法人税の申告書を作ると、最後に「法人事業概況説明書」という2ページの書類が残ります。
数字の計算はほぼ終わっているのに、「PCのOS」「販売チャネル」「主要科目」など、申告書とは毛色の違う項目が並び、何をどこまで書けばよいか迷う書類です。
この記事では、国税庁の「法人事業概況説明書の書き方」にそって、役員ひとりの小さな会社が実際に書く欄を、表面と裏面に分けて説明します。
根拠は国税庁の記載要領と「法人事業概況説明書の書き方」で、2026年10月15日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の代表として、法人税の申告と、この概況説明書を毎年自分で作っています。
- 法人事業概況説明書は、法人税の確定申告書に添付が必要な書類。税務署が会社の概況を把握するためのもので、計算の結果ではなく「会社の様子」を書く
- 金額は千円単位(千円未満切り捨て)、取引金額は百万円単位、源泉徴収税額は円単位。マイナスは「△」で、「▲」は使わない
- ひとり会社が実際に書くのは、事業内容、期末従事員(常勤役員1)、PC・会計ソフトの利用、経理の状況、主要科目、代表者への報酬等、月別の売上と人件費、営業成績の概要
法人事業概況説明書とは:提出義務と書き方の基本ルール
- 法人税の申告書に添付する
- 何のために書くのか
- 単位と記号の基本ルール
法人税の申告書に添付する
法人税の確定申告書を出すときは、「法人の事業等の概況に関する書類」を添付することになっています。
税務署が所管する法人が使うのが「法人事業概況説明書」で、調査課が所管する大きな法人は「会社事業概況書」を使います。
ひとり会社は、法人事業概況説明書です。
国税庁の書き方の冒頭にも、「法人税確定申告書を提出する際には、法人事業概況説明書を添付してください」と書かれています。
何のために書くのか
申告書は「税額を計算した結果」ですが、概況説明書は「会社の様子」を税務署に伝える書類です。
どんな事業で、何人で、どんな設備とソフトで経理をして、月ごとの売上がどう動いたか。
税務署はこれを見て、申告内容と会社の実態が合っているかを確認します。
正直に、分かる範囲で書けばよく、空欄があっても申告が無効になるものではありません。
単位と記号の基本ルール
国税庁の書き方に、記入の約束が示されています。
数字の記載欄は1枠に1文字、右詰めで書きます。桁があふれる場合は枠を無視して書きます。
金額は千円単位で、千円未満は切り捨てます。「取引金額」欄は百万円単位、「源泉徴収税額」欄は円単位です。
マイナスの金額は、数字の1つ上の桁の枠に「△」または「−」を付けます。「▲」は使いません。
複数の項目から選ぶ欄は、該当する□に○を付けます。
記入した概況説明書は、ほかの書類とホチキスで留めず、申告書に挟んで提出します。e-Taxなら、申告書と一緒にデータで送信します。
表面の書き方:事業内容・従事員・PC・経理の状況
- 1 事業内容・2 支店・4 期末従事員等の状況
- 5 PCの利用状況・6 販売形態
- 8 経理の状況・9 役員報酬の異動・10 主要科目
1 事業内容・2 支店・4 期末従事員等の状況
「1 事業内容」には、営んでいる事業を書きます。「Webサイト制作」「古着のネット販売」のように具体的に書きます。詳しくは裏面の「事業形態」欄に書きます。
「2 支店・子会社の状況」は、支店や子会社がなければ空欄か「0」です。
「4 期末従事員等の状況」には、期末時点の人数を職種別に書きます。役員ひとりなら「常勤役員 1」「計 1」です。
「計のうち代表者家族数」は、代表者の家族で従事している人の数で、代表者本人は含みません。配偶者を役員や従業員にしていれば、その人数を書きます。
5 PCの利用状況・6 販売形態
「5 PCの利用状況」は、パソコンを使っているか、OSは何か、どの業務で使っているか、会計ソフトを使っているか、その名称、メールソフト名、データの保存先に○や記入をします。
PCには、パソコンだけでなくタブレットも含まれます。会計ソフトの利用はクラウドも含みます。
クラウド会計を使っているなら「会計ソフトの利用等」に○、「会計ソフト名」にその名称、「データの保存先」はクラウドに○です。
「6 販売形態」は、ネット販売をしているかと、その内容(自社サイト、モール、など)に○を付けます。
8 経理の状況・9 役員報酬の異動・10 主要科目
「8 経理の状況」の「管理者」は、現金と預金通帳を管理している人の氏名と、代表者との関係です。ひとり会社なら代表者本人で、「本人」に○です。
「源泉徴収対象所得」は、その期に源泉徴収した所得の種類(給与、報酬など)に○を付けます。役員報酬だけなら「給与」です。
「消費税」の欄には、当期の課税売上高を千円単位で書き、経理方式(税込・税抜)に○を付けます。免税事業者なら課税売上高の欄は売上高をそのまま書き、経理方式は税込です。
「9 役員又は役員報酬額の異動の有無」は、その期に役員や報酬額が変わったかどうかに○です。
「10 主要科目」には、決算書の主な科目の金額を千円単位で書きます。書き方には、「交際費」は申告調整前の支出額、「建物」「機械装置」は減価償却累計額控除後の額、「個人借入金」は銀行など以外からの借入金、といった注意があります。社長からの借入金(役員借入金)は「個人借入金」に入ります。
裏面の書き方:代表者への報酬・事業形態・月別の売上
- 11 代表者に対する報酬等の金額
- 12 事業形態・13 主な設備・15 帳簿類・16 税理士の関与
- 18 月別の売上高等の状況・19 当期の営業成績の概要
11 代表者に対する報酬等の金額
同族会社の場合、代表者に対する「報酬」「賃借料」「支払利息」「貸付金」「仮払金」と、代表者からの「借入金」「仮受金」の額を千円単位で書きます。
役員報酬の年額を「報酬」に、自宅の一部を会社に貸して家賃を受け取っていれば「賃借料」に、社長が会社にお金を貸していれば「借入金」に書きます。
ひとり会社は、ほぼすべてが同族会社に当たります。
12 事業形態・13 主な設備・15 帳簿類・16 税理士の関与
「12 事業形態」には、兼業の状況(2種類以上の事業をしていれば、従たる事業と売上の割合)、事業内容の特異性(同業と比べて違う点)、売上区分(現金売上と掛売上の割合)を書きます。
「13 主な設備等の状況」は、事業に使っている設備の名称、用途、台数などです。パソコン1台なら「パソコン 1台 事務用」で足ります。
「15 帳簿類の備付状況」は、作成している帳簿の名前を書きます。会計ソフトで仕訳帳と総勘定元帳を作り、請求書と領収書を保存しているなら、それらを書きます。優良な電子帳簿の要件を満たして保存している帳簿は、名前の末尾に「○」を付けます。
「16 税理士の関与状況」は、税理士に頼んでいる範囲に○です。自分で申告しているなら「関与なし」に○です。
18 月別の売上高等の状況・19 当期の営業成績の概要
「18 月別の売上高等の状況」は、月ごとの売上(収入)金額、仕入金額、人件費、源泉徴収税額、従事員数を書きます。
人件費には、役員報酬を含めたその月の給与の支給総額を書きます。源泉徴収税額は円単位で、年末調整の精算をした月は精算後の額です。
会計ソフトの月次推移表を見ながら書き写せば、10分ほどで終わります。
「19 当期の営業成績の概要」は、経営状況の変化で特に影響のあった事項を具体的に書く欄です。「新規取引先が増えて売上が前期比で増加」「主要取引先の契約終了で減収」のように、1〜3行で足ります。同じ内容の別紙があれば、添付して省略できます。
ひとり会社の記入例と、よくある迷い
- ひとり会社の記入例(主な欄)
- 空欄でよい欄
- e-Taxでの提出
ひとり会社の記入例(主な欄)
| 欄 | 記入例(Web制作のひとり会社・役員報酬 年240万円) |
|---|---|
| 1 事業内容 | Webサイトの制作・保守 |
| 4 期末従事員等の状況 | 常勤役員 1、計 1、計のうち代表者家族数 0 |
| 5 PCの利用状況 | 利用 有、OS Windows(またはmacOS)、会計ソフト 有(名称を記入)、データの保存先 クラウド |
| 6 販売形態 | 電子商取引 無(ネット販売をしていなければ) |
| 8 経理の状況 | 管理者 代表者本人、源泉徴収対象所得 給与、課税売上高(千円単位)、経理方式 税込 |
| 9 役員報酬額の異動 | 期首に変更していれば 有 |
| 10 主要科目 | 売上高、人件費(役員報酬)、地代家賃、現金預金、個人借入金(役員借入金)など千円単位 |
| 11 代表者に対する報酬等 | 報酬 2,400、借入金(あれば) |
| 15 帳簿類 | 仕訳帳、総勘定元帳、請求書控、領収書 |
| 16 税理士の関与状況 | 関与なし |
| 18 月別の売上高等 | 月別の売上、人件費 200、源泉徴収税額(円)、従事員数 1 |
| 19 当期の営業成績の概要 | 1〜3行で |
空欄でよい欄
支店や子会社がなければ「2」は空欄、海外取引がなければ「3」は「無」に○です。
「7 株主又は株式所有異動の有無」は、株主の変動がなければ「無」です。
「14」の欄(様式によって項目が異なる)や「17 加入組合等の状況」は、該当がなければ空欄で構いません。
「書けるところだけ書く」で問題ありません。分からない欄で止まるより、分かる欄を埋めて提出するほうが大切です。
e-Taxでの提出
e-Taxで法人税を申告する場合、概況説明書も申告書と一緒にデータで作成して送信します。
e-Taxソフトや申告ソフトには概況説明書の入力画面があり、月別の売上は会計ソフトの数字を取り込めるものもあります。
資本金1億円超などの電子申告義務のある法人は、添付書類も含めて電子での提出が必要ですが、ひとり会社は書面でもe-Taxでもどちらでも出せます。
ユイ申告書は何とか作ったんですが、概況説明書で「PCのOS」とか聞かれて、何の意味があるのか分かりません。
ケイ税務署が会社の実態を知るための書類なんだ。計算じゃなくて「様子」を書く。使っているOSや会計ソフトを、そのまま書けばいい。
ユイ全部の欄を埋めないとだめですか?
ケイ該当しない欄は空欄でいい。支店がなければ書かない、海外取引がなければ「無」。分かる欄を埋めて出せば大丈夫。
よくある質問
法人事業概況説明書は、必ず提出しなければなりませんか?
法人税の確定申告書を出す法人は、事業等の概況に関する書類を添付することになっています。
税務署所管の法人は、法人事業概況説明書を添付します。
金額はどの単位で書きますか?
千円単位(千円未満切り捨て)です。
「取引金額」欄は百万円単位、「源泉徴収税額」欄は円単位です。
マイナスの金額はどう書きますか?
数字の1つ上の桁の枠に「△」または「−」を付けます。
「▲」は使わないよう、国税庁の書き方で指示されています。
役員ひとりの会社の「期末従事員等の状況」は?
常勤役員1、計1です。
代表者家族数は、代表者本人を含めず、家族で従事している人の数を書きます。
「個人借入金」には何を書きますか?
銀行・信用金庫・信用組合以外からの借入金の合計です。
社長が会社に貸しているお金(役員借入金)は、ここに入ります。
e-Taxで出せますか?
出せます。
申告書と一緒に、概況説明書のデータを作成して送信します。
まとめ:次の一手
法人事業概況説明書は、法人税の申告書に添付する「会社の様子」を伝える書類で、千円単位・「△」・1枠1文字のルールで書きます。
ひとり会社が書くのは、事業内容、期末従事員(常勤役員1)、PC・会計ソフトの利用、経理の状況、主要科目、代表者への報酬等、月別の売上と人件費、営業成績の概要で、該当しない欄は空欄で構いません。
次の一手は、会計ソフトの決算書と月次推移表を開き、上の記入例の順に欄を埋めることです。
法人の決算と申告の期限は、あわせて読みたい記事で確認してください。
