法人を設立すると、「どこに、何を、いつまでに出すのか」を一覧で把握しないと、必ず何かが漏れます。
税務署だけでも4〜5枚、ほかに都道府県、市町村、年金事務所があり、従業員を雇えばさらに2か所が加わります。
この記事では、法人設立後の届出を、提出先ごとに期限と添付書類つきで一覧にし、ひとり会社(役員のみ)に必要なものと、従業員を雇う場合だけ必要なものを区別します。
根拠は国税庁、東京都主税局、日本年金機構、厚生労働省の案内で、2026年10月15日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の代表として、設立後の届出をすべて自分で行いました。
- 法人設立後の届出先は、税務署、都道府県税事務所、市町村、年金事務所の4か所が基本。従業員を雇うなら労働基準監督署とハローワークが加わる
- ひとり会社(役員のみ)に必要なのは、税務署4枚(設立届・給与支払事務所・納期の特例・青色申告)、都道府県と市町村の設立届、年金事務所の新規適用届と資格取得届の計8枚
- 期限が短い順に、年金事務所(報酬開始から5日)、東京都の設立届(15日)、給与支払事務所(1か月)、設立届(2か月)、青色申告(3か月)。消費税の届出は該当者のみ
税務署への届出(法人税・源泉所得税・消費税)
- 必須:法人設立届出書・青色申告の承認申請書
- 給与を払うなら:給与支払事務所等の開設届出書・納期の特例の申請書
- 該当者のみ:消費税の届出
必須:法人設立届出書・青色申告の承認申請書
法人設立届出書は、設立登記の日から2か月以内に、定款の写しを添えて出します。
青色申告の承認申請書は、設立の日から3か月を経過した日と第1期の末日の早いほうの前日までに出します。添付書類はありません。
この2枚は、すべての法人に必要です。
給与を払うなら:給与支払事務所等の開設届出書・納期の特例の申請書
役員報酬や給与を払う会社は、給与支払事務所等の開設届出書を、事務所を設けた日から1か月以内に出します。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、給与の支給人員が常時10人未満なら出せ、納付が年2回になります。期限はありません。
役員報酬ゼロで誰にも給与を払わない間は、この2枚は不要です。
該当者のみ:消費税の届出
資本金1,000万円以上で設立した会社は、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を出します(法人設立届出書に設立年月日を書けば省略できます)。
設立1期目からあえて課税事業者になる場合は、「消費税課税事業者選択届出書」を第1期の末日までに出します。
インボイスの登録をする場合は、「適格請求書発行事業者の登録申請書」をインボイス登録センターに出します。
簡易課税を選ぶ場合は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用する課税期間の開始の前日(設立1期目は末日)までに出します。
都道府県・市町村への届出(地方税)
- 都道府県税事務所:法人設立届
- 市町村:法人設立届
- eLTAXで一度に送信できる
都道府県税事務所:法人設立届
法人事業税と法人都道府県民税のための届出で、様式の名称(法人設立届出書、法人設立・設置届出書など)と期限は都道府県ごとです。
東京都は事業を開始した日から15日以内で、添付は定款の写し(令和8年4月以後、登記事項証明書は不要)。
ほかの道府県は1か月から2か月以内が多く、定款の写しと登記事項証明書の写しを求めるところもあります。
市町村:法人設立届
法人市町村民税のための届出で、本店所在地の市町村に出します。
東京23区は、都税事務所が市町村分も扱うので、都への届出で済みます。
様式と期限は市町村ごとですが、都道府県と同じ添付書類で済むことがほとんどです。
eLTAXで一度に送信できる
eLTAX(地方税の電子申告システム)を使うと、都道府県と市町村の法人設立届を一度に作成して送信できます。
eLTAXの利用届出と電子証明書が必要ですが、その後の法人住民税・事業税の申告や、給与支払報告書の提出にも使えるので、設立時に用意しておくと手間が減ります。
年金事務所への届出(社会保険)
- 新規適用届(報酬の支払開始から5日以内)
- 被保険者資格取得届
- 被扶養者(異動)届・保険料口座振替納付申出書
新規適用届(報酬の支払開始から5日以内)
役員報酬を払い始めると、法人は健康保険・厚生年金の適用事業所になります。
「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を、適用を受けることになった事実が生じた日から5日以内に、年金事務所または事務センターに出します。
添付は、90日以内に交付された登記簿謄本の原本と、法人番号指定通知書のコピー(法人番号で届け出る場合)です。
被保険者資格取得届
加入する人(役員本人)ごとに「被保険者資格取得届」を出します。
氏名、生年月日、個人番号または基礎年金番号、資格取得日、報酬月額を書きます。
新規適用届と同時に出します。
被扶養者(異動)届・保険料口座振替納付申出書
配偶者や子を扶養に入れる場合は、「健康保険 被扶養者(異動)届」を出します。
保険料を口座振替にする場合は、「保険料口座振替納付申出書」を出します。任意ですが、納め忘れを防ぐために出しておくのが安全です。
これらの届出は、日本年金機構の届書作成プログラムとe-Govで電子申請もできます。
従業員を雇う場合:労働基準監督署・ハローワーク
- 労働基準監督署:労働保険関係成立届・概算保険料申告書
- ハローワーク:雇用保険適用事業所設置届・被保険者資格取得届
- 役員だけの会社では不要
労働基準監督署:労働保険関係成立届・概算保険料申告書
従業員を1人でも雇うと、労災保険の加入が義務になります。
「労働保険関係成立届」を、雇った日の翌日から10日以内に労働基準監督署に出し、「労働保険概算保険料申告書」を50日以内に出して保険料を納めます。
ハローワーク:雇用保険適用事業所設置届・被保険者資格取得届
雇用保険の対象になる従業員(週20時間以上・31日以上の雇用見込み)を雇うと、「雇用保険適用事業所設置届」を設置の日の翌日から10日以内、「雇用保険被保険者資格取得届」を雇った月の翌月10日までに、ハローワークに出します。
労働保険関係成立届の控えが必要なので、労働基準監督署の手続きを先に行います。
役員だけの会社では不要
役員は労災保険と雇用保険の対象外なので、役員だけの会社では、労働基準監督署とハローワークへの届出は不要です。
従業員を雇った時点で、上の手続きが発生します。
法人設立後の届出一覧(提出先・期限・添付書類)
| 提出先 | 書類 | 期限 | 添付書類 | ひとり会社 |
|---|---|---|---|---|
| 税務署 | 法人設立届出書 | 設立から2か月以内 | 定款の写し | 必要 |
| 税務署 | 青色申告の承認申請書 | 設立から3か月以内(第1期末日の前日まで) | なし | 必要 |
| 税務署 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 事務所を設けた日から1か月以内 | なし | 報酬を払うなら必要 |
| 税務署 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 期限なし | なし | 報酬を払うなら推奨 |
| 税務署(インボイス登録センター) | 適格請求書発行事業者の登録申請書 | 登録したい日の前(余裕を持って) | なし | 該当者のみ |
| 税務署 | 消費税課税事業者選択届出書・簡易課税制度選択届出書 | 第1期の末日まで | なし | 該当者のみ |
| 都道府県税事務所 | 法人設立届 | 自治体ごと(東京都は15日以内) | 定款の写し(登記事項証明書は自治体による) | 必要 |
| 市町村 | 法人設立届 | 自治体ごと | 同上 | 必要(東京23区は都で代替) |
| 年金事務所 | 新規適用届 | 報酬開始から5日以内 | 登記簿謄本の原本(90日以内)、法人番号指定通知書のコピー | 報酬を払うなら必要 |
| 年金事務所 | 被保険者資格取得届 | 同上 | なし | 報酬を払うなら必要 |
| 年金事務所 | 被扶養者(異動)届 | 同上 | 続柄・収入の確認書類(場合による) | 扶養家族がいれば |
| 年金事務所 | 保険料口座振替納付申出書 | 任意 | なし | 推奨 |
| 労働基準監督署 | 労働保険関係成立届 | 雇用の翌日から10日以内 | 登記事項証明書など | 従業員を雇う場合 |
| 労働基準監督署 | 労働保険概算保険料申告書 | 雇用から50日以内 | なし | 従業員を雇う場合 |
| ハローワーク | 雇用保険適用事業所設置届 | 設置の翌日から10日以内 | 労働保険関係成立届の控えなど | 従業員を雇う場合 |
| ハローワーク | 雇用保険被保険者資格取得届 | 雇用の翌月10日まで | なし | 従業員を雇う場合 |
ユイ届出が多すぎて、どれが自分に関係あるのか分かりません。
ケイ役員だけの会社なら、税務署4枚、都道府県と市町村の設立届、年金事務所の2枚の計8枚。労働基準監督署とハローワークは、従業員を雇うまで関係ない。
ユイ順番はどうすればいいですか?
ケイ期限が短い順。年金事務所(5日)、東京都なら設立届(15日)、給与支払事務所(1か月)、法人設立届出書(2か月)、青色申告(3か月)。税務署の分は同じ日にまとめて出す。
よくある質問
法人設立後、最低限必要な届出は何ですか?
役員だけの会社で報酬を払うなら、税務署に4枚(法人設立届出書・青色申告の承認申請書・給与支払事務所等の開設届出書・納期の特例の申請書)、都道府県と市町村に法人設立届、年金事務所に新規適用届と被保険者資格取得届の計8枚です。
期限がいちばん短いのはどれですか?
年金事務所の新規適用届と被保険者資格取得届で、報酬の支払開始から5日以内です。
次に東京都の法人設立届(15日以内)です。
役員報酬を払わない場合は?
給与支払事務所等の開設届出書、納期の特例の申請書、年金事務所への届出は不要です。
法人設立届出書、青色申告の承認申請書、都道府県と市町村の設立届は必要です。
従業員を雇ったら、何が増えますか?
労働基準監督署に労働保険関係成立届と概算保険料申告書、ハローワークに雇用保険適用事業所設置届と被保険者資格取得届を出します。
年金事務所には、従業員の被保険者資格取得届を出します。
消費税の届出は必要ですか?
資本金1,000万円未満で、課税事業者を選択せず、インボイス登録もしないなら、設立時の消費税の届出は不要です。
インボイス登録をする場合は、登録申請書を出します。
電子で出せますか?
税務署はe-Tax、都道府県と市町村はeLTAX、年金事務所はe-Gov(届書作成プログラム)で電子申請できます。
まとめ:次の一手
法人設立後の届出先は、税務署、都道府県税事務所、市町村、年金事務所の4か所が基本で、従業員を雇うと労働基準監督署とハローワークが加わります。
役員だけの会社に必要なのは計8枚で、期限は年金事務所(5日)、東京都の設立届(15日)、給与支払事務所(1か月)、設立届(2か月)、青色申告(3か月)の順です。
次の一手は、上の一覧表の「ひとり会社」欄が「必要」の行をコピーして、自分の設立日から期限の日付を書き込むことです。
各書類の書き方は、法人設立届出書の記事と、合同会社の設立後にやることリストの記事で確認してください。
