ひとり会社の役員が社会保険に入ると、配偶者や子を健康保険の扶養に入れられます。
扶養に入れた家族は、保険料の負担なく健康保険を使え、配偶者は国民年金の保険料もかからなくなります。
この記事では、被扶養者(異動)届の書き方を、扶養に入れる条件、記入項目、配偶者の第3号被保険者の手続き、添付書類、提出期限と提出先、扶養から外れるときの届出、提出後の流れ、配偶者が個人事業をしている場合の判定の順に説明します。
根拠は、健康保険法(被扶養者の範囲)、国民年金法(第3号被保険者)、日本年金機構(被扶養者(異動)届の様式と記入例、被扶養者の認定基準、添付書類)、協会けんぽの案内で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。
筆者はひとり会社の役員として、家族の扶養の届出を自分で作成して提出しました。
- 配偶者や子を健康保険の扶養に入れるには、被扶養者(異動)届を、扶養に入れる事実(結婚・出産・退職など)が起きた日から5日以内に年金事務所へ出す。条件は、被保険者の収入で生計を維持し、年収130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)で、被保険者の年収の2分の1未満であること
- 記入するのは、被保険者(役員本人)の情報と、被扶養者の氏名・生年月日・続柄・マイナンバー・職業・年収の見込み・同居か別居か・該当日と理由。配偶者を扶養に入れる場合は、同じ届出で国民年金の第3号被保険者の手続きも済む
- 添付は、続柄の確認(マイナンバーを記載すれば戸籍・住民票は省略できる場合が多い)と、収入の確認(課税証明書、退職証明書、離職票など。16歳未満の子は不要)。扶養から外れたら削除の届出と保険証の返却をし、入れたままだと医療費の返還を求められる
扶養に入れる条件と、対象になる家族
- 収入の条件:年収130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)で、かつ被保険者(役員)の年収の2分の1未満。年収は今後1年間の見込みで判定(月収108,334円未満が目安)。別居なら、被保険者からの仕送り額より少ないこと
- 続柄の条件:配偶者(内縁を含む)、子、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母は同居でなくても可。それ以外の3親等内の親族(配偶者の父母など)は同居が必要
- 国内居住の条件:原則として日本国内に住所があること(留学などの例外あり)
収入の条件:年収130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)で、かつ被保険者(役員)の年収の2分の1未満。年収は今後1年間の見込みで判定(月収108,334円未満が目安)。別居なら、被保険者からの仕送り額より少ないこと
扶養に入れる家族は、被保険者の収入で生計を維持していることが条件で、その目安が年収130万円です。
年収は、過去の実績ではなく、扶養に入れる時点から先1年間の見込みで判定します。月収なら108,334円未満、日額なら3,612円未満が目安です。
収入には、給与、事業収入、年金、失業給付、傷病手当金などが含まれ、非課税のものも入ります。
役員報酬を低く設定しているひとり会社では、「被保険者の年収の2分の1未満」の条件に注意します。役員報酬が年120万円なら、配偶者の年収は60万円未満でなければ扶養に入れません。
続柄の条件:配偶者(内縁を含む)、子、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母は同居でなくても可。それ以外の3親等内の親族(配偶者の父母など)は同居が必要
配偶者、子、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母、曾祖父母は、別居していても扶養に入れられます(別居の場合は仕送りの事実が必要)。
配偶者の父母や、甥姪などの3親等内の親族は、同居していることが条件です。
国内居住の条件:原則として日本国内に住所があること(留学などの例外あり)
2020年4月から、被扶養者は原則として日本国内に住んでいることが条件になりました。
海外に住む家族は、留学や海外赴任への同行など、一時的な例外に該当する場合だけ扶養に入れられます。
記入項目と、配偶者の第3号被保険者の手続き
- 被保険者欄:被保険者整理番号(資格取得と同時なら空欄)、氏名、生年月日、マイナンバーまたは基礎年金番号、資格取得日、収入(年収)、住所
- 被扶養者欄(配偶者・その他の家族で欄が分かれる):氏名、生年月日、性別、続柄、マイナンバー、住所(同居なら被保険者と同じ)、職業(無職・パート・学生など)、収入(年収の見込み)、該当の理由(配偶者の就職・退職・出生・婚姻など)と該当日、異動の区分(該当・非該当・変更)
- 配偶者の場合:同じ様式が「国民年金第3号被保険者関係届」を兼ねている。配偶者が20歳以上60歳未満なら、第3号の欄に記入し、配偶者本人の署名(または記名)をすると、国民年金の第3号被保険者(保険料負担なし)の手続きも完了
被保険者欄:被保険者整理番号(資格取得と同時なら空欄)、氏名、生年月日、マイナンバーまたは基礎年金番号、資格取得日、収入(年収)、住所
届出の上段には、被保険者である役員本人の情報を書きます。
被保険者整理番号は、資格取得届と同時に出す場合は空欄で、すでに加入している場合は標準報酬決定通知書に記載された番号です。
被保険者の収入(年収)の欄には、役員報酬の年額を書きます。被扶養者の収入が被保険者の2分の1未満かを判定するために使われます。
被扶養者欄(配偶者・その他の家族で欄が分かれる):氏名、生年月日、性別、続柄、マイナンバー、住所(同居なら被保険者と同じ)、職業(無職・パート・学生など)、収入(年収の見込み)、該当の理由(配偶者の就職・退職・出生・婚姻など)と該当日、異動の区分(該当・非該当・変更)
様式は、配偶者の欄と、その他の被扶養者(子・父母など)の欄に分かれています。
収入の欄には、今後1年間の見込み年収を書き、無職・無収入なら0と書きます。パートで働いているなら、月収×12の見込みです。
該当日は、扶養に入れる事実が起きた日(退職した日の翌日、出生日、婚姻日、被保険者の資格取得日など)で、理由をあわせて記入します。
配偶者の場合:同じ様式が「国民年金第3号被保険者関係届」を兼ねている。配偶者が20歳以上60歳未満なら、第3号の欄に記入し、配偶者本人の署名(または記名)をすると、国民年金の第3号被保険者(保険料負担なし)の手続きも完了
20歳以上60歳未満の配偶者を扶養に入れると、配偶者は国民年金の第3号被保険者になり、国民年金の保険料(月約1.7万円)を払わなくても保険料を納めた期間として扱われます。
被扶養者(異動)届の配偶者の欄に、第3号被保険者関係届としての記入欄(配偶者の基礎年金番号、署名)があり、ここを埋めれば、別の届出は不要です。
添付書類、提出期限、提出先
- 続柄の確認書類:戸籍謄本または住民票(被保険者と被扶養者の続柄が分かるもの)。被保険者と被扶養者の両方のマイナンバーを届出に記載し、続柄が年金事務所で確認できる場合は省略可
- 収入の確認書類:退職した人は退職証明書か雇用保険の離職票(または資格喪失確認通知書)、パートや年金収入がある人は課税(非課税)証明書、失業給付を受けない人はその旨の申立て。16歳未満の子と、16歳以上の学生は収入の書類が原則不要。別居の家族は仕送りの事実を示す振込記録
- 期限と提出先:扶養に入れる事実が起きた日から5日以内に、事業所を管轄する年金事務所(郵送は事務センター)。e-Govでの電子申請も可。資格取得届と同時に出す場合は、取得届に添えて提出
続柄の確認書類:戸籍謄本または住民票(被保険者と被扶養者の続柄が分かるもの)。被保険者と被扶養者の両方のマイナンバーを届出に記載し、続柄が年金事務所で確認できる場合は省略可
続柄の確認には、本来は戸籍謄本や続柄入りの住民票が必要です。
ただし、届出に被保険者と被扶養者のマイナンバーを記載すれば、年金事務所が情報連携で続柄を確認できるため、添付を省略できる扱いになっています(状況により求められることもあります)。
収入の確認書類:退職した人は退職証明書か雇用保険の離職票(または資格喪失確認通知書)、パートや年金収入がある人は課税(非課税)証明書、失業給付を受けない人はその旨の申立て。16歳未満の子と、16歳以上の学生は収入の書類が原則不要。別居の家族は仕送りの事実を示す振込記録
収入の確認は、被扶養者の状況で書類が変わります。
会社を退職して扶養に入る配偶者は、退職証明書か離職票で退職の事実を示し、失業給付を受けるならその日額(3,612円以上なら受給中は扶養に入れない)を確認します。
パートで働いている配偶者は、直近の課税証明書や給与明細で年収の見込みを示します。
子は、16歳未満なら収入の書類は不要で、16歳以上でも学生なら原則不要です。
期限と提出先:扶養に入れる事実が起きた日から5日以内に、事業所を管轄する年金事務所(郵送は事務センター)。e-Govでの電子申請も可。資格取得届と同時に出す場合は、取得届に添えて提出
提出期限は、扶養に入れる事実が起きた日から5日以内です。
設立時に役員本人の資格取得届と一緒に出す場合は、取得届の添付として同時に提出します。
遅れると、扶養の認定日が届出日になることがあり(やむを得ない理由があれば遡及)、その間の医療費が全額自己負担になる恐れがあるので、早めに出します。
扶養から外れるとき、提出後の流れ、個人事業をしている配偶者
- 扶養から外れる:配偶者が就職して社会保険に入った、年収が130万円以上になる見込みになった、離婚した、子が就職した→同じ様式で「非該当(削除)」の届出を5日以内に出し、被扶養者の保険証を返却(マイナ保険証なら資格情報の更新)。配偶者が外れると第3号から第1号(国民年金の自己納付)への切替も必要
- 提出後:2〜3週間で、被扶養者の健康保険証(または資格確認書)が届く。被扶養者の分の保険料はかからない(被保険者の保険料は変わらない)。配偶者は第3号被保険者として年金記録に反映
- 個人事業をしている配偶者:収入は、売上から必要経費を引いた額で判定(経費の範囲は協会けんぽの基準で、減価償却費は経費として認められないなど、所得税の計算とは異なる)。確定申告書の写しで確認。130万円以上なら扶養に入れず、配偶者は国民健康保険と国民年金
扶養から外れる:配偶者が就職して社会保険に入った、年収が130万円以上になる見込みになった、離婚した、子が就職した→同じ様式で「非該当(削除)」の届出を5日以内に出し、被扶養者の保険証を返却(マイナ保険証なら資格情報の更新)。配偶者が外れると第3号から第1号(国民年金の自己納付)への切替も必要
扶養の条件を満たさなくなったら、同じ様式の異動の区分を「非該当」にして、5日以内に届け出ます。
配偶者がパートの時間を増やして年収130万円を超える見込みになった、就職して勤務先の社会保険に入った、離婚した、などが該当します。
届出を忘れて扶養に入れたままにしていると、あとで判明したときに、さかのぼって扶養を外され、その間に使った医療費の保険給付分の返還を求められます。
配偶者が扶養から外れた場合は、第3号被保険者でなくなるので、配偶者本人が市町村で国民年金の第1号への切替(または勤務先での厚生年金加入)の手続きをします。
提出後:2〜3週間で、被扶養者の健康保険証(または資格確認書)が届く。被扶養者の分の保険料はかからない(被保険者の保険料は変わらない)。配偶者は第3号被保険者として年金記録に反映
届出が受理されると、被扶養者分の健康保険証(マイナ保険証を使う場合は資格情報のお知らせ)が、事業所宛てに届きます。
被扶養者が何人いても、被保険者(役員)の保険料は変わりません。
配偶者の第3号被保険者の記録は、年金事務所で登録され、ねんきん定期便で確認できます。
個人事業をしている配偶者:収入は、売上から必要経費を引いた額で判定(経費の範囲は協会けんぽの基準で、減価償却費は経費として認められないなど、所得税の計算とは異なる)。確定申告書の写しで確認。130万円以上なら扶養に入れず、配偶者は国民健康保険と国民年金
配偶者が個人事業主の場合、収入の判定は売上ではなく、売上から必要経費を引いた額で行います。
ただし、認められる経費の範囲は所得税より狭く、協会けんぽの基準では、売上原価や直接的な経費(材料費、外注費など)は引けますが、減価償却費や青色申告特別控除は引けません。
直近の確定申告書と収支内訳書(青色申告決算書)の写しで確認され、130万円以上なら扶養に入れず、配偶者は自分で国民健康保険と国民年金に加入します。
被扶養者(異動)届の記入項目と添付書類の一覧
| 項目 | 記入・添付の内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 被保険者 | 整理番号、氏名、生年月日、マイナンバー、資格取得日、年収、住所 | 年収は役員報酬の年額 |
| 被扶養者(配偶者) | 氏名、生年月日、続柄、マイナンバー、住所、職業、年収見込み、該当日・理由 | 20〜59歳なら第3号被保険者関係届を兼ねる |
| 被扶養者(その他) | 子・父母など。氏名、生年月日、続柄、マイナンバー、同居別居、職業、年収、該当日・理由 | 配偶者の父母などは同居が条件 |
| 続柄の確認 | 戸籍謄本・住民票 | 両方のマイナンバー記載で省略できる場合あり |
| 収入の確認 | 退職証明書・離職票・課税証明書・給与明細・確定申告書の写し | 16歳未満の子、学生は原則不要 |
| 別居の場合 | 仕送りの振込記録 | 仕送り額>被扶養者の収入 |
| 提出期限 | 事実が起きた日から5日以内 | 遅れると認定日が届出日になることも |
| 提出先 | 管轄の年金事務所(郵送は事務センター)、e-Gov | 資格取得届と同時可 |
| 扶養から外れる | 同じ様式で「非該当」、保険証返却 | 配偶者は第1号への切替も |
ユイ会社で社会保険に入ったので、専業主婦の妻を扶養に入れたいです。
ケイ被扶養者(異動)届を、資格取得届と一緒に年金事務所へ出す。配偶者の欄に氏名・生年月日・マイナンバー・収入0と書いて、第3号被保険者の欄も埋めれば、健康保険の扶養と国民年金の第3号が一度に済む。保険料は増えない。
ユイ妻がパートで月10万円くらい稼いでいます。扶養に入れますか?
ケイ月108,334円未満、年130万円未満なら収入の条件はOK。ただし、自分の役員報酬の2分の1未満という条件もある。役員報酬が年120万円なら、妻は年60万円未満でないと入れない。役員報酬を低くしている人は、ここに注意。
よくある質問
配偶者を扶養に入れる条件は何ですか?
被保険者の収入で生計を維持していて、年収130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)で、かつ被保険者の年収の2分の1未満であることです。
届出はいつまでに出しますか?
扶養に入れる事実(退職、婚姻、出生など)が起きた日から5日以内です。
設立時は役員本人の資格取得届と一緒に出します。
配偶者の国民年金の手続きは別に必要ですか?
不要です。
被扶養者(異動)届が国民年金第3号被保険者関係届を兼ねているので、配偶者の欄を埋めれば同時に済みます。
添付書類は何が必要ですか?
続柄の確認(マイナンバーの記載で省略できる場合あり)と、収入の確認(退職証明書、離職票、課税証明書など)です。
16歳未満の子は収入の書類が不要です。
役員報酬が低い場合に注意することは?
被扶養者の年収が「被保険者の年収の2分の1未満」という条件があるので、役員報酬が年120万円なら配偶者は年60万円未満でないと扶養に入れません。
扶養から外れるときは?
同じ様式で「非該当」の届出を5日以内に出し、保険証を返却します。
配偶者は国民年金の第1号への切替も必要です。
まとめ:次の一手
被扶養者(異動)届は、配偶者や子を健康保険の扶養に入れる届出で、年収130万円未満かつ被保険者の2分の1未満などの条件を満たす家族について、氏名・続柄・マイナンバー・収入・該当日を記入し、続柄と収入の確認書類を添えて、事実が起きた日から5日以内に年金事務所へ出します。
配偶者は同じ届出で国民年金の第3号被保険者の手続きも済み、扶養から外れたら非該当の届出と保険証の返却が必要で、個人事業をしている配偶者は売上から経費を引いた額で判定します。
次の一手は、扶養に入れる家族の年収の見込みと自分の役員報酬の2分の1を比べて条件を確認し、収入の確認書類(退職証明書や課税証明書)を取り寄せることです。
配偶者を役員にして報酬を払う場合と扶養に入れる場合の比較は、あわせて読みたい記事で確認してください。
