役員報酬の源泉徴収票は、「本人に渡す」のと「税務署に出す」で、ルールが違います。
本人には必ず渡しますが、税務署に出すのは役員なら年150万円を超える人だけで、この基準を知らずに全員分を出したり、逆に出し忘れたりします。
この記事では、役員の源泉徴収票の書き方と提出を、交付と提出の基準、各欄の記入、マイナンバーの扱い、給与支払報告書と法定調書合計表との関係、報酬の変更や賞与がある場合、訂正と再発行の順に説明します。
根拠は、所得税法(226条の源泉徴収票の交付・提出)、所得税法施行規則(提出範囲)、国税庁(給与所得の源泉徴収票の記載要領、法定調書の手引き)、番号法で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。源泉徴収票の様式は年によって変わるので、その年の様式で確認してください。
筆者はひとり会社で自分の源泉徴収票を作成し、法定調書合計表と一緒にe-Taxで提出しています。
- 源泉徴収票は、年末調整が終わったら役員本人に翌年1月31日までに必ず交付する(金額にかかわらず)。税務署への提出は、役員の場合は年間の支払金額が150万円を超える人だけ(従業員は500万円超)で、法定調書合計表に添えて出す
- 書くのは、種別(役員報酬)、支払金額(1〜12月の報酬の合計)、給与所得控除後の金額、所得控除の額の合計額、源泉徴収税額(年末調整後の年税額)、社会保険料等の金額(本人負担分)、生命保険料・地震保険料の控除額、配偶者・扶養親族の情報、摘要。税務署提出用には本人のマイナンバーと会社の法人番号、本人交付用にはマイナンバーを書かない
- 給与支払報告書は同じ内容を市町村に金額にかかわらず出す書類で、源泉徴収票と一緒に会計ソフトで作る。年の途中の報酬変更や賞与は支払金額に含め、間違えたら訂正分を再提出し、本人からの再発行の求めには応じる
本人への交付と税務署への提出の基準
- 本人への交付:年末調整をした全員に、翌年1月31日まで(年の途中の退職者は退職後1か月以内)。金額の基準はない
- 税務署への提出(年末調整をした人):役員は年間の支払金額が150万円超、従業員は500万円超。基準以下なら提出不要(合計表の人数と金額には含める)
- 年末調整をしなかった人の提出基準:扶養控除等申告書を出した人で年収2,000万円超は全員、途中退職は250万円超(役員は50万円超)。乙欄の人は50万円超
本人への交付:年末調整をした全員に、翌年1月31日まで(年の途中の退職者は退職後1か月以内)。金額の基準はない
源泉徴収票は、給与を払った相手全員に交付する義務があります。
役員1人のひとり会社でも、会社として役員本人に交付します。
期限は、翌年1月31日です。年の途中で退任した役員には、退任から1か月以内に交付します。
税務署への提出(年末調整をした人):役員は年間の支払金額が150万円超、従業員は500万円超。基準以下なら提出不要(合計表の人数と金額には含める)
税務署に出す源泉徴収票は、全員分ではありません。
年末調整をした人のうち、法人の役員は年間の支払金額が150万円を超える人、従業員は500万円を超える人が対象です。
役員報酬が月10万円(年120万円)なら税務署への提出は不要で、月15万円(年180万円)なら必要です。
提出しない人の分も、法定調書合計表の「給与所得の源泉徴収票合計表」の人数と支払金額の合計には含めます。
年末調整をしなかった人の提出基準:扶養控除等申告書を出した人で年収2,000万円超は全員、途中退職は250万円超(役員は50万円超)。乙欄の人は50万円超
年末調整をしなかった人は、別の基準です。
年収2,000万円超で年末調整の対象外の人は全員、年の途中で退職して年末調整をしなかった人は250万円超(役員は50万円超)、扶養控除等申告書を出していない乙欄の人は50万円超が提出の基準です。
各欄の書き方(役員報酬の場合)
- 上段:支払を受ける者の住所(翌年1月1日現在)・氏名・個人番号(税務署用のみ)、種別「役員報酬」(給与・賞与と併記可)、支払金額(1〜12月に支払った報酬と賞与の合計)、給与所得控除後の金額(年末調整をした場合)、所得控除の額の合計額、源泉徴収税額(年末調整後の年税額)
- 中段:控除対象配偶者の有無と控除額、控除対象扶養親族の数、16歳未満扶養親族の数、障害者の数、社会保険料等の金額(給与天引きの健康保険・厚生年金・介護保険+申告書に書いた国民年金やiDeCo)、生命保険料の控除額、地震保険料の控除額、住宅借入金等特別控除の額
- 下段:摘要(定額減税の控除済額など年ごとの特記、前職の給与を合算した場合の前職情報、未払いがある場合)、生命保険料の内訳、配偶者・扶養親族の氏名と個人番号(税務署用のみ)、支払者の住所・名称・法人番号
上段:支払を受ける者の住所(翌年1月1日現在)・氏名・個人番号(税務署用のみ)、種別「役員報酬」(給与・賞与と併記可)、支払金額(1〜12月に支払った報酬と賞与の合計)、給与所得控除後の金額(年末調整をした場合)、所得控除の額の合計額、源泉徴収税額(年末調整後の年税額)
種別は「役員報酬」と書きます(賞与があれば「役員報酬・賞与」)。
支払金額は、その年の1月1日から12月31日までに支払日が来た報酬と賞与の合計です。12月分を翌年1月に払う会社は、翌年の支払金額に入ります。
給与所得控除後の金額、所得控除の額の合計額、源泉徴収税額は、年末調整の計算結果をそのまま転記します。
中段:控除対象配偶者の有無と控除額、控除対象扶養親族の数、16歳未満扶養親族の数、障害者の数、社会保険料等の金額(給与天引きの健康保険・厚生年金・介護保険+申告書に書いた国民年金やiDeCo)、生命保険料の控除額、地震保険料の控除額、住宅借入金等特別控除の額
社会保険料等の金額には、役員報酬から天引きした健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料(40歳以上)の本人負担分の年間合計と、保険料控除申告書に書いた国民年金の追納やiDeCoの掛金を合わせて書きます(iDeCoなどの小規模企業共済等掛金は内書きします)。
生命保険料と地震保険料は、控除額(支払額ではなく、計算後の控除額)を書きます。
下段:摘要(定額減税の控除済額など年ごとの特記、前職の給与を合算した場合の前職情報、未払いがある場合)、生命保険料の内訳、配偶者・扶養親族の氏名と個人番号(税務署用のみ)、支払者の住所・名称・法人番号
摘要には、その年の制度で指示された記載事項(定額減税があった年はその控除済額と控除外額など)、年の途中で入社して前職の給与を合算した場合の前職の会社名と支払金額、未払いの報酬があればその額を書きます。
支払者の欄には、会社の所在地、法人名、電話番号、法人番号を書きます。
マイナンバー、給与支払報告書、法定調書合計表との関係
- マイナンバー:税務署提出用には本人・配偶者・扶養親族の個人番号と会社の法人番号を記載。本人交付用には個人番号を記載しない(法人番号は記載)。会計ソフトは交付用と提出用を分けて出力する
- 給与支払報告書:源泉徴収票と同じ内容の市町村用の書類(個人別明細書)。金額の基準なく、給与を払った全員分を、本人の翌年1月1日現在の住所地の市町村に、総括表と一緒に1月31日までに提出(eLTAX)。個人番号は記載
- 法定調書合計表:「給与所得の源泉徴収票合計表」の欄に、給与を払った全員の人数・支払金額・源泉徴収税額の合計と、そのうち税務署に源泉徴収票を提出する人の人数・金額を書く。150万円以下で提出しない役員も「人数」と「支払金額」には含める
マイナンバー:税務署提出用には本人・配偶者・扶養親族の個人番号と会社の法人番号を記載。本人交付用には個人番号を記載しない(法人番号は記載)。会計ソフトは交付用と提出用を分けて出力する
源泉徴収票には、税務署提出用と本人交付用があり、記載内容が1点だけ違います。
税務署提出用には、受給者本人と、控除対象配偶者・扶養親族のマイナンバーを記載します。
本人交付用には、マイナンバーを記載しません(番号法で、本人に交付する書類への記載は不要とされています)。会社の法人番号は両方に記載します。
給与支払報告書:源泉徴収票と同じ内容の市町村用の書類(個人別明細書)。金額の基準なく、給与を払った全員分を、本人の翌年1月1日現在の住所地の市町村に、総括表と一緒に1月31日までに提出(eLTAX)。個人番号は記載
給与支払報告書の個人別明細書は、源泉徴収票と同じ様式・同じ内容で、提出先が市町村です。
住民税の計算に使うので、税務署の150万円のような基準はなく、給与を払った全員分を出します。
総括表(会社の情報と人数をまとめた表紙)と一緒に、本人の住所地の市町村にeLTAXで出します。
法定調書合計表:「給与所得の源泉徴収票合計表」の欄に、給与を払った全員の人数・支払金額・源泉徴収税額の合計と、そのうち税務署に源泉徴収票を提出する人の人数・金額を書く。150万円以下で提出しない役員も「人数」と「支払金額」には含める
税務署には、源泉徴収票を単独で出すのではなく、法定調書合計表に添えて出します。
合計表の給与の欄には、給与を払った全員(源泉徴収票を提出しない人も含む)の人数と支払金額と源泉徴収税額の合計を書き、そのうち源泉徴収票を提出する人の人数と支払金額を別の行に書きます。
役員報酬が年120万円で源泉徴収票を出さない場合も、合計表の「人数1人・支払金額120万円」には含め、「うち提出する分」は0人です。
報酬の変更・賞与がある場合、訂正、再発行
- 年の途中で役員報酬を変えた:1〜12月の実際の支払額を合計して支払金額に書く(税務上損金不算入の部分があっても、本人の給与としては全額)。賞与(事前確定届出給与など)も支払金額に含める
- 訂正:税務署に出したあとに間違いが分かったら、訂正後の源泉徴収票(摘要に「訂正分」と記載)と合計表を再提出。本人交付用も正しいものを再交付。給与支払報告書も市町村に訂正分を提出
- 再発行:本人が紛失して再発行を求めたら、会社は交付義務があるので再発行する。会計ソフトから再出力。確定申告や住宅ローンの審査で必要になることが多い
年の途中で役員報酬を変えた:1〜12月の実際の支払額を合計して支払金額に書く(税務上損金不算入の部分があっても、本人の給与としては全額)。賞与(事前確定届出給与など)も支払金額に含める
期の途中で役員報酬を増やして、法人税で一部が損金不算入になった場合でも、本人にとっては全額が給与所得です。
源泉徴収票の支払金額は、実際に払った合計を書きます。
事前確定届出給与として払った賞与も、支払金額に含め、種別に賞与を併記します。
訂正:税務署に出したあとに間違いが分かったら、訂正後の源泉徴収票(摘要に「訂正分」と記載)と合計表を再提出。本人交付用も正しいものを再交付。給与支払報告書も市町村に訂正分を提出
提出後に金額の誤りに気づいたら、正しい内容の源泉徴収票を作り、摘要欄に「訂正分」と書いて、法定調書合計表(訂正分の表示)と一緒に税務署に再提出します。
本人には正しいものを再交付し、市町村にも給与支払報告書の訂正分を出します。
年末調整の計算自体が間違っていた場合は、翌年1月末までなら年末調整の再計算(再年調)で直し、それ以降は本人の確定申告で正します。
再発行:本人が紛失して再発行を求めたら、会社は交付義務があるので再発行する。会計ソフトから再出力。確定申告や住宅ローンの審査で必要になることが多い
本人が源泉徴収票をなくして再発行を求めた場合、会社は再交付します。
ひとり会社では自分で自分に再発行することになり、会計ソフトから再出力すれば済みます。
確定申告、住宅ローンや賃貸の審査、保育園の申請などで、過去の年の源泉徴収票が必要になることがあるので、PDFで保存しておきます。
源泉徴収票・給与支払報告書・法定調書合計表の提出先と基準
| 書類 | 提出先 | 対象 | 期限 | マイナンバー |
|---|---|---|---|---|
| 源泉徴収票(本人交付用) | 本人 | 全員 | 翌年1月31日 | 記載しない |
| 源泉徴収票(税務署提出用) | 税務署 | 役員150万円超、従業員500万円超(年末調整をした人) | 翌年1月31日(合計表に添付) | 記載する |
| 給与支払報告書(個人別明細書+総括表) | 本人の住所地の市町村 | 全員 | 翌年1月31日 | 記載する |
| 法定調書合計表 | 税務署 | 給与を払った会社すべて | 翌年1月31日 | 法人番号 |
ユイ役員報酬が月10万円です。源泉徴収票は税務署に出しますか?
ケイ年120万円なら、役員の基準の150万円以下だから税務署への提出は不要。でも本人への交付は必要だし、市町村への給与支払報告書は金額に関係なく出す。法定調書合計表の人数と金額には含めておく。
ユイ本人用と税務署用で、何が違うんですか?
ケイマイナンバーの有無だけ。税務署用には本人と扶養親族のマイナンバーを書き、本人に渡すほうには書かない。会計ソフトは両方を分けて出してくれる。
よくある質問
役員の源泉徴収票は税務署に出しますか?
年間の支払金額が150万円を超える役員の分を、法定調書合計表に添えて翌年1月31日までに出します。
150万円以下なら提出不要ですが、本人への交付は必要です。
本人への交付はいつまでですか?
翌年1月31日までです。
年の途中で退任した場合は、退任後1か月以内です。
本人交付用にマイナンバーは書きますか?
書きません。
税務署提出用にだけ、本人と配偶者・扶養親族のマイナンバーを記載します。
給与支払報告書との違いは何ですか?
内容は同じで、提出先が市町村、対象が金額にかかわらず全員、という点が違います。
年の途中で役員報酬を変えました。支払金額はどう書きますか?
1〜12月に実際に払った合計を書きます。
法人税で損金不算入になる部分があっても、本人の給与としては全額です。
間違えて提出してしまいました。
正しい源泉徴収票の摘要に「訂正分」と書き、合計表と一緒に再提出します。
本人にも再交付し、市町村にも訂正分を出します。
まとめ:次の一手
役員の源泉徴収票は、本人には金額にかかわらず翌年1月31日までに交付し、税務署には年150万円を超える役員の分だけを法定調書合計表に添えて提出し、本人交付用にはマイナンバーを書きません。
給与支払報告書は同じ内容を市町村に全員分出し、報酬の変更や賞与は実際の支払額を合計し、間違えたら訂正分を再提出、再発行の求めには応じます。
次の一手は、今年の役員報酬の年間合計が150万円を超えるかを確認し、会計ソフトの年末調整メニューで交付用と提出用の源泉徴収票と給与支払報告書を出力する準備をすることです。
法定調書合計表の書き方は、あわせて読みたい記事で確認してください。
