ひとり会社でも、フリーランスのデザイナーに仕事を頼んだり、税理士に相談料を払ったりすると、翌年1月に「支払調書」の提出が必要になることがあります。
対象になる支払いと金額の基準を知らないと、出し忘れたり、逆に不要なものまで作ったりします。
この記事では、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の書き方を、対象になる支払いと金額の基準、記入項目、マイナンバーの扱い、提出先と期限、法定調書合計表との関係、相手への交付、源泉徴収漏れの扱いの順に説明します。
根拠は、所得税法(204条の報酬の源泉徴収、225条の支払調書の提出義務)、所得税法施行規則(支払調書の提出範囲)、国税庁(法定調書の手引き、支払調書の記載要領)、番号法(マイナンバーの記載と本人確認)で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社で外注先への支払調書を作成し、法定調書合計表と一緒にe-Taxで提出しています。
- 支払調書の対象は、個人に支払った「源泉徴収の対象となる報酬」(原稿料、デザイン料、講演料、翻訳料、税理士や社労士の報酬など)で、同一人への年間の支払金額が5万円を超えるもの。法人への支払いと、源泉徴収の対象外の業務委託(システム開発やコンサルの多く)は対象外
- 記入するのは、支払を受ける者の住所・氏名・マイナンバー、区分(原稿料など)、細目(内容)、支払金額(税込が原則)、源泉徴収税額、支払者の情報。相手のマイナンバーは本人確認をして収集し、税務署提出用にだけ書く(相手に渡す写しには書かない)
- 提出先は税務署で、期限は支払った年の翌年1月31日。法定調書合計表に添えて、e-Taxで出せる。相手に交付する義務はないが、求められたらマイナンバーを除いた写しを渡してよい。源泉徴収を忘れていた報酬も、支払調書には支払金額を書き、源泉徴収税額は実際の額(0円)で出す
対象になる支払いと、提出が必要な金額の基準
- 対象:個人(フリーランス・士業)に支払った、所得税法204条の源泉徴収の対象となる報酬。原稿料、挿絵・デザイン料、講演料、翻訳料、写真の報酬、税理士・社労士・司法書士・弁護士の報酬、外交員やモデルの報酬、プロスポーツ選手の報酬など
- 対象外:法人への支払い(会社に頼んだデザインや税理士法人の報酬)、給与(役員報酬・従業員給与は源泉徴収票)、204条の報酬に当たらない業務委託(多くのシステム開発、事務代行、コンサルティング、Web制作の「制作」部分など)
- 金額の基準:同一人への1年間(1〜12月)の支払金額の合計が5万円を超えるもの(税込で判定が原則)。外交員・集金人などは50万円超、ホステス等は50万円超。5万円以下なら提出不要
対象:個人(フリーランス・士業)に支払った、所得税法204条の源泉徴収の対象となる報酬。原稿料、挿絵・デザイン料、講演料、翻訳料、写真の報酬、税理士・社労士・司法書士・弁護士の報酬、外交員やモデルの報酬、プロスポーツ選手の報酬など
支払調書の対象は、個人に支払った報酬のうち、源泉徴収の対象として所得税法204条に列挙されているものです。
ひとり会社で出やすいのは、ライターへの原稿料、デザイナーへのデザイン料やイラスト料、講師への講演料、翻訳料、カメラマンへの報酬、税理士・社労士・司法書士への報酬です。
これらは支払時に10.21%(100万円超の部分は20.42%)を源泉徴収し、翌月10日(納期の特例なら年2回)に納めている報酬です。
対象外:法人への支払い(会社に頼んだデザインや税理士法人の報酬)、給与(役員報酬・従業員給与は源泉徴収票)、204条の報酬に当たらない業務委託(多くのシステム開発、事務代行、コンサルティング、Web制作の「制作」部分など)
支払先が法人なら、源泉徴収も支払調書も不要です。
役員報酬や従業員の給与は、源泉徴収票と給与支払報告書で処理します。
個人への支払いでも、システム開発、プログラミング、事務代行、一般的なコンサルティング、Webサイト制作のコーディングなど、204条の列挙に当たらない業務委託は、源泉徴収も支払調書も不要です(ただしWeb制作のうちデザインやイラスト、原稿の部分は対象になりうるので、内容で分けます)。
金額の基準:同一人への1年間(1〜12月)の支払金額の合計が5万円を超えるもの(税込で判定が原則)。外交員・集金人などは50万円超、ホステス等は50万円超。5万円以下なら提出不要
対象の報酬でも、同じ人への年間の支払金額の合計が5万円以下なら、支払調書の提出は不要です(源泉徴収は金額にかかわらず必要です)。
弁護士・税理士などの報酬、原稿料・デザイン料・講演料なども、5万円超が基準です。
外交員、集金人、電力検針人の報酬と、ホステス等の報酬は、50万円超が基準です。
記入項目と書き方
- 支払を受ける者:住所(1月1日現在)、氏名(個人事業の屋号ではなく本名)、個人番号(マイナンバー12桁。税務署提出用のみ)
- 区分・細目・支払金額・源泉徴収税額:区分は「原稿料」「デザイン料」「講演料」「税理士報酬」など、細目は内容(「○○記事の執筆」「ロゴデザイン」)、支払金額は年間の合計(税込が原則)、源泉徴収税額は年間の徴収額の合計
- 支払者:法人名、所在地、電話番号、法人番号。摘要:税抜で書いた場合の消費税額、未払いがある場合の未払金額と未徴収税額、災害減免の猶予など
支払を受ける者:住所(1月1日現在)、氏名(個人事業の屋号ではなく本名)、個人番号(マイナンバー12桁。税務署提出用のみ)
支払を受ける者の欄には、支払った年の翌年1月1日現在の住所と、本名を書きます。
屋号で取引していても、氏名は本人の名前です。
個人番号(マイナンバー)は、税務署に出す支払調書には記載が義務で、相手に本人確認(番号確認と身元確認)をして収集します。
区分・細目・支払金額・源泉徴収税額:区分は「原稿料」「デザイン料」「講演料」「税理士報酬」など、細目は内容(「○○記事の執筆」「ロゴデザイン」)、支払金額は年間の合計(税込が原則)、源泉徴収税額は年間の徴収額の合計
区分には報酬の種類、細目には具体的な内容を書きます。
支払金額は、その年に支払った(または支払が確定した)金額の合計で、消費税を含めた税込の金額が原則です。請求書で消費税が区分されていれば、税抜で書いて摘要に消費税額を記載する方法も認められています。
源泉徴収税額は、その年に徴収した所得税と復興特別所得税の合計です。
支払者:法人名、所在地、電話番号、法人番号。摘要:税抜で書いた場合の消費税額、未払いがある場合の未払金額と未徴収税額、災害減免の猶予など
支払者の欄には、自社の法人名、所在地、電話番号、法人番号(13桁)を書きます。
12月の報酬を翌年1月に払う場合など、年末時点で未払いの金額があれば、支払金額には含めたうえで、未払いの額と、それに対応する未徴収の税額を摘要(または内書き)に書きます。
マイナンバーの収集と本人確認、提出先と期限
- マイナンバーの収集:支払先に、マイナンバーカードの写し(または通知カード+身分証)を提出してもらい、番号確認と身元確認をする。利用目的(支払調書の作成)を伝える。収集した番号は、支払調書の作成以外に使わず、安全に保管し、不要になったら廃棄
- 提出先と期限:支払者の所轄税務署に、支払った年の翌年1月31日まで。源泉徴収票や給与支払報告書と同じ時期
- 提出方法:法定調書合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)に、支払調書の枚数と支払金額の合計を記載して、支払調書を添付。e-Taxで送信でき、前々年の提出枚数が100枚以上なら電子提出が義務
マイナンバーの収集:支払先に、マイナンバーカードの写し(または通知カード+身分証)を提出してもらい、番号確認と身元確認をする。利用目的(支払調書の作成)を伝える。収集した番号は、支払調書の作成以外に使わず、安全に保管し、不要になったら廃棄
支払先の個人からマイナンバーを収集するときは、番号法にもとづく本人確認が必要です。
マイナンバーカードの両面の写しがあれば番号確認と身元確認が同時にでき、通知カードや個人番号が記載された住民票の写しなら、運転免許証などの身元確認書類を合わせて確認します。
「支払調書の作成のため」という利用目的を伝え、収集した番号は鍵のかかる場所やアクセス制限のあるファイルで管理し、提出が終わって保存期間が過ぎたら廃棄します。
相手が提供を拒んだ場合は、提供を求めた経緯を記録して、番号を空欄で提出します(提出自体は必要です)。
提出先と期限:支払者の所轄税務署に、支払った年の翌年1月31日まで。源泉徴収票や給与支払報告書と同じ時期
支払調書は、自社の所轄税務署に、翌年1月31日までに提出します。
役員報酬の源泉徴収票(税務署へ)と給与支払報告書(市町村へ)、償却資産申告書と同じ時期なので、1月の事務としてまとめて行います。
提出方法:法定調書合計表(給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表)に、支払調書の枚数と支払金額の合計を記載して、支払調書を添付。e-Taxで送信でき、前々年の提出枚数が100枚以上なら電子提出が義務
支払調書は単独で出すのではなく、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の欄に、区分ごとの人数、支払金額、源泉徴収税額の合計を書き、該当する支払調書を添付して出します。
5万円以下で支払調書を出さない分も、合計表の支払金額には含めます。
e-Taxで、合計表と支払調書をまとめて送信できます。
相手への交付、源泉徴収漏れ、よくある判断
- 相手への交付:支払調書を支払先に渡す義務はない(源泉徴収票とは違う)。求められたら、マイナンバーを記載しない写しを渡してよい。フリーランスは確定申告で使うことが多いので、年明けに送ると喜ばれる
- 源泉徴収していなかった報酬:本来は源泉徴収が必要だった報酬を徴収せずに払っていた場合、支払調書には支払金額を書き、源泉徴収税額は0円で出す。徴収漏れの税額は、会社が納付(不納付加算税の対象)し、相手に請求するか負担するかを決める
- 判断に迷う例:Web制作の請求が「デザイン+コーディング」なら、デザイン部分は対象、コーディングは対象外(区分されていなければ全体を対象として扱うのが安全)。動画編集は対象外が一般的、動画の台本執筆は原稿料で対象
相手への交付:支払調書を支払先に渡す義務はない(源泉徴収票とは違う)。求められたら、マイナンバーを記載しない写しを渡してよい。フリーランスは確定申告で使うことが多いので、年明けに送ると喜ばれる
源泉徴収票は本人への交付義務がありますが、支払調書は税務署への提出だけが義務で、支払先に渡す義務はありません。
ただし、フリーランスは確定申告で支払調書を参考にすることが多いので、求められたら渡します。
渡す写しには、マイナンバーを記載しません(番号法で、本人への交付書類に番号は不要とされ、記載すると漏えいの恐れがあります)。
源泉徴収していなかった報酬:本来は源泉徴収が必要だった報酬を徴収せずに払っていた場合、支払調書には支払金額を書き、源泉徴収税額は0円で出す。徴収漏れの税額は、会社が納付(不納付加算税の対象)し、相手に請求するか負担するかを決める
デザイン料を源泉徴収せずに全額払っていた、という漏れは、ひとり会社でよくあります。
支払調書には、実際の支払金額と、実際の源泉徴収税額(0円)を書いて出します。
源泉徴収の義務は会社にあるので、徴収漏れの税額は会社が納付し、不納付加算税と延滞税がかかることがあります。納付した税額を相手に請求する(相手は確定申告で控除できる)か、会社が負担する(その場合は相手への追加の報酬として扱う)かを決めます。
判断に迷う例:Web制作の請求が「デザイン+コーディング」なら、デザイン部分は対象、コーディングは対象外(区分されていなければ全体を対象として扱うのが安全)。動画編集は対象外が一般的、動画の台本執筆は原稿料で対象
対象かどうかの判断は、所得税法204条の列挙と、国税庁の「源泉徴収のあらまし」の報酬の範囲で確認します。
デザインは対象、コーディングやプログラミングは対象外、記事の執筆は原稿料で対象、動画の編集作業は対象外(台本やナレーションの原稿は対象)、写真の撮影は対象、といった区分です。
1つの請求書に対象と対象外が混ざっていて区分されていない場合は、全体を対象として源泉徴収するのが安全な扱いです。
支払調書の対象と基準の一覧
| 支払いの内容 | 支払先 | 源泉徴収 | 支払調書 | 提出の基準 |
|---|---|---|---|---|
| 原稿料、デザイン料、イラスト料、講演料、翻訳料、写真の報酬 | 個人 | 10.21% | 必要 | 年5万円超 |
| 税理士、社労士、司法書士、弁護士の報酬 | 個人 | 10.21% | 必要 | 年5万円超 |
| 同上 | 法人(税理士法人など) | 不要 | 不要 | — |
| デザイン会社、制作会社への支払い | 法人 | 不要 | 不要 | — |
| システム開発、コーディング、事務代行、コンサルティング | 個人 | 不要(204条外) | 不要 | — |
| 外交員、集金人の報酬 | 個人 | あり | 必要 | 年50万円超 |
| 役員報酬、従業員給与 | 個人 | 給与の源泉徴収 | 不要(源泉徴収票・給与支払報告書) | — |
| 家賃(不動産の使用料) | 個人 | 不要(法人が払う場合) | 不動産の使用料等の支払調書 | 年15万円超 |
ユイフリーランスのデザイナーに年間30万円払いました。何か出す書類がありますか?
ケイデザイン料は源泉徴収の対象だから、支払調書を翌年1月31日までに税務署に出す。年5万円超が基準。法定調書合計表に添えて、e-Taxで出せる。相手にマイナンバーを聞いて、本人確認をしておこう。
ユイ源泉徴収するのを忘れて、全額払ってしまいました。
ケイ支払調書には実際の支払金額と源泉徴収税額0円で出す。徴収漏れの税額は会社が納めて、相手に請求するか会社で負担するかを決める。次からは、個人への報酬の請求書を受け取ったら、まず204条の対象かを確認する習慣に。
よくある質問
支払調書はどんな支払いに必要ですか?
個人に支払った、源泉徴収の対象となる報酬(原稿料、デザイン料、講演料、税理士報酬など)で、同一人への年間の支払金額が5万円を超えるものです。
法人に払った報酬にも必要ですか?
不要です。
法人への支払いは源泉徴収の対象外で、支払調書もありません。
支払金額は税込ですか、税抜ですか?
税込が原則です。
請求書で消費税が区分されていれば、税抜で書いて摘要に消費税額を記載する方法もあります。
マイナンバーはどう集めますか?
支払先にマイナンバーカードの写しなどを提出してもらい、番号確認と身元確認をします。
利用目的を伝え、安全に保管して、不要になったら廃棄します。
提出先と期限は?
自社の所轄税務署に、翌年1月31日までに、法定調書合計表に添えて提出します。
e-Taxで送信できます。
支払先にも渡す必要がありますか?
義務はありません。
求められたら、マイナンバーを記載しない写しを渡してよいです。
まとめ:次の一手
支払調書は、個人に払った源泉徴収対象の報酬(原稿料、デザイン料、講演料、士業の報酬など)で年5万円を超えるものについて、支払先の住所・氏名・マイナンバー、区分、支払金額(税込)、源泉徴収税額を記入し、翌年1月31日までに法定調書合計表に添えて税務署に出します。
法人への支払いと204条の対象外の業務委託は不要で、相手への交付義務はなく、源泉徴収漏れがあっても実際の金額で提出します。
次の一手は、今年の外注先への支払いを個人・法人で分け、個人分のうち源泉徴収の対象の報酬を抽出して、年間の支払金額が5万円を超える相手にマイナンバーの提供を依頼することです。
法定調書合計表の書き方は、あわせて読みたい記事で確認してください。
