法人成りをしたら、取引先に「個人事業から会社になりました」と知らせる挨拶状を送ります。
形式的な儀礼に見えますが、実務上は、請求書の名義、契約の相手方、振込先が変わることを正確に伝える重要な連絡です。
この記事では、法人成りの挨拶状のテンプレートを、はがき・封書用とメール用の文例で示し、伝えるべき5項目、送る時期と相手、振込先変更の案内の書き方、遅れた場合の文例、実務のコツをまとめます。
根拠は、法人成りの実務(登記・口座・インボイス)の流れと、一般的なビジネス文書の慣例で、2026年10月16日時点の内容で書いています。
筆者は法人を設立したときに、取引先への案内を自分で作って送りました。
- 挨拶状で必ず伝えるのは5項目。法人成りの日付、新しい商号(と旧屋号)、所在地・電話・メール、代表者名、振込先の変更。請求書の名義と契約の切り替えも一言添える
- 送る時期は、設立の1〜2週間前から設立後1か月以内。取引の多い相手には事前にメールか電話で一報し、正式な挨拶状はあとから送ってもよい
- 文例は、はがき・封書用(縦書きの定型文)と、メール用(件名と本文)の2種類を用意し、振込先変更は別紙や別メールで明確に伝える
挨拶状で必ず伝える5項目と、添える2項目
- 必ず伝える5項目:日付・商号・所在地と連絡先・代表者・振込先
- 添える2項目:請求書の名義の切り替え、契約の相手方の変更
- インボイスの登録番号(登録する場合)
必ず伝える5項目:日付・商号・所在地と連絡先・代表者・振込先
1 法人成りの日付(会社の設立日、または法人として取引を始める日)。
2 新しい商号(「合同会社○○」)と、旧屋号(「屋号○○は、合同会社○○になりました」)。
3 所在地、電話番号、メールアドレス(変わらない場合も「変更ありません」と書く)。
4 代表者名(「代表社員 ○○」)。
5 振込先の変更(法人口座の銀行名・支店名・種別・口座番号・名義)。
添える2項目:請求書の名義の切り替え、契約の相手方の変更
「○月○日以降の請求書は、合同会社○○の名義で発行します」と、請求書の切り替え時期を伝えます。
継続している契約については、「契約の相手方を法人に変更するため、改めて契約書(または覚書)を交わしたい」旨を添えます。
インボイスの登録番号(登録する場合)
法人としてインボイス(適格請求書発行事業者)に登録する場合は、登録番号(T+13桁)と、登録日を案内します。
登録通知がまだ届いていない場合は、「登録申請中で、通知が届きしだい改めて案内します」とします。
文例1:はがき・封書用(定型の挨拶状)
- 本文の文例
- 記載事項(記書き)の文例
- 振込先変更の別紙の文例
本文の文例
以下は、はがきや封書で送る場合の定型の文例です。縦書き・横書きどちらでも使えます。
謹啓 ○○の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、このたび私ども「○○(屋号)」は、事業の発展にともない、
令和○年○月○日をもちまして法人組織に改め、
「合同会社○○」として新たに発足する運びとなりました。
これもひとえに皆様のご支援の賜物と、心より感謝申し上げます。
今後は法人としてより一層業務に励み、皆様のご期待に添えるよう
努めてまいりますので、変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます。
謹白
令和○年○月
記載事項(記書き)の文例
本文のあとに、「記」として新しい会社の情報をまとめます。
記
商号 合同会社○○(旧 ○○)
設立日 令和○年○月○日
所在地 〒000-0000 ○○県○○市○○一丁目2番3号
電話 00-0000-0000(変更ありません)
メール info@example.com
代表者 代表社員 ○○ ○○
事業内容 ○○の企画・制作
※ 令和○年○月○日以降の請求書は、合同会社○○の名義で発行いたします。
※ お振込先が変更となります。別紙をご確認ください。
以上
振込先変更の別紙の文例
振込先は、間違いを防ぐため、別紙(メールなら別メール)で、銀行名・支店名・口座種別・口座番号・口座名義(カナ)を明記します。
【お振込先変更のご案内】
令和○年○月○日以降のお支払いは、下記の口座にお願いいたします。
銀行名 ○○銀行 ○○支店(支店コード000)
口座種別 普通
口座番号 0000000
口座名義 ゴウドウガイシャ○○
※ 旧口座(個人名義)へのお振込は、令和○年○月○日をもって受付を終了いたします。
文例2:メール用(件名と本文)
- 件名の例
- 本文の文例
- 振込先と請求書の切り替えの書き方
件名の例
「【ご案内】法人化のお知らせ(○○ → 合同会社○○)」
「法人成りと請求書名義・振込先変更のご案内|○○」
件名で「法人化」「振込先変更」が分かるようにしておくと、経理担当者が見落としません。
本文の文例
○○株式会社
○○部 ○○様
いつもお世話になっております。○○(屋号)の○○です。
このたび、令和○年○月○日付で事業を法人化し、
「合同会社○○」として業務を行うこととなりました。
今後の取引に関わる変更点をご案内いたします。
1 商号:合同会社○○(旧 ○○)
2 設立日:令和○年○月○日
3 所在地・電話:変更ありません
4 代表者:代表社員 ○○ ○○
5 請求書:○月○日以降の請求書は、合同会社○○の名義で発行いたします
6 お振込先:法人口座に変更となります(下記)
7 インボイス登録番号:T0000000000000(令和○年○月○日登録)
【お振込先】
○○銀行 ○○支店 普通 0000000 ゴウドウガイシャ○○
現在のご契約については、契約の相手方を法人に変更するため、
改めて契約書(または覚書)を取り交わしたく、別途ご連絡いたします。
引き続きよろしくお願いいたします。
合同会社○○
代表社員 ○○ ○○
〒000-0000 ○○県○○市○○
電話 00-0000-0000 / メール info@example.com
振込先と請求書の切り替えの書き方
振込先は、本文の中でも目立つ位置に書き、メールの署名にも新しい口座を入れておきます。
「○月○日以降の請求分から新口座」と、切り替えの基準日を明確にします。基準日は、請求書の発行日か、取引日(納品日)かを決めて書きます。
旧口座をいつまで使えるかも書いておくと、取引先の経理の切り替えがスムーズです。
送る時期・相手・遅れた場合と、実務のコツ
- 送る時期:設立の1〜2週間前から設立後1か月以内
- 送る相手:取引先、仕入先、銀行、契約先(事務所・保険・サービス)
- 遅れた場合の文例と、印刷・宛名の実務
送る時期:設立の1〜2週間前から設立後1か月以内
正式な挨拶状は、設立日の前後1か月以内が目安です。
取引の多い相手や、月末に請求が発生する相手には、設立前にメールや電話で一報し、「正式なご案内は改めてお送りします」としておくと、請求や振込の混乱を防げます。
法人口座の開設に時間がかかる場合は、口座が決まってから挨拶状を出し、それまでは旧口座を使う旨を先に伝えます。
送る相手:取引先、仕入先、銀行、契約先(事務所・保険・サービス)
販売先と仕入先のほか、取引銀行、事務所の貸主、保険会社、クラウドサービスやサブスクリプションの契約先、税理士や社労士など、名義が関わる相手すべてが対象です。
契約先には、挨拶状と別に、名義変更の手続き(申込書・契約者変更)が必要になります。
遅れた場合の文例と、印刷・宛名の実務
設立から数か月たって送る場合は、「ご案内が遅くなり恐縮ですが」と一言添え、法人成りの日付と、すでに法人名義で請求している旨を書きます。
印刷は、はがき・カード型の挨拶状の印刷サービスを使うと、文例のテンプレートに当てはめるだけで作れます。
宛名は、会社名・部署・役職・氏名を正確に書き、担当者が変わっている可能性がある相手には、電話で確認してから送ります。
挨拶状のチェックリスト
| 項目 | 内容 | 確認 |
|---|---|---|
| 法人成りの日付 | 設立日または法人で取引を始める日 | □ |
| 商号 | 合同会社○○(旧 屋号) | □ |
| 所在地・電話・メール | 変更の有無を明記 | □ |
| 代表者 | 代表社員 ○○ | □ |
| 振込先 | 銀行・支店・種別・番号・名義(カナ)。旧口座の終了日 | □ |
| 請求書の切り替え | ○月○日以降は法人名義。基準日は発行日か取引日か | □ |
| 契約の切り替え | 契約書・覚書を改めて交わす旨 | □ |
| インボイス登録番号 | 登録する場合。申請中なら後日案内 | □ |
| 送る時期 | 設立前後1か月以内。重要先は事前に一報 | □ |
| 送る相手 | 販売先・仕入先・銀行・契約先・士業 | □ |
ユイ法人成りの挨拶状って、形式的なものですよね。省略してもいいですか?
ケイ省略はおすすめしない。請求書の名義と振込先が変わることを、経理担当者に正式に伝える連絡だから。文例をそのまま使えば、30分で作れる。
ユイはがきとメール、どちらで送ればいいですか?
ケイ取引の多い相手は、メールで先に一報して、はがきかPDFの挨拶状を後から。振込先は別紙か別メールで、口座名義のカナまで明記しよう。
よくある質問
法人成りの挨拶状には、何を書きますか?
法人成りの日付、新しい商号(と旧屋号)、所在地・連絡先、代表者名、振込先の変更の5項目と、請求書の名義の切り替え、契約の相手方の変更を添えます。
いつ送りますか?
設立の1〜2週間前から設立後1か月以内が目安です。
取引の多い相手には、設立前にメールや電話で一報します。
誰に送りますか?
販売先、仕入先、取引銀行、事務所の貸主、保険会社、サービスの契約先、税理士など、名義が関わる相手すべてです。
振込先の変更は、どう書きますか?
銀行名・支店名・口座種別・口座番号・口座名義(カナ)を別紙や別メールで明記し、旧口座の受付終了日と、新口座に切り替える基準日(請求書の発行日など)を書きます。
インボイスの登録番号も書きますか?
法人として登録する場合は書きます。
通知が届いていなければ、申請中である旨を書き、届きしだい改めて案内します。
送るのが遅れたら、どうしますか?
「ご案内が遅くなり恐縮ですが」と添えて、法人成りの日付と、すでに法人名義で請求している旨を書いて送ります。
まとめ:次の一手
法人成りの挨拶状は、日付・商号・所在地と連絡先・代表者・振込先の5項目に、請求書と契約の切り替えを添えて、設立前後1か月以内に取引先・銀行・契約先へ送ります。
はがき用とメール用の文例をそのまま使い、振込先は別紙や別メールで口座名義のカナまで明記します。
次の一手は、送る相手の一覧を作り、法人口座の開設日に合わせて、挨拶状の発送日と請求書の切り替え基準日を決めることです。
法人口座の開設に必要な書類は、あわせて読みたい記事で確認してください。
