ひとり会社の会計ソフトは、freeeとマネーフォワードの2択になることが多く、「どちらでもできることは同じ」と言われがちです。
実際には、記帳の考え方が根本から違い、簿記の知識の有無と、税理士に頼むかどうかで、向き不向きがはっきり分かれます。
この記事では、freee会計とマネーフォワード クラウド会計の違いを、記帳の考え方、法人税申告への対応、周辺機能の範囲、税理士との共有、料金、乗り換えの手間の6つで説明し、ひとり会社の選び方をまとめます。
根拠は、両社が公開している機能説明と料金ページ、国税庁(e-Taxの対応ソフト)で、2026年10月16日時点の内容を確認しています。料金や機能は変わるので、契約前に公式サイトで確認してください。
筆者はひとり会社の記帳と申告を会計ソフトで行い、両方の操作体系を実際に使って比べました。
- いちばんの違いは記帳の考え方。freeeは「取引」(いつ・誰に・何を・いくら)を登録すると仕訳が自動で作られる設計で、簿記を知らない人向け。マネーフォワードは仕訳帳をそのまま扱う設計で、借方・貸方で考えられる人や、税理士と帳簿を共有する人に向く
- 決算と法人税の申告まで自分でやるなら、どちらも会計本体とは別に申告書を作る仕組みが必要。両社とも法人税の申告書を作成する機能やサービスを提供しているが、プランや料金の位置づけが違うので、契約前に「別表一・四・五(一)まで作れて、e-Taxに送信できるか」を公式サイトで確認する
- ひとり法人向けプランの年額は、マネーフォワードが約3万円、freeeが約3万6,000円(2026年10月時点・税抜)。乗り換えは仕訳データのCSVで可能だが、期の途中は避けて決算後に行う
違い1:記帳の考え方(取引ベースか仕訳ベースか)
- freee:「取引」を登録する。相手先・内容・金額・支払い方法を入れると、仕訳は裏で自動生成。借方・貸方を意識しない
- マネーフォワード:仕訳帳が中心。銀行の明細から仕訳を作るときも、借方・貸方の科目を選ぶ画面
- 向き不向き:簿記を知らず「売上」「経費」で考えたい人はfreee、簿記3級程度の知識があるか、税理士の帳簿と合わせたい人はマネーフォワード
freee:「取引」を登録する。相手先・内容・金額・支払い方法を入れると、仕訳は裏で自動生成。借方・貸方を意識しない
freeeは、「○月○日、○○社に、△△の売上、11万円、未入金」のように、取引そのものを登録する設計です。
入金があれば、その取引に「消し込み」をするだけで、売掛金の回収の仕訳が自動で作られます。
借方・貸方という概念を画面に出さないので、簿記を知らなくても始められます。
一方、仕訳を直接いじりたいときに、取引の裏にある仕訳を探す手間があり、簿記を知っている人には回りくどく感じることがあります。
マネーフォワード:仕訳帳が中心。銀行の明細から仕訳を作るときも、借方・貸方の科目を選ぶ画面
マネーフォワードは、従来の会計ソフトと同じく仕訳帳が中心です。
銀行やカードの明細を取り込むと、「この明細は借方が通信費、貸方が普通預金」という形で仕訳を確定します。
簿記の知識があれば直感的で、税理士が使う会計ソフトと同じ感覚で帳簿を見られます。
向き不向き:簿記を知らず「売上」「経費」で考えたい人はfreee、簿記3級程度の知識があるか、税理士の帳簿と合わせたい人はマネーフォワード
簿記を学ぶつもりがなく、「売上と経費の管理ができればよい」という人は、freeeの取引ベースが楽です。
借方・貸方で考えられる人、将来税理士に頼む可能性がある人、仕訳を細かく直したい人は、マネーフォワードが扱いやすいです。
違い2:法人税の申告への対応
- 共通:会計ソフト本体は決算書(貸借対照表・損益計算書)まで。法人税の申告書(別表)は、別の申告機能やサービスで作る
- 確認点:別表一・二・四・五(一)・五(二)・十六と、地方税の第六号・第二十号様式が作れるか。e-TaxとeLTAXに送信できるか。消費税の申告書も作れるか
- 料金:申告の機能が会計プランに含まれるか、別料金(年1万〜3万円程度)かは、プランと時期で変わる。契約前に公式サイトで確認
共通:会計ソフト本体は決算書(貸借対照表・損益計算書)まで。法人税の申告書(別表)は、別の申告機能やサービスで作る
両社とも、会計ソフトの基本プランで作れるのは決算書までです。
法人税の申告書(別表)と地方税の申告書は、会計データと連携する申告の機能やサービスで作ります。
税理士に申告を頼む人には関係ありませんが、自分で申告するなら、この部分が選ぶ決め手になります。
確認点:別表一・二・四・五(一)・五(二)・十六と、地方税の第六号・第二十号様式が作れるか。e-TaxとeLTAXに送信できるか。消費税の申告書も作れるか
ひとり会社の申告に必要なのは、別表一・二・四・五(一)・五(二)と、減価償却があれば十六、交際費があれば十五、欠損金があれば七です。
これに、地方税の第六号様式(都道府県)と第二十号様式(市町村)、課税事業者なら消費税の申告書が加わります。
申告の機能がこれらを作成し、e-TaxとeLTAXに直接送信できるかを、公式サイトの対応一覧で確認します。
料金:申告の機能が会計プランに含まれるか、別料金(年1万〜3万円程度)かは、プランと時期で変わる。契約前に公式サイトで確認
申告の機能は、会計のプランに含まれる場合と、別のサービスとして年1万〜3万円程度かかる場合があり、両社でプランの構成が違います。
会計ソフトの年額だけで比べず、「会計+申告」の合計で比べます。
違い3〜4:周辺機能の範囲と、税理士との共有
- 周辺機能:給与計算(役員報酬の源泉徴収・社会保険料の計算)、社会保険の電子申請、請求書の発行、経費精算、電子帳簿保存法の書類保存は、両社とも提供。プランで含まれる範囲が違う
- freee:会計・給与・請求書が1つの画面で連動する一体型の設計。ひとり法人プランに含まれる範囲を確認
- マネーフォワード:会計・給与・請求書・経費が別サービスの組み合わせ。ひとり法人プランでどこまで使えるかを確認。税理士の利用者が多く、顧問を頼むときに合わせやすい
周辺機能:給与計算(役員報酬の源泉徴収・社会保険料の計算)、社会保険の電子申請、請求書の発行、経費精算、電子帳簿保存法の書類保存は、両社とも提供。プランで含まれる範囲が違う
ひとり会社の事務で会計以外に必要なのは、役員報酬の給与計算(源泉所得税と社会保険料の天引き)、インボイス対応の請求書の発行、領収書や電子取引の書類保存です。
どちらも提供していますが、ひとり法人向けプランに含まれるか、別契約かが違います。
freee:会計・給与・請求書が1つの画面で連動する一体型の設計。ひとり法人プランに含まれる範囲を確認
freeeは、会計・人事労務(給与)・請求書が同じ基盤で動き、請求書を発行すると売上の取引が自動で登録され、給与を確定すると役員報酬の仕訳が自動で入ります。
ひとり法人向けのプランに、給与や請求書の機能がどこまで含まれるかを確認します。
マネーフォワード:会計・給与・請求書・経費が別サービスの組み合わせ。ひとり法人プランでどこまで使えるかを確認。税理士の利用者が多く、顧問を頼むときに合わせやすい
マネーフォワードは、会計・給与・請求書・経費精算がそれぞれ独立したサービスで、連携して使います。
ひとり法人向けのプランでは、会計に加えてどのサービスまで使えるかを確認します。
税理士事務所での利用者が多く、将来顧問税理士を頼むときに、同じソフトで帳簿を共有しやすい傾向があります(freeeに対応する税理士も増えています)。
違い5〜6:料金と、乗り換えのしやすさ。ひとり会社の選び方
- 料金(ひとり法人向け・年払い・税抜、2026年10月時点):マネーフォワード約2万9,760円、freee約3万5,760円。申告の機能は別途確認
- 乗り換え:どちらも仕訳データをCSVで書き出し、相手のソフトに取り込める。固定資産台帳や取引先は手で移す。期の途中は避け、決算が終わってから
- 選び方:簿記を知らず自分で全部やる→freee。簿記が分かる、または税理士に頼む予定→マネーフォワード。迷ったら両方の無料期間で、銀行連携と請求書を試す
料金(ひとり法人向け・年払い・税抜、2026年10月時点):マネーフォワード約2万9,760円、freee約3万5,760円。申告の機能は別途確認
ひとり法人向けの最安プランの年額は、マネーフォワードが約3万円、freeeが約3万6,000円です。
年6,000円程度の差で、申告の機能や給与の機能を加えると逆転することもあるので、自分が使う機能の合計額で比べます。
乗り換え:どちらも仕訳データをCSVで書き出し、相手のソフトに取り込める。固定資産台帳や取引先は手で移す。期の途中は避け、決算が終わってから
乗り換えは可能です。
仕訳帳をCSVで書き出し、相手のソフトのインポート形式に合わせて取り込みます。
固定資産台帳、取引先、口座の連携設定は手で移すので、半日から1日かかります。期の途中で移すと帳簿が分断されるので、決算と申告が終わった期首に行います。
選び方:簿記を知らず自分で全部やる→freee。簿記が分かる、または税理士に頼む予定→マネーフォワード。迷ったら両方の無料期間で、銀行連携と請求書を試す
簿記を知らず、記帳から申告まで自分で完結したい人は、取引ベースのfreeeが向きます。
簿記が分かる人、または将来税理士に頼む予定の人は、仕訳ベースで税理士との共有がしやすいマネーフォワードが向きます。
迷う場合は、両方に無料期間があるので、自社の銀行口座の連携と、請求書の発行から入金の消し込みまでを実際に試して、操作が自然に感じるほうを選びます。
freeeとマネーフォワードの違いの一覧(法人・ひとり会社の観点)
| 項目 | freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 |
|---|---|---|
| 記帳の考え方 | 取引ベース(仕訳は自動生成) | 仕訳ベース(仕訳帳が中心) |
| 向いている人 | 簿記を知らない、自分で全部やる | 簿記が分かる、税理士と共有する |
| 決算書 | 作成可 | 作成可 |
| 法人税の申告書(別表) | 申告の機能・サービスで作成(範囲と料金を確認) | 申告の機能・サービスで作成(範囲と料金を確認) |
| 給与計算・社会保険 | 一体型で連動 | 別サービスと連携 |
| 請求書 | 一体型で売上に自動連動 | 別サービスと連携 |
| 電子帳簿保存法 | 対応 | 対応 |
| 税理士との共有 | 対応する税理士が増加中 | 税理士の利用者が多い |
| ひとり法人プラン年額(税抜) | 約3万5,760円 | 約2万9,760円 |
| 乗り換え | 仕訳CSVで可 | 仕訳CSVで可 |
ユイfreeeとマネーフォワード、結局どっちがいいんですか?
ケイ簿記を知らずに自分で全部やるならfreee。借方・貸方で考えられるか、税理士に頼む予定ならマネーフォワード。機能はほぼ同じで、違うのは記帳の考え方と、税理士との相性。
ユイ自分で法人税の申告までやりたいです。
ケイどちらも会計本体とは別に申告の仕組みが要る。別表一・四・五(一)と地方税の様式が作れて、e-TaxとeLTAXに送れるか、料金は会計に含まれるか別か、を公式サイトで確認してから契約しよう。
よくある質問
freeeとマネーフォワードのいちばんの違いは何ですか?
記帳の考え方です。
freeeは取引を登録すると仕訳が自動で作られ、マネーフォワードは仕訳帳をそのまま扱います。
簿記を知らなくても使えますか?
freeeは借方・貸方を意識せずに使える設計です。
マネーフォワードは簿記の基本(借方・貸方)が分かると扱いやすくなります。
法人税の申告書は作れますか?
両社とも、会計ソフト本体とは別の申告の機能やサービスで作ります。
作れる別表の範囲、e-TaxとeLTAXへの送信、料金を公式サイトで確認します。
税理士に頼む場合はどちらがよいですか?
税理士が使っているソフトに合わせるのが最も手間が少ないです。
税理士事務所での利用者はマネーフォワードが多い傾向ですが、freeeに対応する税理士も増えています。
料金はどのくらい違いますか?
ひとり法人向けプランの年額で、マネーフォワードが約3万円、freeeが約3万6,000円(2026年10月時点・税抜)です。
申告や給与の機能を加えた合計で比べます。
あとから乗り換えられますか?
仕訳データをCSVで書き出して取り込めます。
固定資産台帳や取引先は手で移し、期の途中は避けて決算後に行います。
まとめ:次の一手
freeeは取引ベースで簿記を知らない人向け、マネーフォワードは仕訳ベースで簿記が分かる人や税理士と共有する人向けで、決算書までは両社とも作れ、法人税の申告は別の申告機能の範囲と料金を確認して選びます。
料金の差は年6,000円程度で、周辺機能の含まれ方と申告の費用を合わせた合計で比べ、乗り換えは決算後にCSVで行います。
次の一手は、両方の無料期間に申し込み、自社の銀行口座を連携して、請求書の発行から入金の消し込みまでを試して、操作が自然なほうを選ぶことです。
3社(弥生を含む)の料金と機能の比較は、あわせて読みたい記事で確認してください。
