役員が40歳になると、社会保険料に「介護保険料」が加わり、納付額と役員報酬の天引き額が変わります。
届出は不要で自動で加算されますが、「いつの分から」「天引きはいつから変えるか」を知らないと、給与計算がずれて、預り金が合わなくなります。
この記事では、役員が40歳になったときの介護保険料を、加わる時期の決まり、届出の要否、料率と金額、役員報酬の天引きの変更、納付額の確認と会計ソフトの設定、65歳以降の扱い、間違えやすい点の順に説明します。
根拠は、介護保険法(第2号被保険者の範囲)、健康保険法(介護保険料の徴収)、協会けんぽ(介護保険料率)、日本年金機構(介護保険料の徴収開始時期)で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。料率は年度ごとに変わります。
筆者はひとり会社の役員として、自分の年齢の変わり目に給与計算の設定を確認しています。
- 介護保険料は、40歳の誕生日の「前日」が属する月の分から加わる。4月15日生まれなら4月分から、4月1日生まれなら前日が3月31日なので3月分から。年金事務所への届出は不要で、納入告知書に自動で加算される
- 料率は協会けんぽで全国一律約1.6%(年度ごとに改定)で、標準報酬月額に掛けた額を会社と本人で折半。標準報酬月額30万円なら月約4,800円の合計で、本人負担は約2,400円。役員報酬からの天引きは、翌月控除なら40歳になった月の翌月の給与から増やす
- 65歳になると健康保険の介護保険料は外れ(65歳の誕生日の前日が属する月の分から)、第1号被保険者として市町村が年金から天引きする形に変わる。会計ソフトの給与計算に生年月日を登録していれば、40歳と65歳の切り替えは自動で処理される
介護保険料が加わる時期の決まり
- 決まり:40歳の誕生日の「前日」が属する月の分から、介護保険の第2号被保険者として保険料がかかる。年齢は法律上、誕生日の前日に1つ上がる(年齢計算に関する法律)ため
- 例:4月15日生まれ→前日は4月14日→4月分から。4月1日生まれ→前日は3月31日→3月分から。月の途中の誕生日は、その月の分から(日割りはない)
- 届出:年金事務所への届出は不要。資格取得届に書いた生年月日から、年金事務所が自動で判定し、納入告知書に介護保険料が加算される
決まり:40歳の誕生日の「前日」が属する月の分から、介護保険の第2号被保険者として保険料がかかる。年齢は法律上、誕生日の前日に1つ上がる(年齢計算に関する法律)ため
介護保険の第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)になるのは、「40歳に達した日」からで、法律上、年齢は誕生日の前日に1つ上がります。
そのため、介護保険料は「誕生日の前日が属する月」の分から徴収されます。
例:4月15日生まれ→前日は4月14日→4月分から。4月1日生まれ→前日は3月31日→3月分から。月の途中の誕生日は、その月の分から(日割りはない)
誕生日が月の2日以降なら、誕生日の月の分からです。
誕生日が月の1日なら、前日が前月の末日になるので、前月の分から始まります。4月1日生まれなら3月分からです。
月の途中から加入しても、その月の1か月分の保険料がかかり、日割りはありません。
届出:年金事務所への届出は不要。資格取得届に書いた生年月日から、年金事務所が自動で判定し、納入告知書に介護保険料が加算される
40歳になったことを年金事務所に届け出る必要はありません。
資格取得届で届け出た生年月日をもとに、年金事務所が自動で介護保険料を加算し、該当月分の納入告知書(口座振替額通知書)から介護保険料の欄に金額が入ります。
料率と金額、役員報酬の天引きの変更
- 料率:協会けんぽの介護保険料率は全国一律で約1.6%(2025年度は1.59%。年度ごとに3月分から改定)。健康保険組合は組合ごとに異なる。標準報酬月額×料率が月の保険料で、会社と本人で折半
- 金額の例:標準報酬月額30万円なら、30万円×1.59%=4,770円の合計で、本人負担は2,385円(端数処理で2,385円または2,386円)。標準報酬月額50万円なら合計7,950円、本人負担3,975円
- 天引きの変更:翌月控除(前月分の保険料を当月の給与から引く)の会社なら、40歳になった月の翌月の役員報酬から、介護保険料の本人負担分を増やす。4月15日生まれなら、4月分から保険料がかかり、5月の役員報酬から天引きが増える
料率:協会けんぽの介護保険料率は全国一律で約1.6%(2025年度は1.59%。年度ごとに3月分から改定)。健康保険組合は組合ごとに異なる。標準報酬月額×料率が月の保険料で、会社と本人で折半
協会けんぽの介護保険料率は、健康保険料率(都道府県別)と違って全国一律で、年度ごとに改定されます。
標準報酬月額に料率を掛けた額が月の介護保険料で、健康保険料・厚生年金保険料と同じく会社と本人で折半します。
金額の例:標準報酬月額30万円なら、30万円×1.59%=4,770円の合計で、本人負担は2,385円(端数処理で2,385円または2,386円)。標準報酬月額50万円なら合計7,950円、本人負担3,975円
標準報酬月額30万円の役員なら、介護保険料の合計は月約4,800円、本人負担は約2,400円です。
年間では会社と本人で約5.7万円の負担増になります。
本人負担の端数(50銭以下は切捨て、50銭超は切上げ)は、協会けんぽの保険料額表で確認します。
天引きの変更:翌月控除(前月分の保険料を当月の給与から引く)の会社なら、40歳になった月の翌月の役員報酬から、介護保険料の本人負担分を増やす。4月15日生まれなら、4月分から保険料がかかり、5月の役員報酬から天引きが増える
役員報酬からの天引きは、会社の控除のタイミングに合わせて変えます。
一般的な翌月控除(4月分の保険料を5月の給与から引く)なら、4月分から介護保険料がかかる人は、5月に支払う役員報酬から天引き額を増やします。
当月控除(4月分を4月の給与から引く)にしている会社なら、4月の給与から増やします。
納付額の確認、会計ソフトの設定、65歳以降
- 納付額の確認:該当月分の納入告知書(または口座振替額通知書)の「介護保険料」の欄に金額が入る。健康保険料と別の欄なので、合計額が前月より増えていることと、内訳の介護保険料が標準報酬月額×料率になっていることを確認
- 会計ソフトの設定:給与計算に役員の生年月日が登録されていれば、40歳になった月(翌月控除なら翌月の給与)から介護保険料の本人負担が自動で天引きに加わる。登録がないと加算されないので、納入告知書と給与計算の本人負担×2がずれたら生年月日を確認
- 65歳以降:65歳の誕生日の前日が属する月の分から、健康保険の介護保険料(第2号)は徴収されなくなり、第1号被保険者として市町村が介護保険料を決めて、原則として老齢年金から天引き(特別徴収)する。会社の給与計算からは介護保険料が外れる。これも届出不要で自動
納付額の確認:該当月分の納入告知書(または口座振替額通知書)の「介護保険料」の欄に金額が入る。健康保険料と別の欄なので、合計額が前月より増えていることと、内訳の介護保険料が標準報酬月額×料率になっていることを確認
40歳になった月の分の納入告知書から、介護保険料の欄に金額が入ります。
合計額が前月より増えているので、その増加分が「標準報酬月額×介護保険料率」と一致しているかを確認します。
会計ソフトの設定:給与計算に役員の生年月日が登録されていれば、40歳になった月(翌月控除なら翌月の給与)から介護保険料の本人負担が自動で天引きに加わる。登録がないと加算されないので、納入告知書と給与計算の本人負担×2がずれたら生年月日を確認
会計ソフトの給与計算機能は、登録した生年月日から介護保険の対象かを自動で判定し、該当月から天引きを増やします。
生年月日が登録されていない、または控除のタイミング(翌月控除か当月控除か)の設定が実態と違うと、天引きが始まらなかったり、月がずれたりします。
納入告知書の本人負担分(合計÷2)と、給与計算の天引き額がずれたら、この設定を確認します。
65歳以降:65歳の誕生日の前日が属する月の分から、健康保険の介護保険料(第2号)は徴収されなくなり、第1号被保険者として市町村が介護保険料を決めて、原則として老齢年金から天引き(特別徴収)する。会社の給与計算からは介護保険料が外れる。これも届出不要で自動
65歳になると、介護保険の第1号被保険者になり、保険料は市町村が所得に応じて決めて、年金から天引き(年金額が少ない場合は納付書)します。
健康保険からの介護保険料の徴収は、65歳の誕生日の前日が属する月の分からなくなり、会社の給与計算からも外れます。
こちらも届出は不要で、納入告知書から自動で外れます。
間違えやすい点と、確認のチェックリスト
- 間違い1:誕生日の月から徴収と思い込む→正しくは誕生日の前日が属する月。1日生まれは前月から。特に4月1日生まれは3月分からで、料率改定(3月分から)と重なる
- 間違い2:天引きを40歳になった月の給与から増やす→翌月控除なら翌月の給与から。先に引くと、その月の預り金が納付額と合わなくなる
- 間違い3:納入告知書の増加に気づかず、給与計算で天引きを増やさない→本人負担分を会社が負担した形になり、本来は役員への給与(経済的利益)。差額を翌月以降の給与で精算する
間違い1:誕生日の月から徴収と思い込む→正しくは誕生日の前日が属する月。1日生まれは前月から。特に4月1日生まれは3月分からで、料率改定(3月分から)と重なる
「40歳の誕生日の月から」ではなく「誕生日の前日が属する月から」です。
月の途中の誕生日なら結果は同じですが、1日生まれの人は前月からになります。
4月1日生まれなら3月分からで、ちょうど協会けんぽの料率改定(3月分から新料率)と同じ月に変わるので、2つの変更を同時に反映します。
間違い2:天引きを40歳になった月の給与から増やす→翌月控除なら翌月の給与から。先に引くと、その月の預り金が納付額と合わなくなる
翌月控除の会社で、40歳になった月の給与から介護保険料を引いてしまうと、その月に預かった額が、その月末に納める前月分の保険料(介護保険料なし)と合わなくなります。
控除のタイミングと納付のタイミングをそろえて、翌月控除なら翌月の給与から増やします。
間違い3:納入告知書の増加に気づかず、給与計算で天引きを増やさない→本人負担分を会社が負担した形になり、本来は役員への給与(経済的利益)。差額を翌月以降の給与で精算する
納付額が増えたのに給与の天引きを増やさないと、本人負担分を会社が払っている状態になります。
これは役員への経済的利益の供与で、放置すると給与として扱われます。
気づいたら、引き忘れた分を翌月以降の役員報酬からまとめて天引きして精算します。
介護保険料の開始・終了と天引きのタイミング(翌月控除の場合)
| 誕生日 | 介護保険料の開始(40歳) | 天引きの開始(翌月控除) | 介護保険料の終了(65歳) |
|---|---|---|---|
| 4月15日 | 4月分から | 5月支給の役員報酬から | 65歳の4月分から徴収なし |
| 4月1日 | 3月分から(前日が3月31日) | 4月支給の役員報酬から | 65歳の3月分から徴収なし |
| 10月31日 | 10月分から | 11月支給の役員報酬から | 65歳の10月分から徴収なし |
| 1月1日 | 12月分から(前日が12月31日) | 1月支給の役員報酬から | 65歳の12月分から徴収なし |
当月控除の会社は、天引きの開始がそれぞれ1か月早まります。
ユイ来月40歳になります。年金事務所に何か届け出ますか?
ケイ届出は不要。生年月日から自動で、誕生日の前日が属する月の分から介護保険料が納入告知書に加わる。会社側でやるのは、役員報酬の天引きを翌月控除なら翌月の給与から増やすこと。会計ソフトに生年月日が入っていれば自動。
ユイ4月1日生まれです。4月分からですか?
ケイ3月分から。年齢は誕生日の前日に上がるから、前日の3月31日が属する3月分から介護保険料がかかる。ちょうど料率改定の月と重なるので、納入告知書の内訳をよく確認して。
よくある質問
介護保険料はいつから加わりますか?
40歳の誕生日の前日が属する月の分からです。
4月15日生まれなら4月分から、4月1日生まれなら3月分からです。
年金事務所に届出は必要ですか?
不要です。
資格取得届の生年月日から自動で判定され、納入告知書に加算されます。
料率と金額はどのくらいですか?
協会けんぽで全国一律約1.6%(年度ごとに改定)を標準報酬月額に掛け、会社と本人で折半します。
標準報酬月額30万円なら合計月約4,800円、本人負担約2,400円です。
役員報酬の天引きはいつから変えますか?
翌月控除なら、40歳になった月の翌月の役員報酬から本人負担分を増やします。
当月控除ならその月からです。
65歳になったらどうなりますか?
65歳の誕生日の前日が属する月の分から、健康保険の介護保険料は徴収されなくなり、第1号被保険者として市町村が年金から天引きします。
届出は不要です。
天引きを増やし忘れていました。
引き忘れた本人負担分を、翌月以降の役員報酬からまとめて天引きして精算します。
放置すると会社が本人負担分を負担した形になり、給与として扱われます。
まとめ:次の一手
役員が40歳になると、誕生日の前日が属する月の分から介護保険料(協会けんぽ約1.6%、会社と本人で折半)が自動で納入告知書に加わり、届出は不要です。
会社がやるのは、翌月控除なら翌月の役員報酬から本人負担分の天引きを増やすことで、会計ソフトに生年月日を登録していれば自動で処理され、65歳になると健康保険の介護保険料は外れて年金からの天引きに変わります。
次の一手は、役員の生年月日が会計ソフトの給与計算に登録されているかと、控除のタイミング(翌月か当月か)の設定が実態と合っているかを確認し、40歳になる月の納入告知書で介護保険料の欄を確認する予定をカレンダーに入れることです。
社会保険料の納付方法と期限は、あわせて読みたい記事で確認してください。
