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社会保険・給与 | 公開 2026.10.15

役員報酬の変更タイミングはいつ?期首から3か月以内のルールと、途中で変えられる例外・手続き

役員報酬の変更タイミングはいつ?期首から3か月以内のルールと、途中で変えられる例外・手続き

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「売上が増えてきたから、役員報酬を上げたい」「来月から下げたい」。

ひとり会社の社長なら、一度は考えることです。

ところが役員報酬は、社長の給料でありながら、好きなときに好きな額へ変えることができません。

タイミングを間違えると、変えた分が会社の経費(損金)として認められず、法人税が増えてしまいます。

この記事では、役員報酬を変更できるタイミングの原則と、途中で変えられる例外、そして変更したあとの手続きを、順番どおりに説明します。

根拠は国税庁のタックスアンサー(No.5211)と日本年金機構の案内で、2026年10月15日時点の内容を確認しています。

筆者はひとり会社の代表として、役員報酬の決定と社会保険の手続きを自分で行っています。その経験もまじえて書きます。

記事のポイント
  • 役員報酬を変更できるタイミングは、原則「事業年度の開始日から3か月以内」。この期間に決めて、あとは期末まで毎月同じ額を払う
  • 途中で変えられるのは、役職や仕事の内容が大きく変わったとき(臨時改定事由)と、経営が著しく悪化したとき(業績悪化改定事由)の2つだけ
  • 変更したら、株主総会(合同会社は社員の同意)の議事録を残す。社会保険は「月額変更届」が必要になることがある

役員報酬を変更できるタイミングは「期首から3か月以内」が原則

役員報酬を変更できる原則のタイミングを、定期同額給与・期首から3か月以内・期末まで同額の3つに分けて図解したインフォグラフィックです。
  • 定期同額給与とは何か
  • なぜ「3か月以内」なのか
  • 期間を過ぎて変えるとどうなるか

定期同額給与とは何か

役員報酬が会社の経費(損金)として認められるには、法人税法で決められた型に当てはまる必要があります。

ひとり会社でいちばん使われる型が「定期同額給与」です。

定期同額給与とは、1か月以下の決まった期間ごとに支払い、事業年度の中で毎回の支給額が同じである給与のことです。

つまり「毎月、同じ額を払う」のが基本の条件になります。

この条件から外れた部分は損金に入らず、その分だけ会社の利益が増えたことになり、法人税が多くなります。

なぜ「3か月以内」なのか

毎月同じ額が条件なら、いつ変えればよいのでしょうか。

法人税法では、事業年度の開始日から3か月を経過する日までに行う改定であれば、改定の前後で金額が違っても定期同額給与として扱うと決めています。

たとえば4月1日が期首の会社なら、6月30日までに決めた改定は認められます。

この期間が設けられているのは、前の期の決算を見てから、今期の報酬を決められるようにするためです。

決算が固まる時期と、株主総会(合同会社では社員の同意)で報酬を決める時期が、ちょうどこの3か月にあたります。

期間を過ぎて変えるとどうなるか

3か月を過ぎてから、次に説明する例外に当てはまらない理由で変更すると、どうなるでしょうか。

増額した場合は、増やした分が損金になりません。

減額した場合は、減らす前の高い額との差額分が、それまでの支給分についても損金から外れることがあります。

どちらも「払ったのに経費にならない」という、いちばんもったいない形です。

だからこそ、変更は期首から3か月以内に集中させるのが安全です。

途中で変更できる2つの例外(臨時改定事由・業績悪化改定事由)

役員報酬を期中に変更できる例外を、臨時改定事由・業績悪化改定事由・認められない理由の3つに分けて図解したインフォグラフィックです。
  • 臨時改定事由(役職や職務の大きな変更)
  • 業績悪化改定事由(経営の著しい悪化)
  • 認められない理由の例

臨時改定事由(役職や職務の大きな変更)

1つ目の例外は、役員の役職上の地位が変わったときや、職務の内容が大きく変わったときです。

国税庁はこれを「臨時改定事由」と呼んでいます。

たとえば、平取締役が代表取締役に就いたときや、病気で長期間、職務ができなくなったときが、これに近い例です。

ひとり会社では役職の変更は起きにくいので、実際には「やむを得ない事情」があるかどうかが問われます。

単に「忙しくなったから」「売上が伸びたから」は、ここには当てはまりません。

業績悪化改定事由(経営の著しい悪化)

2つ目の例外は、経営の状況が著しく悪化したことによる減額です。

こちらは「業績悪化改定事由」と呼ばれ、減額の場合だけに認められます。

ポイントは、悪化の程度が「著しい」ことです。

取引先からの信用を保つため、銀行との約束で、あるいは株主との関係で、報酬を下げざるを得ない状況がこれにあたります。

一時的に売上が落ちた程度では、認められないと考えておくほうが安全です。

認められない理由の例

国税庁は、業績悪化改定事由に含まれないものとして、次の2つを明記しています。

1つは、会社の一時的な資金繰りの都合です。

もう1つは、単に業績目標に届かなかったことです。

ひとり会社で起きやすいのは、この2つです。

「今月は入金が遅れるから、報酬を減らしておこう」という変更は、損金の扱いで不利になる可能性があります。

迷う場合は、変更の前に税理士へ相談するのが確実です。

変更の手続きと、議事録の残し方

役員報酬の変更手続きを、株主総会での決定・議事録の作成・税務署への届出の要否の3つに分けて図解したインフォグラフィックです。
  • 株主総会(社員総会)で決める
  • 議事録に書くこと
  • 税務署への届出は要らない

株主総会(社員総会)で決める

役員報酬は、定款に定めがなければ、株主総会の決議で決めます。

合同会社の場合は、社員(出資者)の同意で決めます。

ひとり会社では、社長が株主でもあるので、形式的に見えるかもしれません。

それでも「いつ、いくらに決めたか」を書面で残すことが、税務調査のときの説明材料になります。

筆者も、期首の月に自分で決議の日付を決めて、議事録を作ってから新しい額を払い始めています。

議事録に書くこと

議事録には、次のことを書けば十分です。

開催日、出席者、決議の内容(報酬の月額と、いつの支給分から適用するか)、そして議長の署名または記名押印です。

変更の理由も一行添えておくと、あとで見返したときに分かりやすくなります。

ひな形は会計ソフトの会社や法務関係のサイトで配布されていますが、項目は上の4つで足ります。

税務署への届出は要らない

定期同額給与として変更するだけなら、税務署への届出は不要です。

届出が必要なのは「事前確定届出給与」という、賞与のように決まった日に決まった額を払う型を使うときです。

この届出は、原則として株主総会などの決議から1か月以内か、事業年度開始から4か月以内のどちらか早い日が期限です。

毎月同じ額を払うだけなら、気にしなくて構いません。

社会保険の「月額変更届」はいつ出す?

役員報酬を変更したときの社会保険の手続きを、随時改定の3つの要件・4か月目から変わる・届出先の3つに分けて図解したインフォグラフィックです。
  • 随時改定の3つの要件
  • 新しい保険料は4か月目から
  • ひとり社長が見落としやすい点

随時改定の3つの要件

役員報酬を変えると、健康保険と厚生年金の保険料のもとになる「標準報酬月額」も変わることがあります。

これを「随時改定」といい、届け出る書類が「被保険者報酬月額変更届(月額変更届)」です。

日本年金機構の案内では、随時改定の対象になる条件は次の3つです。

1つ目は、固定的な賃金(役員報酬のように額が決まっているもの)が変わったこと。

2つ目は、変わった月から3か月間の平均で求めた標準報酬月額が、それまでの等級と比べて2等級以上ちがうこと。

3つ目は、その3か月とも、報酬の支払いのもとになる日数が17日以上あること。

役員の場合、3つ目は毎月の報酬が支払われていれば満たします。

新しい保険料は4か月目から

随時改定に当てはまると、変更後の報酬を初めて受けた月から数えて4か月目の標準報酬月額から変わります。

たとえば7月分の報酬から上げたなら、10月分の保険料から新しい等級になります。

届出は、変更した月から3か月が経ったときに、年金事務所または事務センターへ出します。

電子申請も使えます。

ひとり社長が見落としやすい点

見落としやすいのは、1等級しか変わらない小さな変更です。

この場合、随時改定の対象にならず、保険料は毎年7月に出す「算定基礎届」で決め直されるまで、そのままです。

もう1つは、報酬を上げたのに月額変更届を出し忘れるケースです。

年金事務所の調査で指摘されると、さかのぼって保険料を納めることになります。

筆者は、報酬を変えた月をカレンダーに書き、3か月後の提出を忘れないようにしています。

3つの改定を比較する

改定の種類 いつ変えられるか 増額 減額 ひとり会社での起きやすさ
通常の改定 期首から3か月以内 ○ ○ 毎年ある
臨時改定事由 役職や職務の大きな変更があったとき ○ ○ 少ない
業績悪化改定事由 経営が著しく悪化したとき × ○ 少ない(資金繰りの都合は不可)
ユイユイ

期首から3か月を過ぎてから、売上が増えたんです。今期の途中で上げたら、だめですか?

ケイケイ

上げること自体はできるよ。ただ、増やした分は経費にならないんだ。だから、今期は我慢して、来期の期首に上げるのが普通だね。

ユイユイ

下げるのは、いつでもいいんですか?

ケイケイ

下げるのも同じで、3か月以内が原則。途中で下げられるのは、経営が著しく悪化したときだけ。「今月は入金が遅れるから」は認められないんだ。

よくある質問

役員報酬は、いつまでに決めればよいですか?

事業年度の開始日から3か月以内です。

4月1日が期首なら、6月30日までに決めて、その月の支給分から新しい額にします。

役員報酬は、毎年変えられますか?

変えられます。

毎年、期首から3か月以内に決め直すのが一般的です。

同じ額のままでよい年は、決議だけ残して金額を据え置くこともできます。

役員報酬をゼロ(無報酬)にできますか?

ゼロにすること自体はできます。

ただし、報酬がゼロになると社会保険の加入要件を満たさなくなり、国民健康保険と国民年金に切り替える手続きが生じることがあります。

無報酬にするときも、株主総会の決議と議事録は残しておきます。

4か月目に変更してしまったら、どうなりますか?

例外(臨時改定事由・業績悪化改定事由)に当てはまらない限り、増額した分は損金になりません。

すでに払ってしまった場合は、税理士に相談して、申告のときに正しく処理してもらうのが安全です。

変更したら、税務署に届出は必要ですか?

定期同額給与(毎月同じ額)として変えるだけなら、税務署への届出は不要です。

社会保険は、2等級以上の変動があれば「月額変更届」を年金事務所に出します。

まとめ:次の一手

役員報酬の変更タイミングは、期首から3か月以内が原則です。

途中で変えられるのは、役職や職務の大きな変更と、経営の著しい悪化という2つの例外だけです。

変更したら、株主総会(合同会社は社員の同意)の議事録を残し、社会保険の月額変更届が要るかどうかを確かめます。

次の一手は、今期の「期首から3か月」がいつまでかをカレンダーに書き込むことです。

そのうえで、いくらにするかを考えるときは、役員報酬の決め方をまとめた記事を読んでみてください。

金額の判断に迷ったら、ひとり会社の相談に慣れた税理士に、一度だけ相談しておくのも手です。