会社になって最初に自分で作る書類が請求書です。
個人事業のときと違い、法人名と登録番号、消費税の区分、源泉徴収の扱いを、取引先の経理が処理しやすい形で書く必要があります。
この記事では、法人の請求書の書き方を、インボイスの必須項目、消費税の端数処理、源泉徴収がある場合の表記、振込手数料と支払期限、番号の付け方、保存のルールの順に説明します。
根拠は国税庁(適格請求書の記載事項、端数処理、電子帳簿保存法の電子取引、源泉徴収の対象となる報酬)と、下請法や一般的な商慣習で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の請求書を会計ソフトで発行し、取引先の経理からの問い合わせを減らす書き方を実務で試してきました。
- インボイス対応の請求書に必要なのは、発行者の名称と登録番号、取引年月日、取引内容(軽減税率の対象なら明記)、税率ごとに区分した合計額と適用税率、税率ごとの消費税額、宛名の6区分。これに請求書番号と支払期限・振込先を加えた8項目が実務の標準
- 消費税の端数処理は、1つの請求書につき税率ごとに1回だけ。明細ごとに税額を計算して足すのは認められない。切り捨て・切り上げ・四捨五入は任意だが、毎回同じ方法にする
- 発行した請求書は、電子で送ったものは電子のまま(電子帳簿保存法の電子取引)、紙で送ったものは控えを紙か電子で、7年間保存する。会計ソフトの請求書機能を使えば、番号の連番、消費税の計算、保存が自動で済む
インボイス対応の必須項目と、実務で加える項目
- 必須1〜3:発行者の名称と登録番号(T+13桁)、取引年月日、取引内容(軽減税率の対象品目は明記)
- 必須4〜6:税率ごとに区分した合計額(税抜か税込)と適用税率、税率ごとの消費税額、宛名(取引先の名称)
- 実務で加える:請求書番号、発行日、支払期限、振込先、振込手数料の負担、問い合わせ先
必須1〜3:発行者の名称と登録番号(T+13桁)、取引年月日、取引内容(軽減税率の対象品目は明記)
発行者の欄には、登記した法人名、住所、電話番号と、インボイスの登録番号(Tで始まる13桁)を書きます。
取引年月日は、納品日や役務の提供日で、月まとめの請求なら「○月分」と期間を書きます。
取引内容は、「Webサイト制作一式」「○月分コンサルティング料」のように、何の対価かが分かる書き方にします。
必須4〜6:税率ごとに区分した合計額(税抜か税込)と適用税率、税率ごとの消費税額、宛名(取引先の名称)
10%と8%(軽減税率)の両方がある場合は、税率ごとに小計と消費税額を分けて書きます。
ひとり会社のサービス業はほぼ10%のみなので、「小計(10%対象)」「消費税(10%)」「合計」の3行で足ります。
宛名は、取引先の正式な法人名(「御中」)、担当者名を入れるなら部署と氏名(「様」)です。
実務で加える:請求書番号、発行日、支払期限、振込先、振込手数料の負担、問い合わせ先
請求書番号は、インボイスの要件ではありませんが、取引先の経理が照合に使い、自社の管理にも必要です。
支払期限と振込先(銀行名・支店名・口座種別・番号・名義カナ)は、入金を確実にするために必ず書きます。
消費税の端数処理と、源泉徴収がある場合の表記
- 端数処理:1つの請求書で税率ごとに1回。明細ごとに税額を出して合計するのは不可。切り捨て・四捨五入は任意だが統一
- 源泉徴収の対象(原稿料・デザイン料・講演料など):税抜の報酬額から10.21%を引く表記が基本。「源泉所得税」の行を設けて差引請求額を書く
- 法人が受け取る報酬は原則として源泉徴収されない。ただし一部(馬主など)は法人でも対象
端数処理:1つの請求書で税率ごとに1回。明細ごとに税額を出して合計するのは不可。切り捨て・四捨五入は任意だが統一
インボイスでは、消費税額の端数処理は、1枚の請求書につき税率ごとに1回と決められています。
明細の1行ごとに消費税を計算して足し上げる方法は認められません。
切り捨て、切り上げ、四捨五入のどれでもよいですが、請求書ごとに変えずに統一します。
源泉徴収の対象(原稿料・デザイン料・講演料など):税抜の報酬額から10.21%を引く表記が基本。「源泉所得税」の行を設けて差引請求額を書く
個人に支払う原稿料やデザイン料は源泉徴収の対象ですが、法人に支払う報酬は原則として源泉徴収の対象外です。
したがって、法人成りした後は、請求書に源泉所得税の行は基本的に不要です。取引先が個人事業時代と同じ処理を続けていたら、「法人のため源泉徴収は不要です」と伝えます。
法人が受け取る報酬は原則として源泉徴収されない。ただし一部(馬主など)は法人でも対象
法人が受け取る報酬で源泉徴収の対象になるのは、馬主が受ける競馬の賞金など、ごく一部です。
ひとり会社の一般的な業務(制作、コンサルティング、販売)では該当しないので、請求書は税込の合計額をそのまま請求します。
振込手数料・支払期限・締め日・番号の付け方
- 振込手数料:「振込手数料は貴社にてご負担ください」と書く。差し引かれた場合の処理(売上値引か支払手数料)
- 支払期限:「月末締め翌月末払い」など契約で決め、請求書に日付で明記。下請法の対象なら受領から60日以内
- 番号:「2026-10-001」のように年月+連番。会計ソフトなら自動採番。欠番を作らない
振込手数料:「振込手数料は貴社にてご負担ください」と書く。差し引かれた場合の処理(売上値引か支払手数料)
振込手数料の負担は、民法では支払う側(取引先)の負担が原則ですが、商慣習で受け取る側が負担することもあります。
請求書に「振込手数料は貴社にてご負担願います」と書いておき、差し引かれて入金された場合は、その分を「売上値引」または「支払手数料」で処理します。
インボイスでは、差し引かれた手数料分を売上値引として処理する場合、返還インボイスの交付が1万円未満なら不要です。
支払期限:「月末締め翌月末払い」など契約で決め、請求書に日付で明記。下請法の対象なら受領から60日以内
締め日と支払期限は、契約書や基本契約で決めておき、請求書には「お支払期限:2026年11月30日」と具体的な日付で書きます。
取引先が下請法の対象(資本金の要件を満たす親事業者)なら、支払期限は納品の受領から60日以内と定められています。
番号:「2026-10-001」のように年月+連番。会計ソフトなら自動採番。欠番を作らない
請求書番号は、発行年月と連番を組み合わせると、いつの請求かが分かり、重複も防げます。
会計ソフトの請求書機能なら自動で採番されます。
取り消した請求書も番号を残し(欠番にせず「取消」と記録)、通し番号の管理を保ちます。
電子と紙の発行、保存のルール、未登録の場合
- 電子(PDFをメール・請求書サービス)で送った:電子取引として、改ざん防止の要件を満たして電子のまま保存
- 紙で郵送した:控えを紙か、スキャンして電子で保存。インボイスの写しの保存義務は7年
- インボイス未登録:登録番号を書かずに「区分記載請求書」として発行。消費税額を書いてもよいが、相手は仕入税額控除に制限
電子(PDFをメール・請求書サービス)で送った:電子取引として、改ざん防止の要件を満たして電子のまま保存
PDFの請求書をメールで送ったり、請求書サービスで送信したりした場合は、電子帳簿保存法の「電子取引」にあたり、送った請求書のデータを電子のまま保存します。
タイムスタンプか、訂正削除の履歴が残るシステム、または事務処理規程を備えて、日付・金額・取引先で検索できるようにします。
会計ソフトの請求書機能で発行すれば、この要件は自動で満たされます。
紙で郵送した:控えを紙か、スキャンして電子で保存。インボイスの写しの保存義務は7年
紙で郵送した請求書は、控え(写し)を紙で保存するか、スキャナ保存の要件で電子化します。
インボイスの発行者は、交付した適格請求書の写しを7年間(交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から)保存する義務があります。
インボイス未登録:登録番号を書かずに「区分記載請求書」として発行。消費税額を書いてもよいが、相手は仕入税額控除に制限
免税事業者でインボイスに登録していない場合は、登録番号を書かずに発行します。
消費税額を書くこと自体は禁止されていませんが、取引先は仕入税額控除に経過措置の制限(2026年9月までは80%、2029年9月までは50%)があるため、取引先と価格の扱いを事前に話し合います。
請求書の記載項目チェックリスト
| 項目 | 内容 | インボイスの要件 |
|---|---|---|
| 発行者の名称・住所・登録番号 | 登記の法人名、T+13桁 | 必須 |
| 取引年月日 | 納品日、役務提供日、または「○月分」 | 必須 |
| 取引内容 | 何の対価か。軽減税率の対象は明記 | 必須 |
| 税率ごとの合計額と適用税率 | 小計(10%対象)など | 必須 |
| 税率ごとの消費税額 | 端数処理は税率ごとに1回 | 必須 |
| 宛名 | 取引先の正式名称、御中 | 必須 |
| 請求書番号 | 年月+連番 | 任意(実務で必要) |
| 発行日・支払期限 | 具体的な日付 | 任意(実務で必要) |
| 振込先・振込手数料の負担 | 銀行・支店・種別・番号・名義カナ、負担の明記 | 任意(実務で必要) |
| 源泉所得税 | 法人は原則不要 | — |
ユイ法人になって初めて請求書を出します。個人のときと何が違いますか?
ケイ発行者が法人名と登録番号になること、源泉所得税の行が原則なくなること、消費税の端数処理を税率ごとに1回にすること。それと、発行した請求書の控えを7年保存する義務がある。
ユイ消費税は、明細ごとに計算して合計してはいけないんですか?
ケイインボイスでは、1枚の請求書につき税率ごとに1回だけ端数処理する決まり。明細ごとに出して足すと、合計がずれて要件を満たさない。会計ソフトの請求書機能なら自動で正しく計算される。
よくある質問
法人の請求書に必ず書く項目は何ですか?
発行者の名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの合計額と適用税率、税率ごとの消費税額、宛名の6区分がインボイスの要件で、請求書番号、支払期限、振込先を加えるのが実務の標準です。
消費税の端数処理はどうしますか?
1枚の請求書につき税率ごとに1回だけで、切り捨て・切り上げ・四捨五入は任意ですが毎回統一します。
法人でも源泉所得税を引いて請求しますか?
原則として引きません。
法人が受け取る報酬は、一部の例外を除き源泉徴収の対象外です。
振込手数料は、どちらが負担しますか?
民法上は支払う側の負担が原則で、請求書に「貴社にてご負担ください」と書いておきます。
差し引かれた場合は売上値引か支払手数料で処理します。
発行した請求書は保存が必要ですか?
必要です。
インボイスの写しは7年間保存し、電子で送ったものは電子のまま、紙で送ったものは控えを保存します。
インボイスに登録していない場合は、どう書きますか?
登録番号を書かずに発行します。
取引先の仕入税額控除に制限があるので、価格の扱いを事前に話し合います。
まとめ:次の一手
法人の請求書は、インボイスの6区分(名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの合計額、税率ごとの消費税額、宛名)に、番号・支払期限・振込先を加えた8項目で作り、消費税の端数処理は税率ごとに1回、源泉所得税は法人なら原則不要です。
電子で送ったものは電子のまま、紙は控えを7年保存し、会計ソフトの請求書機能を使えば採番・計算・保存が自動で済みます。
次の一手は、自社の請求書のひな形を上のチェックリストで点検し、登録番号と振込先の名義カナ、支払期限の日付表記を直すことです。
電子取引の保存のための事務処理規程は、あわせて読みたい記事で確認してください。
