会社の利益にかかる税金は、法人税だけではありません。
国に納める法人税と地方法人税、都道府県と市町村に納める法人住民税、そして都道府県に納める法人事業税と特別法人事業税があり、合わせて「法人税等」と呼びます。
この記事では、そのうち法人事業税の計算方法を、課税の対象、税率、特別法人事業税の上乗せ、赤字の場合、損金になる仕組み、法人住民税との違い、申告先と期限、ひとり会社の試算例の順に説明します。
根拠は、地方税法(法人事業税の標準税率、中小法人の所得割)、特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律、法人税法(事業税の損金算入の時期)、各都道府県の税率表で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の事業税を第六号様式で自分で計算し、申告しています。
- 法人事業税は、法人税の所得をもとに都道府県が課す税。資本金1億円以下の中小法人は所得割だけで、標準税率は所得年400万円以下の部分3.5%、400万円超800万円以下5.3%、800万円超7.0%。赤字なら0円で、均等割のような定額はない
- 法人事業税には、国税の特別法人事業税(事業税の所得割額×37%)が上乗せされ、都道府県にまとめて納める。所得300万円なら事業税10.5万円+特別法人事業税約3.9万円で合計約14.4万円
- 納めた事業税と特別法人事業税は、納付した事業年度の損金になる(法人税や住民税は損金にならない)。申告先は都道府県税事務所で、期限は事業年度終了から2か月以内。第六号様式で住民税と一緒に申告する
法人事業税とは:課税の対象と、中小法人の扱い
- 法人事業税:法人が事業を行うことに対して都道府県が課す税。課税標準は法人税の所得(一部調整あり)
- 中小法人(資本金1億円以下):所得割のみ。資本金1億円超の会社に課される外形標準課税(付加価値割・資本割)は対象外
- 赤字の場合:所得がなければ事業税は0円。法人住民税の均等割のような定額の負担はない
法人事業税:法人が事業を行うことに対して都道府県が課す税。課税標準は法人税の所得(一部調整あり)
法人事業税は、会社が事業を行うことに対して、事務所のある都道府県が課す税です。
計算の元になる「所得」は、法人税の別表四で計算した所得金額とほぼ同じで、一部(繰越欠損金の扱いなど)に調整があります。
複数の都道府県に事務所がある会社は、従業員数などで分けて納めますが、ひとり会社は本店の都道府県に全額を納めます。
中小法人(資本金1億円以下):所得割のみ。資本金1億円超の会社に課される外形標準課税(付加価値割・資本割)は対象外
資本金1億円を超える会社には、所得だけでなく、給与や資本金の額に応じて課税する「外形標準課税」が適用されます。
資本金1億円以下の中小法人は、所得に税率を掛ける「所得割」だけです。
ひとり会社はこちらで、計算は単純です。
赤字の場合:所得がなければ事業税は0円。法人住民税の均等割のような定額の負担はない
事業税は所得に対する税なので、赤字で所得がゼロなら事業税も0円です。
法人住民税の均等割(年7万円前後)のように、赤字でもかかる定額部分はありません。
税率と特別法人事業税の計算
- 標準税率(中小法人の所得割):年400万円以下の部分3.5%、400万円超800万円以下の部分5.3%、800万円超の部分7.0%(所得を3段階に分けて計算)
- 特別法人事業税(国税):法人事業税の所得割額×37%。都道府県に事業税と一緒に申告・納付し、国に送られる
- 自治体による違い:東京都など一部は超過税率(標準より高い)を適用。所得や資本金が小さい会社は軽減税率不適用法人かどうかで税率が変わる
標準税率(中小法人の所得割):年400万円以下の部分3.5%、400万円超800万円以下の部分5.3%、800万円超の部分7.0%(所得を3段階に分けて計算)
中小法人の所得割の標準税率は、所得を3段階に分けた累進構造です。
所得が600万円なら、400万円×3.5%=14万円と、200万円×5.3%=10.6万円で、合計24.6万円です。
事業年度が12か月未満なら、400万円と800万円の区分を月割りします。
特別法人事業税(国税):法人事業税の所得割額×37%。都道府県に事業税と一緒に申告・納付し、国に送られる
特別法人事業税は、法人事業税の一部を国が集めて都道府県に再配分する仕組みで、法人事業税の所得割額に37%を掛けて計算します。
所得600万円の例なら、24.6万円×37%=約9.1万円です。
申告と納付は、都道府県税事務所に法人事業税と一緒に行います。
自治体による違い:東京都など一部は超過税率(標準より高い)を適用。所得や資本金が小さい会社は軽減税率不適用法人かどうかで税率が変わる
東京都をはじめ一部の自治体は、標準税率より高い「超過税率」を適用しています。
ただし、資本金1億円以下で所得が年2,500万円以下などの小さな会社は超過税率の対象外(標準税率)になることが多く、ひとり会社はほぼ標準税率です。
自分の都道府県の税率は、都道府県税事務所のサイトの税率表で確認します。
損金になる仕組みと、法人住民税との違い
- 損金算入:法人事業税と特別法人事業税は、申告(納付)した事業年度の損金になる。法人税・地方法人税・法人住民税は損金にならない
- 別表四での扱い:当期の決算で計上した事業税は納税充当金として加算し、前期分を当期に納付した額を「納税充当金から支出した事業税等の金額」で減算
- 法人住民税との違い:住民税は「均等割(定額、赤字でも)+法人税割(法人税額×税率)」で、都道府県と市町村の両方。事業税は「所得×税率」で都道府県のみ
損金算入:法人事業税と特別法人事業税は、申告(納付)した事業年度の損金になる。法人税・地方法人税・法人住民税は損金にならない
法人税等のうち、事業税と特別法人事業税だけは、損金(税務上の経費)になります。
損金になるのは、申告書を提出した(納付した)事業年度です。
3月決算の会社が2026年3月期の事業税を2026年5月に納めると、それは2027年3月期の損金になります。
別表四での扱い:当期の決算で計上した事業税は納税充当金として加算し、前期分を当期に納付した額を「納税充当金から支出した事業税等の金額」で減算
決算で「法人税、住民税及び事業税/未払法人税等」として事業税を計上した段階では、まだ損金になりません(別表四で納税充当金として加算)。
翌期に納付したときに、別表四の減算欄「納税充当金から支出した事業税等の金額」で損金にします。
申告ソフトは、前期の申告データから納付額を引き継いで自動で減算します。
法人住民税との違い:住民税は「均等割(定額、赤字でも)+法人税割(法人税額×税率)」で、都道府県と市町村の両方。事業税は「所得×税率」で都道府県のみ
法人住民税は、赤字でもかかる均等割と、法人税額に税率を掛ける法人税割の2つからなり、都道府県と市町村の両方に納めます。
法人事業税は、所得に税率を掛ける1つの構造で、都道府県にだけ納めます。
同じ第六号様式で都道府県民税と一緒に申告しますが、計算の元が違います。
申告先と期限、ひとり会社の試算例
- 申告先・期限:本店の都道府県税事務所。事業年度終了の翌日から2か月以内に申告と納付。eLTAXで電子申告、共通納税で納付
- 様式:第六号様式(法人都道府県民税・事業税・特別法人事業税の申告書)。申告ソフトが法人税の所得から自動計算
- 試算:所得300万円→事業税10.5万円+特別法人事業税3.9万円=14.4万円。所得600万円→24.6万円+9.1万円=33.7万円。所得1,000万円→49.2万円+18.2万円=67.4万円(標準税率)
申告先・期限:本店の都道府県税事務所。事業年度終了の翌日から2か月以内に申告と納付。eLTAXで電子申告、共通納税で納付
法人事業税と特別法人事業税は、本店所在地の都道府県税事務所に申告します。
期限は法人税と同じ、事業年度終了の翌日から2か月以内です。
eLTAXで電子申告し、共通納税(ダイレクト納付・インターネットバンキング)で納めます。
様式:第六号様式(法人都道府県民税・事業税・特別法人事業税の申告書)。申告ソフトが法人税の所得から自動計算
申告書は第六号様式で、都道府県民税(均等割・法人税割)と、事業税(所得割)、特別法人事業税を1枚にまとめて計算します。
申告ソフトを使えば、法人税の別表四の所得と別表一の法人税額から自動で計算されます。
試算:所得300万円→事業税10.5万円+特別法人事業税3.9万円=14.4万円。所得600万円→24.6万円+9.1万円=33.7万円。所得1,000万円→49.2万円+18.2万円=67.4万円(標準税率)
標準税率での試算です。
所得300万円:300万円×3.5%=10.5万円、特別法人事業税10.5万円×37%=約3.9万円、合計約14.4万円。
所得600万円:400万円×3.5%+200万円×5.3%=24.6万円、特別法人事業税約9.1万円、合計約33.7万円。
所得1,000万円:400万円×3.5%+400万円×5.3%+200万円×7.0%=49.2万円、特別法人事業税約18.2万円、合計約67.4万円。
法人税等の種類と比較(中小法人)
| 税目 | 納付先 | 計算 | 赤字の場合 | 損金 |
|---|---|---|---|---|
| 法人税 | 国(税務署) | 所得×15%(800万円以下)・23.2%(超過分) | 0円 | 不算入 |
| 地方法人税 | 国(税務署) | 法人税額×10.3% | 0円 | 不算入 |
| 法人住民税(都道府県) | 都道府県 | 均等割2万円+法人税額×1.0% | 均等割2万円 | 不算入 |
| 法人住民税(市町村) | 市町村 | 均等割5万円+法人税額×6.0% | 均等割5万円 | 不算入 |
| 法人事業税 | 都道府県 | 所得×3.5%・5.3%・7.0%(3段階) | 0円 | 算入(納付した期) |
| 特別法人事業税 | 都道府県(国税) | 事業税額×37% | 0円 | 算入(納付した期) |
均等割と法人税割の税率は標準税率で、自治体により異なります。
ユイ法人税のほかに、事業税というのも払うんですか?
ケイそう。所得に対して都道府県が課す税で、所得400万円以下なら3.5%、それに特別法人事業税が37%上乗せされる。所得300万円なら合わせて約14万円。赤字ならゼロで、均等割みたいな定額はない。
ユイ事業税は経費になると聞きました。
ケイ法人税等の中で、事業税と特別法人事業税だけは損金になる。ただし計上した期ではなく、納付した期の損金。申告ソフトが別表四で自動で減算してくれる。
よくある質問
法人事業税は何に対してかかりますか?
法人税の所得(別表四の所得金額とほぼ同じ)に対して、都道府県が課します。
資本金1億円以下の中小法人は所得割のみです。
税率はいくらですか?
標準税率で、所得年400万円以下の部分3.5%、400万円超800万円以下の部分5.3%、800万円超の部分7.0%です。
自治体により超過税率がありますが、小さな会社はほぼ標準税率です。
特別法人事業税とは何ですか?
法人事業税の所得割額に37%を掛けた国税で、都道府県に事業税と一緒に納めます。
赤字でも事業税はかかりますか?
かかりません。
所得がゼロなら0円で、法人住民税の均等割のような定額部分はありません。
事業税は経費になりますか?
なります。
納付した事業年度の損金で、別表四の減算欄で処理します。法人税と住民税は損金になりません。
申告先と期限は?
本店の都道府県税事務所に、事業年度終了の翌日から2か月以内に、第六号様式でeLTAXで申告し、共通納税で納付します。
まとめ:次の一手
法人事業税は、法人税の所得に3段階の税率(3.5%・5.3%・7.0%)を掛け、特別法人事業税(事業税額×37%)を上乗せして都道府県に納める税で、赤字なら0円、納付した期に損金になります。
法人住民税(均等割+法人税割)とは計算の元が違い、同じ第六号様式で事業年度終了から2か月以内にeLTAXで申告します。
次の一手は、今期の所得の見込みから上の試算例で事業税と特別法人事業税の額を出し、法人税・住民税と合わせた納税の見込み額を積立計画に入れることです。
法人住民税の均等割の仕組みは、あわせて読みたい記事で確認してください。
