で売上原価を確定
商品を仕入れて売る会社(古着販売など)は、決算日に在庫を数えて金額を出します。
仕訳例:期首の在庫30万円、期末の在庫40万円→「期首商品棚卸高300,000/商品300,000」「商品400,000/期末商品棚卸高400,000」。
これで、仕入高+期首在庫−期末在庫=売上原価が確定します。
項目7〜8:役員借入金は無利息でよい(役員貸付金は利息が必要)。創立費・開業費の償却は任意
役員が会社に貸しているお金(役員借入金)は、無利息でも税務上の問題はありません。
逆に会社が役員に貸している(役員貸付金)なら、適正な利息を計上しないと役員への給与とみなされます。
創立費・開業費は、償却するなら「創立費償却/創立費」で、額は任意です。黒字なら償却、赤字なら繰り越す判断をします。
項目9〜10:貸倒引当金と、消費税の精算
- 項目9:売掛金がある中小法人は、貸倒引当金を法定繰入率(業種により0.3〜1.3%)で計上できる(任意)
- 項目10(税抜経理):仮受消費税−仮払消費税=未払消費税。端数は雑収入・雑損失
- 項目10(税込経理):納付額を「租税公課/未払消費税等」で計上。免税事業者は不要
項目9:売掛金がある中小法人は、貸倒引当金を法定繰入率(業種により0.3〜1.3%)で計上できる(任意)
期末に売掛金や貸付金がある中小法人は、将来の貸倒れに備えて、売掛金などの残高に法定繰入率(卸売・小売業1%、製造業0.8%、サービス業など0.6%、金融・保険0.3%、割賦小売1.3%)を掛けた額を貸倒引当金として損金にできます。
仕訳例:売掛金100万円、サービス業→「貸倒引当金繰入6,000/貸倒引当金6,000」。翌期に「貸倒引当金6,000/貸倒引当金戻入6,000」で戻します。
任意なので、手間に見合わなければ省略してもかまいません。
項目10(税抜経理):仮受消費税−仮払消費税=未払消費税。端数は雑収入・雑損失
税抜経理の課税事業者は、期中に「仮受消費税」(売上に含まれる消費税)と「仮払消費税」(仕入や経費に含まれる消費税)を積み上げています。
決算で、消費税の申告書で計算した納付額と、仮受−仮払の差額を照合し、「仮受消費税○○/仮払消費税○○・未払消費税等○○」で精算します。
申告書の納付額と帳簿の差額に端数の差が出たら、雑収入か雑損失で処理します。簡易課税や2割特例の場合は、差額が大きくなり、雑収入になります。
項目10(税込経理):納付額を「租税公課/未払消費税等」で計上。免税事業者は不要
税込経理の場合は、期中は消費税を分けていないので、決算で申告書の納付額を「租税公課/未払消費税等」で計上します(翌期の納付時に経費にする方法も認められます)。
免税事業者は消費税の仕訳は不要です。
項目11〜12:法人税等の計上、社会保険料の未払い、整理後の確認
- 項目11:法人税・地方法人税・法人住民税・事業税の確定額を「法人税、住民税及び事業税/未払法人税等」で計上
- 項目12:3月分の社会保険料(翌月末引落し)の会社負担分を「法定福利費/未払費用」で計上。仮払金・仮受金の残高をゼロに
- 整理後の確認:貸借対照表の各残高が実際の残高(通帳、固定資産台帳、請求書)と一致するか
項目11:法人税・地方法人税・法人住民税・事業税の確定額を「法人税、住民税及び事業税/未払法人税等」で計上
決算整理の最後に、法人税の申告書を作って税額を確定させ、法人税・地方法人税・法人住民税(均等割を含む)・事業税の合計を「法人税、住民税及び事業税○○/未払法人税等○○」で計上します。
赤字でも、均等割(年7万円前後)は計上します。
中間納付をしていれば、「仮払法人税等」と相殺します。
項目12:3月分の社会保険料(翌月末引落し)の会社負担分を「法定福利費/未払費用」で計上。仮払金・仮受金の残高をゼロに
3月分の社会保険料は4月末に引き落とされるので、決算日時点では未払いです。会社負担分を「法定福利費/未払費用」で3月の経費に計上します(本人負担分は預り金で処理済み)。
期中に「仮払金」「仮受金」で処理した取引は、内容を確定して正しい科目に振り替え、決算書に仮払金・仮受金が残らないようにします。
整理後の確認:貸借対照表の各残高が実際の残高(通帳、固定資産台帳、請求書)と一致するか
すべての整理仕訳を入れたら、貸借対照表を出力し、現金・預金は通帳、売掛金と未払金は請求書の一覧、固定資産は台帳、役員借入金は立替の集計、預り金(源泉所得税・社会保険料)は納付予定額、とそれぞれ照合します。
すべて合えば、決算書と申告書の作成に進めます。
決算整理仕訳12項目の一覧
| 番号 | 項目 | 仕訳例(借方/貸方) | 対象 |
|---|---|---|---|
| 1 | 現金・預金・役員借入金の残高照合 | 雑損失/現金(差額) | 全社 |
| 2 | 売掛金・未払金の計上 | 売掛金/売上高、通信費/未払金 | 全社 |
| 3 | 前払費用 | 前払費用/通信費 | 年払いがある会社 |
| 4 | 前受金 | 売上高/前受金 | 前受けがある会社 |
| 5 | 減価償却 | 減価償却費/工具器具備品 | 固定資産がある会社 |
| 6 | 棚卸 | 期首商品棚卸高/商品、商品/期末商品棚卸高 | 商品を扱う会社 |
| 7 | 役員貸付金の利息 | 未収入金/受取利息 | 役員貸付金がある会社 |
| 8 | 創立費・開業費の償却 | 創立費償却/創立費 | 設立から数年の会社(任意) |
| 9 | 貸倒引当金 | 貸倒引当金繰入/貸倒引当金 | 売掛金がある会社(任意) |
| 10 | 消費税の精算 | 仮受消費税/仮払消費税・未払消費税等 | 課税事業者 |
| 11 | 法人税等の計上 | 法人税、住民税及び事業税/未払法人税等 | 全社(均等割を含む) |
| 12 | 社会保険料の未払い・仮払金の精算 | 法定福利費/未払費用 | 社会保険に加入している会社 |
ユイ会計ソフトで毎月記帳しているので、決算は特にやることがない気がします。
ケイ日々の記帳には入らない項目がある。3月に提供して4月に請求した売上、3月分の社会保険料の未払い、年払いの前払費用、減価償却、消費税と法人税の計上。この12項目を決算日の翌月にまとめて入れるのが決算整理。
ユイ順番はありますか?
ケイまず残高の照合、次に期間のズレ(売掛・未払・前払)、資産の整理(減価償却・棚卸・創立費)、消費税の精算、最後に法人税等の計上。法人税は利益が確定しないと計算できないから、いちばん最後。
よくある質問
決算整理仕訳とは何ですか?
決算日時点の実態に帳簿を合わせるための仕訳で、売掛金や未払金の計上、前払費用、減価償却、消費税と法人税の計上など、日々の記帳では出てこない項目を処理します。
ひとり会社で漏れやすい項目は何ですか?
期末までに提供して翌期に請求した売上の売掛金、期末月の社会保険料や通信費の未払い計上、年払いの前払費用、役員借入金の残高照合です。
減価償却は自分で計算しますか?
会計ソフトの固定資産台帳に登録すれば、自動で計算と仕訳ができます。
消費税の精算の仕訳はどうしますか?
税抜経理なら仮受消費税と仮払消費税を相殺して未払消費税等を計上し、税込経理なら納付額を租税公課で計上します。
免税事業者は不要です。
法人税はどの時点で仕訳しますか?
すべての整理仕訳を入れて利益を確定させ、申告書で税額を計算したあと、最後に未払法人税等で計上します。
整理が終わったら、何を確認しますか?
貸借対照表の各残高(預金、売掛金、未払金、固定資産、役員借入金、預り金)が、通帳や請求書や台帳の実際の数字と一致するかを確認します。
まとめ:次の一手
決算整理仕訳は、残高の照合、売掛金・未払金・前払費用の期間修正、減価償却・棚卸・創立費の資産整理、消費税の精算、法人税等の計上の順に12項目を処理し、最後に貸借対照表を実際の残高と照合します。
会計ソフトの固定資産台帳と消費税の自動計算を使えば、手で入れるのは期間のズレと役員借入金の照合が中心です。
次の一手は、上の12項目の一覧を自社用のチェックリストにし、決算日の翌月の最初の週に、通帳と請求書を並べて順に確認することです。
決算から申告までの全体の流れは、あわせて読みたい記事で確認してください。
